日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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9 巻, 1 号
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原著
  • 橋本 みづほ, 森田 孝子, 植田 秀穂
    原稿種別: 原著
    2006 年 9 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    絹素材を低温焼成させたカーボンシルク®️(CS)を用いて熱傷創における治癒効果を検討した。マウス背部皮膚にⅢ度熱傷を作成し,周囲の浮腫を含んだ創面積の経時的計測および,3日後の熱傷創の組織学的検討を行った。CSを塗布した群(CS(+)群)は塗布しない群(CS(−)群) に比べ,創面積の縮小が有意に認められた。また,皮膚全層に占める皮下組織の割合を正常皮膚と比較したところ,CS(−)群は有意に大きかったが,CS(+)群では有意差を認めなかった。さらに,CS(−)群の皮下組織は浮腫を示唆する組織学的所見として,組織間隙や血管・リンパ管が明瞭に確認できたが,CS(+)群では認められなかった。以上の結果から,CSは浮腫をきたす病態の改善に有効であり,創傷治癒を促進する可能性が示唆された。

  • 須山 豪通, 金子 高太郎, 石原 晋, 山野上 敬夫, 池田 一生, 三谷 隆, 友滝 真二, 藤原 健悟
    原稿種別: 原著
    2006 年 9 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:広島圏域メディカルコントロール(MC)協議会では,2003年度から心肺停止症例と重症外傷症例の事後検証を行っている。2003年度と2004年度の外傷症例の検証結果を比較して病院前救護における問題点と今後の課題について検討した。対象:2003年度上半期(121症例)と2004年度上半期(209症例)の重症外傷検証症例。方法:検討項目は状況評価,初期評価,全身観察において生命の危機に至る可能性を予測し,生命にかかわる処置だけを行い,生命と関係のない処置を省略し,適切な時間内に適切な医療機関へ搬送するというロードアンドゴーの判断(以下L&G判断と略す)や病院選定の適否と現場滞在時間,患者観察時間とした。結果:2003年度に比べて2004年度では初期評価におけるL&G判断と適切な病院選定が統計学的に有意に改善していた。現場滞在時間,患者観察時間は2003年度と2004年度で差はなかった。結論:L&G判断と適切な病院選定の改善は,事後検証や症例検討会をはじめとするMCの成果と考えられる。現場滞在時間や患者観察時間の短縮のためにはさらなる教育訓練等による努力が必要と思われる。

  • 小畑 仁司, 杉江 亮, 筈井 寛, 西原 功, 大石 泰男, 秋元 寛, 福本 仁志, 森田 大, 松村 賢一
    原稿種別: 原著
    2006 年 9 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:医師同乗の救急隊によるくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)患者搬送の検討。方法:高槻市で救命センター医師同乗の救急隊(特別救急隊)の運用を開始した2002年10月以降のSAH搬送事例を検討した。結果:525件の搬送〔内因性疾患369名,外傷156名,心肺機能停止(cardiopulmonary arrest;CPA)201名〕のうち,SAH患者は12例(男女各6例,年齢50~80歳)であった。現着時,CPAが2例,Japan Coma Scale(以後,JCSと略す)3桁が8例,2桁,1桁が各1例,このうち現場での治療により,CPAの2例は自己心拍が再開し,来院時にはJCS 3桁が8例,2桁,1桁が各2例であった。鎮痛,鎮静,降圧,気道確保(4例に気管挿管),および2例に抗痙攣薬投与を行い搬送した。3例に再破裂を認めた。来院後9例に緊急手術を施行し,転帰は良好5例,重度障害3例,死亡4例であった。考察:超急性期の重症SAHの搬送において,再破裂を完全に予防することはできなかったが,現場での気管挿管を含む確実な気道確保と十分な鎮痛・鎮静・降圧は低酸素性脳障害の回避と再破裂予防に有用と考えられた。

調査・報告
  • 関根 和弘, 松本 尚, 中澤 厚元, 血脇 敏行, 平山 芳照
    原稿種別: 調査・報告
    2006 年 9 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care(以下,JPTECTM)を効果的に普及させるためには,現役救急隊員を対象に各地のメディカルコントロール協議会が主体となってプロバイダーコースを開催するとともに,各消防学校の救急科においてコースを開催することで,現役救急隊員と新人救急隊員への両面からの普及をすることが効果的である。千葉県消防学校では,同プログラムを消防学校の特徴にするために改変し,これまでに3期にわたって救急科学生全員にJPTECTMプロバイダーコースを実施した。第1回コース55名(75%),第2回91名(100%),第3回69名(100%)で合計215名がプロバイダーに認定された。消防学校におけるJPTECTM講習では受講生数が70名以上となり,通常のJPTECTMプロバイダーコースと比べ指導者にとっての負担が大きい。今回のコースプログラムは,小隊ごとに実技ステーションを実施することで指導者の負担を軽減し,従来の履修科目を圧迫することなく必要最低限の指導者数で,消防学校でのプロバイダーコース開催が可能となるように考案された点が特徴である。また,県内指導員の指導法の統一や,各消防本部によるJPTECTMの認知など副次的な効果もみられた。

症例報告
  • 三木 重樹, 田中 孝也, 山本 透, 藤井 弘史, 北澤 康秀, 中谷 壽男
    原稿種別: 症例報告
    2006 年 9 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    症例は肝硬変のある56歳,男性。主訴は発熱,意識障害。今回の搬入に先立つ5週前に,中心静脈カテーテル感染による敗血症で加療した既往がある。その後再度発熱,意識障害を呈したため再入院となり,血液培養でMethicillin-resistent Staphylococcus aureus(以下MRSAと略す),緑膿菌が検出され,抗菌薬投与にて改善傾向であった。しかし,突然腹痛が出現したため精査を行ったところ,搬入時に認められなかった囊状腹部大動脈瘤の存在が確認されたため手術となった。術後経過は良好で抗菌薬の投与を継続しながら転院となった。敗血症患者のなかでもとくに易感染性の患者においては,感染性大動脈瘤など他の感染病巣の有無についても経時的に検索を行う必要があると思われた。また,いったん感染性囊状動脈瘤が発見されれば破裂出血する危険性が高いため,瘤径にかかわらず早期手術を推奨する。

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