老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
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38 巻, 1 号
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総説
臨床報告
  • 尾関 麻衣子, 仲澤 裕次郎, 田中 公美, 佐藤 志穂, 駒形 悠佳, 宮下 大志, 戸原 雄, 高橋 賢晃, 田村 文誉, 菊谷 武
    2023 年 38 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

     回復期において経口摂取が困難となり胃瘻造設された患者が,入院中から退院後の継続した摂食嚥下リハビリテーションと栄養介入により,経口摂取が可能となった症例を経験したので報告する。

     患者は70代後半男性。腸閉塞から脱水状態となったことで脳梗塞を発症して入院し,その際の嘔吐により誤嚥性肺炎を発症した。入院中は中心静脈栄養による栄養管理が行われた。経口摂取の再開に向けて,病院主治医からの依頼で病院に訪問した歯科医師が摂食嚥下機能評価を行い,病院の言語聴覚士に対して摂食嚥下リハビリテーションを指示した。患者には胃瘻が造設され,初診から4カ月後に一部経口摂取が可能となった状態で自宅に退院した。退院に合わせて,病院へ訪問していた歯科医療機関が継続して訪問し,管理栄養士が同行した。摂食嚥下リハビリテーションを継続し,摂食機能の改善に合わせて,経口摂取量の調整や適した食形態の指導,調理方法や栄養指導を段階的に行い,嚥下調整食から常食への変換を図った。初診から11カ月後に完全経口摂取が可能となり胃瘻が抜去された。

     本症例より,胃瘻患者の完全経口摂取には,入院中から退院後まで一貫した摂食嚥下リハビリテーションと栄養介入が重要であることが明らかとなった。同時に,退院後の生活期における栄養管理方法については,QOLの改善,家族に対する支援,患者や家族の栄養状態維持の必要性に対する理解について課題が示された。

  • 大岩 大祐, 小野 智史, 飯田 彰, 今渡 隆成
    2023 年 38 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

     77歳の女性が歯肉からの自然出血を主訴に当診療所を受診した。右側下顎第二大臼歯周囲歯肉からの自然出血を認めた。また,全顎的に中等度から重度の辺縁性歯周炎に罹患しており,プラークスコア100%,プロービング時の出血率88%と口腔衛生状態不良であった。血液検査で血小板数軽度低下(138,000/μL,基準値:140,000~379,000/μL),PT-INR値(1.22,基準値:0.90~1.13)やAPTT(45.7,基準値:24.0~34.0)などの凝固因子の軽度延長を認め,血清総タンパク高値(10.4 g/dL,基準値:6.5~8.2 g/dL)と異常所見を得たが,止血能は許容範囲であったため右側下顎第二大臼歯の抜歯を行い,縫合およびシーネにより止血が得られた。その後,血液内科専門医に対診したところ,血清IgMが7,077 mg/dL(基準値:52~270 mg/dL),β2-ミクログロブリンが2.6 mg/L(基準値:0.9~1.9 mg/L)と高値を示しマクログロブリン血症の診断にいたった。特に高齢者において原因不明の総タンパク高値と止血困難な口腔内出血に遭遇した場合,全身状態として血小板や凝固因子,血管壁,線溶系の異常を検討する。『抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版』に止血困難となった際に考えられる原因疾患としてWMは記載されていないが,本疾患も念頭において血液内科専門医へ対診することが肝要と考えられた。さらに,口腔衛生状態不良や血清IgMが3,000 mg/dL以上の場合は抜歯後出血のリスクが高いため,口腔衛生指導にとどめて血漿交換を優先することが望ましいと考えられる。

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