日本臨床救急医学会雑誌
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16 巻, 6 号
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原著
  • 直江 康孝, 小川 太志, 中野 公介, 米沢 光平
    2013 年 16 巻 6 号 p. 785-789
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    頭部外傷後の高次脳機能障害が社会問題になっている。高次脳機能障害の主たる原因は脳血管障害であり,頭部外傷によるものは10%にすぎないが,10 〜20 代では原因の上位に位置している。しかもその症状は血管障害のそれと比べ多彩である。われわれは損傷部位と症状の間の関連について自験例をもとに検討した。2008 年1 月1 日から2009 年12 月31 日までに搬送された頭部外傷患者203 名のうち生存退院できた148 名を対象とし,2 年をめどに高次脳機能評価を,脳の損傷部位はMRI で前頭葉,側頭葉,頭頂葉に分け評価した。118 名で評価が可能であり56 名(47.5%)に高次脳機能障害がみられた。MRI で異常所見がみられる例では高次脳機能障害の発生頻度が高かったが,異常所見がない例でも高次脳機能障害がみられた。損傷部位と症状との間には関連はみられず,MRI で検出できないびまん性脳損傷が発生に関与していると考えられる。
  • 金子 唯, 桑原 太一, 原田 俊夫, 河岡 徹, 平木 桜夫, 福田 進太郎
    2013 年 16 巻 6 号 p. 790-796
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎の保存的治療は臨床現場において広く受け入れられつつあるが,保存的治療が全ての症例で有効とはいえないことも事実である。一方で手術治療においても,negative appendectomy は一定の頻度で発生する。本検討では客観的な検査所見をもとに治療方針の決定に関わる因子を検討した。単施設後方視的観察研究で,124 例のDPC 病名急性虫垂炎の症例を対象とした。年齢,性別,CT 所見,既往歴,血液検査所見を保存的治療成功例およびnegative appendectomy 例それぞれを目的変数としたロジスティック回帰分析を施行した。保存的治療成功例は,過去の保存的治療成功(p=0.018),CT 上虫垂腫大無(p=0.006),糞石なし(p=0.044)が有意な因子であった。negative appendectomy はCT 上虫垂腫大無(p<0.001),好中球左方偏移軽度(p=0.007)が有意な因子であった。CT 上の虫垂腫大の有無は保存的治療を的確に選択する上で重要な要素であると考えられた。
  • 廣田 哲也, 矢田 憲孝, 宇佐美 哲郎, 菊田 正太, 藤本 善大
    2013 年 16 巻 6 号 p. 797-801
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    目的:急性虫垂炎患者の来院時の臨床所見のうち,虫垂炎の手術時重症度を予測するのに有用な因子を検討する。対象と方法:2004 年5 月〜2011 年12 月の間で発症48 時間未満に当院を受診して緊急手術を行い,病理所見で急性虫垂炎と診断した122 例を対象とした。方法は病理所見により壊疽性虫垂炎を重症,それ以下を中等症以下と定義し,年齢,性別,発症から受診までの経過時間,症状,身体所見と血液検査所見を後方視的に比較検討した。結果:全122 例中,重症は72 例(59%)を占めた。多変量解析では重症に関与する独立因子はCRP 高値,加齢,反跳痛ありであった。CRP 値の重症虫垂炎に対するROC 分析では対象122 例のAUC は0.77(95%信頼区間;0.69 〜0.86)に対し,発症24 〜48 時間後に受診した65 例のAUC は0.89(95%信頼区間;0.81 〜0.98)と高値であった。考察:CRP 値は急性虫垂炎の重症度予測において最も有用な指標であり,とくに発症24 〜48 時間後に受診した症例では鋭敏である。
調査・報告
  • ―アンケート調査結果の分析―
    島尻 史子, 岡本 健, 西村 あをい, 今度 さやか, 澤井 香子, 斉藤 伊都子, 森川 美樹, 寒竹 正人, 田中 裕
    2013 年 16 巻 6 号 p. 802-809
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    近年,救急外来トリアージへの関心が急激に高まっているが,その実態は明らかではない。今回,救急外来トリアージの現状と,トリアージの質向上のための課題を明らかにする目的で,全国の救急医療440 施設にアンケート調査を行った。有効回答158 施設(36%)中,トリアージ実施施設は79 施設あった。ガイドライン使用施設は52 施設(66%)だったが,標準ガイドラインの使用は17 施設(21%)のみだった。トリアージナースの選定要件や養成体制は施設間で差がみられた。事後評価システムをもつ施設は30 施設(39%)だったが,その半数で定期的な事後評価や明確な評価判定基準がなかった。本調査結果の分析により,救急外来トリアージの質を向上するためには,トリアージ方法の標準化の推進,トリアージ施行者の能力の担保および事後検証によるフィードバック体制の確立が今後の課題であると示唆された。
