豊中市歯科医師会は, 行政と連携して在宅歯科治療を行ってきたが, これまで安全な往診治療を行うために, 危険予知の方法として, 嚥下機能問診票を作成し用いてきた。
今回は歯科治療の効果判定をするために, この嚥下機能問診票を用いて歯科治療後の患者の食生活の変化を調べ, あわせてADL値の変化も調べた。治療前後で聞き取り調査のできた患者は23名で, 男性9名, 女性14名であった。年齢は, 70歳から97歳であり, 主要疾患は, 心疾患14名, 脳血管疾患7名, 骨疾患6名, 糖尿病4名, 等であり, 歯科治療の内容は, 欠損補綴20名, 歯冠修復8名, 歯周治療4名, 口腔外科処置3名であった。
対象患者が寝たきりの高齢者であるため, 処置前診査と処置後調査の期間に全身状態に変化があると思われたので, ADL値を利用してそれを把握した上で, 摂食機能がどう変化したのかを判定した。
その結果ADL値は必ずしも摂食機能と連動しないと考えられた。また術前のADL値によって患者を三つのグループに分けたところ, 術前ADL値の低い患者では, 歯科治療と摂食機能の変化にはあまり関連が認められず, 術前ADL値の中程度の患者で, はっきりとした歯科治療による摂食機能の改善が認められた。また術前ADL値の高い患者では, 治療効果が出にくいことがわかった。
今回の調査をふまえて, 我々は歯科治療による口腔機能全般の変化をさらに簡便で明確に評価できる問診票を作成した。今後はこの問診票をもとに, 本研究をさらに進めてゆきたいと考えている。
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