日本臨床救急医学会雑誌
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9 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:第8回総会/ワークショップ・パネルディスカッションから
  • 千代 孝夫, 木内 俊一郎
    原稿種別: 特集・第8回総会/ワークショップ・パネルディスカッションから
    2006 年 9 巻 5 号 p. 366-374
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    長期間の休日中は救急外来が混雑するため,特別な応需態勢が必要である。2002年と2003年の年末年始に和歌山県赤十字救命救急センターを受診した患者動態を分析した。期間中の患者総数は約1,200名で,来院日別患者数,来院時間帯,年齢分布,来院方法,転帰など患者の内訳はいずれもほぼ同じ傾向を示し普遍性があった。待ち時間が遅延する原因として事務業務の混雑と患者の在室時間の遅延が挙げられた。事務員の増員や教育により事務業務の整備,迅速化を図った。医師には在室時間の短縮を図るために当直医同士の協力体制を強めるように通達した。今回の調査により当センターでは今後来院患者に見合った人員や物品の準備が可能となった。

  • 笠置 康, 笠置 真知子
    原稿種別: 特集・第8回総会/ワークショップ・パネルディスカッションから
    2006 年 9 巻 5 号 p. 375-380
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    救急医療をより迅速且つ的確に行う為に,当院で運用しているシステムについて述べる。受付を通して来る患者の重症度のトリアージ・システム。個人情報保護法への対応。診察待ち患者に『診察順番が受け付け順番どおりで無い事』の徹底。救急患者の診療続行,若しくは診療中断の選択権。最近更に増加し,複雑になったインフォームド・コンセントに対して,書類を手渡す迅速・確実な方法。高齢者救急入院患者への対策。実質的な院内表示。急性アルコール中毒患者の救急車来院後の取り扱い方。救急待合室における携帯電話方法使用の制限について等,様々なアイデアを用いて,変わり行く日本の社会事情の中で日常臨床救急に於いて,迅速・的確・安全な医療を行っている。

  • 宮澤 徳生, 神頭 定彦, 有賀 達広, 吉川 節雄, 小林 澄雄
    原稿種別: 特集・第8回総会/ワークショップ・パネルディスカッションから
    2006 年 9 巻 5 号 p. 381-390
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    長野県飯田下伊那(以下,飯伊と略す)の年間10万人あたりの病院外心停止(以下,OHCAと略す)例は94.4例と比較4都市と比べ多かった(p<0.05)が,心原性目撃あり例の心拍再開率は27.5%,入院率は12.5%,生存退院率は2.5%で諸都市と遜色ないものの十分ではなかった。全OHCA 252例を平成15年半年間の87例を前期,平成16年の165例を後期とすると,前期に比し後期では口頭指導実施率が増加し(p<0.05),気道確保と静脈路確保の特定行為も増加していた(p<0.01)。検証医による要確認率は傷病者観察,緊急重症度判断で増加傾向にあり,救急指導員による要確認率は,協調性・迅速性(p<0.01),他隊との連携(p<0.05)では増加し,これは検証医,救急指導員の質が向上したためと思われた。検証医による要改善率は応急処置の内容・方法で減少し(p<0.01),救急隊員の質が向上したと考えられた。飯伊メデイカルコントロールによる事後検証は,救急隊の質の向上に効果的であると思われた。

症例報告
  • 唐木 千晶, 上田 康晴, 牧 真彦, 上笹 宙, 望月 徹, 畝本 恭子, 黒川 顕
    原稿種別: 症例報告
    2006 年 9 巻 5 号 p. 392-398
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    今回我々は塩酸デクスメデトミジン(プレセデックス®️,以下DEX)を用いて鎮静し,すみやかに抜管できた重症2症例を報告する。症例1は左側腹部痛を主訴に搬送され,急速に血圧低下をきたしショックとなった症例で,重症肝障害,高血糖,ケトーシス,心嚢液貯留と診断された。症例2は,意識障害を主訴に搬送され,その後痙攣が出現し,急性医薬品中毒,難治性痙攣と診断された。2症例とも抜管前からDEXの投与を開始しRamsay scoreを用いて投与量を調節し,副作用なく抜管となった。ミダゾラムやプロポフォールと比較しDEXには呼吸抑制がない,鎮痛作用がある等の利点が挙げられる。現在DEXは抜管時における24時間までの投与が保険上認められている。今後,救急・集中治療領域で多種多様な疾患に対する鎮静鎮痛薬としての持続投与法や小児症例の外来や検査時の鎮静など,適応拡大が期待される。

  • 金子 直之, 岩本 慎一郎, 岡田 芳明
    原稿種別: 症例報告
    2006 年 9 巻 5 号 p. 399-403
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    症例は32歳女性。高揚感を得る目的でエアゾール式簡易消火具のガス(代替フロン,HFC‐227ea)を吸入し,日と手に凍傷を負ったが保存的に治療しえた。代替フロンは現在でも様々なものに使われている。フロン系化合物は中枢神経系,呼吸器系,心筋刺激伝導系に有害であり,また直接接触すれば凍傷を来すが,本邦では広くは知られていない。本症例の経験をふまえ,フロン系化合物の歴史と現状,分類,人体に対する有害作用に関して考察した。本症例で用いられた簡易消火具の注意書きには,特に人体に対する有害作用は明示されていなかったが,明記すべきと考えられた。

調査・報告
  • 豊田 泰弘, 松尾 吉郎, 田中 博之, 藤原 秀一, 高鳥毛 敏雄, 磯 博康
    原稿種別: 調査・報告
    2006 年 9 巻 5 号 p. 404-409
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    平成16年4月からの1年間の岸和田市消防本部における全救急搬送患者8,997例を対象とし,救急隊員による予測転帰(帰宅・入院)と搬送後転帰(帰宅・入院)の整合性,年齢階級,疾患分類(内因性・外因性)の関連性について調査した。予測の妥当性の評価については,救急隊員が帰宅と評価したが実際には入院となった症例を過小評価,入院と評価したが帰宅となった症例を過大評価,その他を適正評価とした。過小評価率は年齢階級別にみると,高齢者10.9%,成人4.1%,小児3.0%であり,高齢者で高かった。疾患分類別にみると,内因性7.6%,外因性3.7%であり,内因性で高かった。高齢者の内因性疾患では予測が比較的困難であることが示唆された。

  • 武田 多―, 木下 順弘
    原稿種別: 調査・報告
    2006 年 9 巻 5 号 p. 410-414
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    英国では労働安全衛生における応急手当の必要性が社会的に認識され,英国安全衛生庁によって職場で応急手当が出来る環境が指導されている。その教育プログラムの一つに,英国赤十字社(British Red Cross)による職場での応急手当講習会がある。筆者は,英国で講習会を受講しその教育技法と教育内容を検討した。教育技法は,対象の一般市民の興味を持続させ理解し易い様に工夫されていた。教育内容は,成人に対する心肺停止,意識障害,胸痛,外傷等への初期対応法で国際ガイドライン2000に基づいたものであったが,具体的な手順等で米国やわが国で普及しているものと異なる部分もあった。わが国で救急対応法を普及させたり新しい教育プログラムを開発したりするのに参考になると考えられた。

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