  • 駒田 真由, 横山 直, 湯浅 貴裕, 添田 真司
    2013 年 16 巻 6 号 p. 810-816
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    東海大学医学部付属病院(以下,当院と略す)は東日本大震災に対する医療支援活動を石巻市で2011 年3 月27 日〜5 月2 日まで行った。今回,その際に薬剤師が行った活動の取り組みについて報告する。薬剤師が医療支援活動に参加するにあたり,当院薬剤部の医療支援体制を構築し,災害対策担当薬剤師,後方支援担当薬剤師,被災地担当薬剤師を選出した。災害対策担当薬剤師の指揮・統括のもと,後方支援担当薬剤師は,医薬品や薬剤関連物品の選定・準備を行い,被災地支援担当薬剤師は被災地にて調剤・投薬・服薬指導等を行った。この支援体制で薬剤師の医療支援活動をサポートし,全体的には円滑な活動ができたと考える。その一方で,さらに適切な医薬品選定や薬剤関連物品の軽量化に加え,医療支援活動経験者の育成が課題であることが明らかになった。
  • 中尾 彰太, 川口 竜助, 水島 靖明, 松岡 哲也
    2013 年 16 巻 6 号 p. 817-825
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    大阪府泉州二次医療圏においては,改正消防法の公布に先立ち,平成21 年4 月より改正消防法の実施基準に準じた新しい救急医療体制を構築し運用している。今回その新体制の有用性と問題点について,救急隊の月例報告をもとに検証した。対応可能医療機関のリスト化により,医療圏内で対応可能な総患者数は増加した。また,搬送先選定困難例が多かった吐下血・消化管出血および脳卒中については,最終受入れ当番病院制を導入した結果,受入れ状況が改善した。一方,緊急度・重症度別の分散搬送が機能していないなどの問題点が判明した。また,新体制の課題を正確に把握するためには,個別事案の病院前活動から搬入後経過までの一連の経過を地域網羅的に把握する必要があり,その点で本調査の限界が明確になった。当医療圏では,今後このようなデータを集積するため,新たな患者登録システムを構築し運用していく予定である。
  • 米川 力, 新庄 貴文, 富永 経一郎, 伊澤 祥光, 阿野 正樹, 山下 圭輔, 鈴川 正之
    2013 年 16 巻 6 号 p. 826-830
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    目的:近年病院前救護活動や災害時における情報伝達手段として様々な無線機器が存在する。各機器にはそれぞれ特徴があり,導入費用にも差が見られる。我々は近年普及が進んできたIP 無線を始めに各種無線機器を試用し,その特徴を生かした情報伝達手段構築について考察した。方法:当院のドクターカー活動に各種無線機を試用し,通信距離を比較した。さらに医療従事者が使用可能な無線機を調査しその特徴について比較検討した。結果:IP 無線はこれまで災害に強いと言われているMCA 無線と比較して遜色のない通信性能であった。また業務用無線やMCA 無線では通信距離を長くするために設備拡張などの追加費用が必要で資格や免許申請などの手続きも必要であった。考察:無線による情報伝達手段を考える際,活動範囲を考えた上で機器を検討する必要がある。比較的小規模な活動から災害時における広範囲での活動を考えた場合,IP 無線は有効なツールになり得る。
  • ―職業キャリア成熟尺度と個人的背景,認定看護師・専門看護師に対する関心との比較―
    中井 夏子, 門間 正子, 神田 直樹, 皆川 ゆり子, 田口 裕紀子, 城丸 瑞恵
    2013 年 16 巻 6 号 p. 831-838
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/15
    ジャーナル フリー
    目的:クリティカルケア看護領域に勤務する看護師のキャリア支援の体制構築の基礎資料として,当該領域の看護師の職業的成熟度について個人的背景および認定看護師・専門看護師への関心の有無により差異があるか否かを明らかにする。方法:A 地区の救命救急センターおよび集中治療部門に勤務する看護師を対象に,基本的属性,認定看護師・専門看護師に対する関心の有無,職業的成熟度について郵送留め置き法で調査した。職業的成熟度は職業キャリア成熟尺度を用いた。結果:職業キャリア成熟尺度得点は年齢,看護師経験年数,救急看護師経験年数とごく弱い正の相関を認めた。また,職業的成熟度は女性看護師より男性看護師が,子どものいない者より子どものいる者が,認定看護師,専門看護師に対する関心がある者が有意に高値であった。結論:クリティカルケア看護領域に勤務する看護師のキャリア支援には,キャリア発達やライフイベントに合わせた支援の在り方および職業的成熟度を高めるために専門分野の探求やキャリアビジョンの明確化ができるような体制構築が必要であることが示唆された。
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