日本臨床救急医学会雑誌
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原著
  • ―惨事ストレスが及ぼす影響―
    髙須 公介, 藤丸 郁代, 北辻 耕司, 中原 史雅, 岡村 雪子, 尾方 寿好
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    目的:消防職員の精神健康状態には,職場のストレス要因,ストレスの緩衝要因,個人的要因などが複合的に影響している。一方で,惨事に遭遇した際に被るストレスも精神健康状態に大きな影響を及ぼすことが知られている。本研究では,消防職員の精神健康状態に惨事ストレスが及ぼす影響の程度について明らかにすることを目的とした。方法:A県B市消防本部の職員251名に対して,抑うつ状態と,これに関連すると考えられる尺度を無記名自記式質問紙を用いて調査した。クロス分析により抑うつ状態との関連がみられた8個の尺度を独立変数,抑うつ状態を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った。結果:「惨事ストレス反応が高いこと」「消極的な行動や認知があること」「現在の主観的ストレスが高いこと」の3項目が抽出され,オッズ比はそれぞれ15.9,7.9,4.2であった。結論:消防職員の抑うつ状態には惨事ストレスが大きな影響を及ぼしていることが示唆された。

  • 安川 乃里子, 加藤 隆寛, 竹内 正幸, 大西 正文
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    お薬手帳は患者の薬剤服用歴を確認するうえで重要であるが,救急入院患者における活用状況や有用性は明らかでない。本調査では,当院の高度治療室(high care unit,以下HCUと略す)へ緊急入院となった患者を対象に,お薬手帳の活用状況を調査した。お薬手帳の持参率は37.9%であった。入院当日に薬剤服用歴がすべて確認できた患者は手帳あり群で80.4%,手帳なし群で53.2%であり,手帳あり群で有意に高かった(p<0.001)。手帳あり群のうち1冊のお薬手帳で薬剤服用歴が確認できた患者は72.7%,手帳なし群のうち1種類の情報源で薬剤服用歴が確認できた患者は48.2%であり,薬剤情報が一元管理されていた患者は手帳あり群で有意に高かった(p<0.001)。以上より,お薬手帳を持参した患者では薬剤服用歴を迅速に把握でき,薬剤服用歴が一元管理されていることが明らかとなった。

  • 須田 果穂, 山勢 博彰, 田戸 朝美, 山本 小奈実
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,救急医療におけるタスク・シフト/シェアを見据え,救急看護師が多職種と連携・協働しながらより高い専門性を発揮するための,担うべき役割を明らかにすることである。方法:横断研究デザインによる実態調査研究(Web上質問紙調査)で実施した。医師・看護師・救急救命士を対象に,救急医療で必要な役割について,タスク・シフト/シェアを見据え,医師・看護師・病院救命士がどの程度担うとよいかを4件法で調査した。結果:医師119名,看護師354名,救急救命士1,415名の計1,888名の回答を分析対象とした。医師・看護師・救急救命士は共通して,救急看護師は患者・家族の精神的ケアと生活行動援助を担うとよいと考えていた。また看護師は,倫理調整や退院後の生活を見据えた支援も担うとよいと考えていた。結論:救急看護師は,身体的側面だけでなく,精神面や社会面,家族をも含めた多角的なケアが期待されていた。

  • 横山 龍人, 富田 源, 堀江 紗希, 齋藤 聡子, 渡邉 翠, 高田 壮潔, 坂口 健人, 髙橋 一則, 小林 忠宏, 中根 正樹
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    目的:深部体温が35℃未満に低下した状態である偶発性低体温症(accidental hypothermia,以下AHと略す)ではしばしば心電図でOsborn J wave(以下OWと略す)を認める。本研究はOW の有無とAH の重症度との関連を明らかにすることを目的とした。方法:2013年5月24日〜2022年3月31日までにAHと診断され当院救急科に入院となった72例すべての症例を対象とし,後方視的に検討した。重症度評価には5Aスコア(年齢,ADL,アルブミン値,pH,“ほぼ心停止”)およびSOFAスコアを用いた。結果:OW陽性21例とOW陰性51例の比較では,5Aスコアは“ほぼ心停止”のみ有意差を認めた(p=0.046)。SOFAスコアは有意差を認めず(p=0.695),臓器別に検討すると循環のみ有意差を認めた(p=0.011)。結論:OWの有無はAH患者の重症度に関連するとはいえなかった。

  • 関口 浩至, 仲間 敏春, 佐藤 彩, 嶺井 陽, 近藤 豊, 福田 龍将, 上野 栄一, 梅村 武寛, 久木田 一朗
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    背景:アメリカ心臓協会(AHA)の一次救命処置(BLS)は新しい蘇生に関する科学的エビデンスを加え更新されてきた。本研究の目的はAHA-BLSヘルスケアプロバイダーマニュアル2000年,2005年,2010年,2015年版を,計量テキスト分析ソフトウェア(KH-coder)で分析し,ガイドライン更新に伴うキーワードの変化を明らかにすることである。方法:AHA-BLS日本語版ヘルスケアプロバイダーマニュアルを,KH-coderを用いて単語出現頻度,共起ネットワーク,対応分析を行った。結果:単語出現頻度では上位20位の抽出語がリストアップされ,共起ネットワークでは8つのトピックスが抽出された。対応分析では2000年で心停止のリスク因子・FBAO・心臓マッサージ,2005年では心臓発作の因子,2010年では補助呼吸・死戦期呼吸・CPRの手順,2015年ではチームというキーワードが抽出された。すべてに共通したキーワードはCPRであった。結論:計量テキスト分析によってガイドライン更新に伴うキーワードが明らかにされた。

