老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
26 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 脇本 仁奈, 松尾 浩一郎, 河瀬 聡一朗, 隅田 佐知, 植松 紳一郎, 藤井 航, 馬場 尊, 小笠原 正
    原稿種別: 原著
    2011 年26 巻1 号 p. 3-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    頸部回旋法の液体嚥下時の有効性についての報告はあるが, 食物咀嚼時の嚥下前の食物通過への影響は明らかになっていない。また, どの程度の頸部回旋角度が代償手技として有効であるかは不明である。今回われわれは, 咀嚼嚥下時に頸部回旋角度を変化させ, 嚥下までの咽頭での食物通過側の変化について検討した。
    若年健常者22名が頸部回旋し, 液体バリウム5 mlとコンビーフ4 gを同時に摂食した時の咽頭での食物の流れを経鼻内視鏡にて記録した。頸部回旋角度は, 正中, 左右各30度, 最大回旋位の5角度とした。嚥下までの舌根部, 喉頭蓋谷部, 下咽頭部での食物先端の流入側および嚥下咽頭期直前の咽頭での食物の分布を同定し, 食物通過の優位側について解析した。
    喉頭蓋谷部では, 頸部回旋側の食物通過の割合が増加する傾向がみられた一方で, 下咽頭部では非回旋側での食物通過の割合が増加する傾向を示した。嚥下開始直前でも, 食物は, 喉頭蓋谷部では回旋側と正中部に多く存在していたが, 下咽頭では非回旋側に多く認めた。頸部回旋角度は30度と最大回旋で, 食物通過経路に有意差はなかった。
    食物咀嚼中, 頸部回旋すると喉頭蓋谷までは回旋側へ優位に流入するが, 頸部回旋による物理的な下咽頭閉鎖により, 食物が下咽頭へと侵入するときには反対側へと経路を変えることが示唆された。さらに, 姿勢代償法として頸部回旋法は, 最大回旋位まで頸部を回旋する必要性がない可能性が示された。
  • 小島 規永, 小澤 総喜, 田中 貴信, 角 保徳
    原稿種別: 原著
    2011 年26 巻1 号 p. 12-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    超高齢社会の到来とともに, 義歯の使用者は年々増加すると考えられ, 人工臓器として長期的な機能が求められる義歯の品質管理はきわめて重要となる。しかしながら, 一般産業界で製品の品質管理のため広く普及している対象物に切断などの処置を加えず, そのまま観察する非破壊検査を義歯に適応した報告は少ない。本研究では, 高解像度を有する最先端の非侵襲医療画像撮像技術である, 光干渉断層診断装置 (Optical coherence tomography : OCT) を用いて, 義歯の重要な構成要素である人工歯 (レジン歯) の形態的特徴を非破壊的に評価することを目的とした。
    国立長寿医療研究センターにて産官共同開発された歯科用OCT画像診断装置を用い, 市販されているレジン歯の唇側面, 口蓋側面, 遠心隣接面より撮影したOCT精密断層像から評価を行った。
    すべてのレジン歯において, エナメル層, デンティン·ベース層の2層構造を精密に観察することが可能であった。OCTの欠点である撮影深度の問題は, レジン歯では全く問題なく, 非破壊的な評価が可能であった。
    これまで非破壊的評価が不可能であった人工歯の内部構造をOCTにより精密に評価することが可能であった。ゆえに, 歯科用OCT画像診断機器はレジン歯の非破壊検査に応用できることが確認された。
臨床報告
  • 齋藤 貴之, 戸原 玄, 半田 直美, 飯田 貴俊, 井上 統温, 和田 聡子, 内山 宙, 小林 健一郎, 中川 兼佑, 植田 耕一郎, ...
