日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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11 巻, 1 号
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原著
  • 田中 亮, 鶴田 良介, 藤田 基, 金子 唯, 金田 浩太郎, 小田 泰崇, 井上 健, 笠岡 俊志, 前川 剛志
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    背景:悪性症候群(NMS)の症状は非特異的で多彩なため高熱をきたす他の疾患の除外は重要である。目的:救命救急センターにNMSが疑われるとして紹介された症例を調査し,診断に関する問題点について検討した。対象・方法:2002年4月から2006年9月までにNMSの診断で紹介された症例を後ろ向きに調査した。NMS以外の明確な診断が得られた症例をNMS否定群,LevensonとCaroffの診断基準のいずれかを満たした症例をNMS群とした。結果:対象は16症例で,NMS群は7例,NMS否定群は9例であった。前医のNMSの診断では,Levensonの診断基準を用いると15例が満たし,Caroffの診断基準では5例が満たした。筋固縮に関しては,NMS群の5例,NMS否定群の1例に認められた(p<0.05)。結語:NMS類似疾患には敗血症や脳炎など重篤な疾患が含まれ,鑑別にあたってはCaroffの診断基準,なかでも筋固縮が重要であることが判明した。

調査・報告
  • ―実習に関するアンケート調査から一
    安田 康晴, 田中 秀治
    原稿種別: 調査・報告
    2008 年 11 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    救急隊員の基礎教育である救急科は,平成15年に通知された「消防学校教育訓練の基準」の教育指標に基づき,250時間の標準的なカリキュラムで実施されているが,その編成については各消防学校に委ねられている。今回,道府県の消防学校46校を対象に,救急科カリキュラム中の実習に関するアンケート調査を行った。救急車同乗研修,病院実習,救急救命士の行う特定行為の補助実習については,実施の有無や実施時間にばらつきがあり, シミュレーション実習についてもすべての消防学校で実施されているものの,実施時間は最長70時間,最短7時間とばらつきがあった。救急救命士の処置が拡大するなか,救急教育の基礎教育である救急科教育において,実習や各科目別の実施単位数,到達目標を示したカリキュラムを作成する必要がある。

  • ―1施設における調査から―
    作田 裕美, 坂口 桃子
    原稿種別: 調査・報告
    2008 年 11 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    本研究は,臨界事象法を参考にしてデータを収集しハイパフォーマー看護師の行動特性について分析を行った結果に基づき,一般的なコンピテンシーと比較することから救急初療に働く看護師のコンピテンシーの特徴を明らかにしたものである。結果は以下のとおりであった。1)救急初療に働く看護師のコンピテンシー・クラスターとして,「仕事達成志向群」,「協働的対人関係群」, 「リーダーシップ群」,「自己啓発群」の4項目が見出された。2)抽出された4つのコンピテンシー・クラスターは,一般的なコンピテンシーと相似する内容が多かったが,各々の下位次元であるコンピテンシー・デイクショナリーに,救急初療看護の特性が見出された。3)救急初療に働く看護師に求められる度合いの高いコンピテンシーとして「協働的対人関係群」をあげることができた。4)一般的コンピテンシーでは重要視されながら,救急部門に働く看護師のコンピテンシーでは見出されなかったコンピテンシーは〈自己確信〉であった。

症例報告
  • 岩本 慎―郎, 阪本 敏久, 大下 高志, 岡田 芳明
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    59歳男性。以前より糖尿病,不安定狭心症のため他院外来通院中で,PTCAを2回受けている。6日前から発熱,倦怠感あり。当日,胸痛と呼吸困難出現し,心筋梗塞を疑われ当院内科ヘ入院したところ,胸部X線写真上,左緊張性気胸があり,当院救急部へ紹介された。左胸腔ドレナージを施行すると,便臭のするガスの噴出とともに,灰褐色の膿が多量に吸引された。膿よりCorynebacterium属菌,Peptostreptococcus属菌が検出された。ガス産生菌による膿胸の診断で集中治療を開始した。第2病日より腎機能が急速に悪化。CHDFを施行し,腎機能は改善。嫌気性菌感染による膿胸・敗血症を考え,抗生剤を多剤併用し,感染をコントロールした。全身状態安定し,第49病日に退院となった。緊張性気胸を併発したガス産生菌による膿胸の症例はまれであり,文献的考察と併せ報告した。

  • 宮内 雅人, 小井土 雄一, 久志本 成樹, 川井 真, 横田 裕行, 山本 保博
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は42歳女性,自殺企図にてパブロンS 480錠,パブロンSゴールド630錠,ルルAゴールド200錠(アセトアミノフェン計131g),さらにウオッカ約1l,近医処方薬を服用し搬入となった。来院時意識レベルGCS3にて気管挿管後胃内視鏡を施行。胃内に大量の薬物が残存していることを確認したため,服用後4時間経過していたが16lの胃洗浄を施行,再び胃内視鏡を施行し内容物の除去を確認した。アセトアミノフェンの血中濃度は,Rumack-Matthewのノモグラムでは服用4,8,12時間後において肝毒性に対して安全域であり,入院後も肝機能異常はみられず,第9病日精神科に転科となった。胃洗浄の適応は服用1時間以内かつ致死量とされるが,大量服薬の場合,長期に胃内に残存することもあり,気道を確保したうえで,内視鏡による消化管内容物の評価と,その結果をふまえた胃洗浄による原因物質の除去を行うことが大切と思われた。

  • 永野 達也, 仁木 敬夫, 伊関 憲, 川前 金幸, 赤間 洋一
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2008/02/29
    公開日: 2023/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は78歳女性。正常圧水頭症に対し脳室−腹腔内シャント術を行った。その際,実習に対しての承諾が得られ,救急救命士が気管挿管を行った。視診・聴診ではチューブが気管内にあることが確認されたが,Esophageal Detector Device(以下EDD)による確認を行ったところバルブの拡張を認めなかった。しかし,EDD以外の方法では正しく気管挿管されていることが確認され,換気状態も良好であった。手術終了時に気管支鏡検査を行ったところ,呼気時に気管の三日月型の変形・狭窄が認められ,気管軟化症と判明した。EDDはおもに救急現場での気管挿管後のチューブの位置確認に使われており,とくに非心肺停止例ではその感度・特異度ともに高い。しかし,その正確さは100%ではなく,気管挿管の確認には聴診などを含め複数の方法を用い総合的に判断することが望ましいと考えられた。

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