症例・事例報告
  • 奥沢 悦子, 吉村 有矢, 今 明秀, 森 仁志, 山端 裕貴, 近藤 英史, 今野 慎吾, 野田頭 達也
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    小細胞肺癌は主に肺門部に発生し,重度の気道狭窄に至ることがある。今回,重度呼吸不全でVV-ECMOを導入し,直ちに迅速細胞診(rapid on-site cytologic evaluation,以下ROSE)を行い,小細胞肺癌の早期診断および放射線治療が実施できた症例を経験したので報告する。症例は47歳,女性。主訴は高度気道狭窄による呼吸困難であった。ICU入室3時間後に静脈脱血- 静脈送血体外式膜型人工肺(veno-venous extracorporeal membrane oxygenation,以下VV-ECMO)を導入し,入室4時間後にCTで気管を圧排する縦隔腫瘍が指摘された。入室8時間後,気管支内視鏡検査を行い,ROSEで小細胞肺癌が強く疑われた。入室36時間後に緊急放射線照射を開始し得た。計13回の照射で腫瘍は縮小し,第15病日にVV-ECMOを離脱して第86病日に自宅退院した。結果報告まで比較的時間を要していた従来の細胞診検査であっても,緊急度の高い検査では,優先的なROSEの実施が重要である。気道狭窄の原因たる腫瘍性病変の検索・治療方針決定においてROSEの実施は有用である。

  • 松岡 綾華, 小網 博之, 今村 一郎, 岸川 圭嗣, 福田 顕三, 池田 飛鳥, 山崎 弘貴, 品田 公太, 阪本 雄一郎
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代,男性。軽トラックを運転中に電柱に衝突して受傷した。救急隊による観察時には外見上外傷は明らかでなく,意識清明であったため直近の第二次救急医療機関に搬送された。搬送中から血圧は低下傾向となり,病院搬入時にはショックバイタルを呈していた。右胸腔でFAST陽性であったが,初期輸液を開始後に血圧は上昇傾向となった。造影CTを施行したところ,右血胸と鎖骨下動脈損傷を認めたが,胸部を含めてその他の合併損傷を指摘し得なかった。CT検査から帰室後に意識レベルが低下し,心停止に至り救命困難であった。本症例を救命するためには,出血性ショックに対する迅速な対応とともに,搬送先病院の変更や,重症外傷患者を早急に搬送するシステムの構築が必要であろう。また,骨折や気胸を伴わない胸部外傷においても鎖骨下動脈損傷が存在し,重篤な経過をたどる可能性があるため注意が必要である。

  • 濱口 満英, 福田 隆人, 植嶋 利文, 村尾 佳則
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    80歳代,男性が自己転倒による頭部打撲を主訴に救急搬送となった。二次救急病院では同時に多数の救急搬送がなされるため,JTAS(Japan Triage and Acuity Scale)でトリアージを施行しながら優先順位を決定する。JTAS赤と判断し診療を行ったが,緊急度判定のなかでエコー検査にて大動脈解離を疑い診断できた1例を経験した。JTASでの緊急度判定の重要性と限界を理解しながら,最重症または予後不良となる危険性が非常に高い患者を特定することが重要である。

  • 沼田 儒志, 佐野 秀史, 守屋 まりこ, 大竹 成明, 金村 剛宗, 奈倉 武郎, 弦切 純也
    原稿種別: 症例・事例報告
    2024 年 27 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    人畜共通感染症としてPasteurella multocidaによる急性喉頭蓋炎はまれである。症例は空腸消化管間質腫瘍に対し,イマチニブメシル酸塩を内服中の50歳代の男性。発熱と咽頭痛が悪化したため,急性喉頭蓋炎の疑いで近医から転院した。来院時,意識清明であったが,起坐位で発語困難であった。頸部造影CTで咽頭・喉頭浮腫,および咽頭後壁膿瘍を認め,喉頭内視鏡検査で喉頭蓋の発赤と腫脹を確認した。急性喉頭蓋炎による気道緊急と判断し,経口気管挿管後に抗菌薬,ステロイド療法を開始した。初療時血液培養でPasteurella multocidaが検出された。第5病日の画像検査で咽頭・喉頭膿瘍は改善し,第7病日に抜管した。再度病歴聴取を行ったところ,飼育ネコとキスをするなどの濃厚接触が日常的に行われていたことが判明した。気道緊急時の病歴聴取は時に困難で,プレホスピタルでの動物飼育歴などの情報は診療の一助になる。

編集後記
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