    原稿種別: 臨 床 報 告
    2011 年26 巻1 号 p. 18-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    患者は脳梗塞の既往がある74歳の男性であり, 要介護度は5であった。脳梗塞の後遺症で右半身に片麻痺が残り, 寝たきりの状態である。2年前に右小脳梗塞ならびに左内頸動脈塞栓症を発症し, 入院先の病院にて摂食嚥下リハビリテーションを実施するが, 誤嚥性肺炎を発症したため胃ろうを造設した。その後, 在宅にて療養生活を送っていたものの, 口から食べ物を食べたいということで当院による訪問歯科診療を受診した。初診時の口腔内所見は上下無歯顎で上下の総義歯を使用していた。口唇, 頬および舌に運動障害があり, 運動性失語があるもののコミュニケーションは可能であった。
    嚥下の状態は反復唾液嚥下テスト (以下RSSTと略す) と改訂水飲みテスト, 頸部聴診で評価した。診査結果からまずは口唇, 頬の可動域訓練と舌の筋力負荷訓練などの間接訓練を行い, その後機能の改善がみられたところでVEを行うこととした。リハビリテーションと並行して大学病院の摂食機能療法科の歯科医師によるVEを実施し, 直接訓練の食形態とリハビリテーションの実施内容を検討した。その後も, 月に1度の間隔でVEを行い, 回復状況を確認しながら徐々に食形態を改善し, 食事量を増やしていった。その結果, 本症例は胃ろうから経口摂取へと栄養摂取方法を変更し, また血清アルブミン濃度も3.4 g/dlから3.8 g/dlに増加するなど, 低栄養状態を改善することもできた。その後, リコールに移行してから1年が経過しているが, 摂食·嚥下機能と全身状態は良好な経過を維持している。
調査報告
  • 山村 哲生, 高久 勇一朗, 笠原 清弘, 片倉 朗, 高野 正行
    原稿種別: 調 査 報 告
    2011 年26 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    歯科口腔外科領域において, 顎骨骨折はしばしば臨床において取り扱う疾患の一つである。一般には若年者に多いといわれているが, 高齢化と生活様式の変化から, 高齢者にも増加してくることが予想されている。そこで私たちは2005年から2009年の過去5年間で当院を受診した顎骨骨折の患者について, 受傷原因, 骨折部位, 治療法について高齢者 (65歳以上) と若年層 (65歳未満) の比較検討を行った。
    対象期間中の患者は36例で, そのうち高齢者は8例であった。受傷原因は転倒による骨折が7名と大部分であった。骨折部位は8例全例に関節突起部の骨折を認め, そのうち5例が下顎前歯部の骨折を伴った2線または3線骨折であった。治療については, 非観血的処置のほかに, 骨片の偏位が大きく観血的整復固定術を行った症例もあった。また大動脈弁狭窄症に罹患していたため他院に転院となった患者も1例経験した。
    今回の調査で若年層と比較し, 高齢者では顎骨骨折の特徴に大きな違いが認められた。
活動報告
  • 石川 茂樹, 品川 隆
    原稿種別: 活 動 報 告
    2011 年26 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    地域歯科診療支援病院や地域の療養病棟を有する病院の後方支援により, 戸塚歯科医師会訪問歯科診療協力医が中心となり終末期口腔がんの緩和ケアに取り組んだ要介護高齢者の事例を報告し, 横浜市戸塚区における地域完結型の医療連携モデルを紹介する。
    症例は87歳男性。介護福祉士であるケアマネージャーの指摘により, 訪問歯科診療協力医から戸塚区の地域歯科診療支援病院歯科口腔外科に紹介され顎下腺腫瘍の転移が疑われたため, さらに横浜市のがん拠点病院を受診し腺癌と診断され左仙骨への転移が疑われた。末期がんであることが告知され, 協議の結果患者と家族は緩和医療を選択し在宅療養を希望した。病病連携·病診連携により患者情報が共有され, 訪問歯科診療協力医に対して地域支援病院による後方支援の体制がとられ, 最大限在宅療養を継続し最後まで口腔ケアを施行した。
    在宅緩和ケアを地域で完結させるには, 在宅医療を後方支援する医療機関等を含めた地区の身近な生活圏域における既存の資源を最大限に活用した医療連携体制の確立が重要である。そして広がったネットワークが地域における生活の質を重視した医療を支えていくことになると考えられる。
  • 松香 芳三, 縄稚 久美子, 木村 彩, 完山 学, 水口 一, 三野 卓哉, 丸浜 功太郎, 前川 賢治, 藤澤 拓生, 園山 亘, 峯 ...
    原稿種別: 活 動 報 告
    2011 年26 巻1 号 p. 36-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/14
    ジャーナル フリー
    われわれは要介護高齢者施設に歯学部4年生を引率し, 要介護高齢者にインタビューや口腔内診査を行うことにより, 高齢者に対する理解を深め, 臨床上の問題点を抽出させるテュートリアル演習を行った。対象は, 2009年度岡山大学歯学部4年生58名である。学生は少人数グループ (6~7名) に分かれ, 施設見学前に担当患者の情報シート (年齢, 病歴, 職歴, 介護度, 口腔内所見, 食形態など) を用いて予習を行った。その後, 学生は施設に赴き, グループ単位で要介護高齢者や介護者に対してインタビューを行い, その高齢者に生じている医学的, 精神·社会的な問題を抽出した。この症例検討を起点とし, 高齢者の問題点を解決するための方策について, われわれは問題発見解決型テュートリアル演習 (少人数グループの学生により, 患者の問題点·解決策を各グループでディスカッションする演習) を行った。演習前後に, 臨床研究に関連した用語の理解度を聞く項目 (9項目), 要介護高齢者に関連した用語の理解度を聞く項目 (5項目), 臨床決断に不可欠な要素の理解度を聞く項目 (10項目) などに関して学生は自己評価アンケートに回答した。
    その結果, 臨床研究に関連した用語の理解度, 要介護高齢者に関連した用語の理解度, 臨床決断に不可欠な要素の理解度の全項目において, 演習後のスコアの上昇が認められた。
報告
feedback
Top