老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
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32 巻, 4 号
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総説
委員会報告
原著
  • 長谷川 陽子, 堀井 宣秀, 櫻本 亜弓, 杉田 英之, 小野 高裕, 澤田 隆, 永井 宏達, 新村 健, 岸本 裕充
    2018 年 32 巻 4 号 p. 468-476
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/23
    ジャーナル フリー

     目的:本研究は,農村部在住の自立した高齢者を対象に,転倒リスクを高める口腔内要因について検討することを目的に解析を行った。

     方法:対象は,兵庫県篠山市とその周辺地域在住の自立した65歳以上の高齢者308名とした。口腔機能は,歯数,咬合支持,義歯の有無,咬合力を評価した。身体機能評価は,介護予防において運動器の機能向上マニュアルでのアウトカム指標として用いられている項目を基に,歩行速度テストによる最速歩行速度の測定,Time up to goテスト(以下,TUG),タンデムテスト,膝伸展筋力測定,開眼片脚立位テストを行った。また,体組成分析ならびに身体活動量を解析対象とした。

     結果:対象者の歯数と咬合支持および咬合力との間に有意な正相関を認め,義歯使用者は義歯未使用者と比較して身体機能が低値を示す傾向を認めた。歩行能力・動的バランス・敏捷性などの機能的移動能力を反映するTUGと歯数・咬合力との間には,他の項目と比較して強い相関を認めた。また,歯数と身体活動量においても有意な正相関を認め,歯数が多い対象者は,身体活動量が高い傾向を認めた。咬合支持と身体機能評価との関連性を検討した結果,EichnerのClass C群は身体機能が有意に低値を示しており,身体活動量も有意に低値を示した。

     結論:歯の喪失を防ぎ,咬合力を健全に保つことは,身体機能の維持に密接に関連し,転倒リスクを軽減している可能性も示唆された。

臨床報告
  • ―在宅患者歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)からみた検討―
    今渡 隆成, 飯田 彰, 戸倉 聡, 石田 義幸, 小野 智史, 福島 和昭
    2018 年 32 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/04/23
    ジャーナル フリー

     平成28年4月より,保険診療に新設された在宅患者歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)(以下在歯管(Ⅱ))によって訪問歯科診療ごとのバイタルサイン測定が評価されるようになったが,その有用性,整合性を明らかにするため,訪問歯科診療時のバイタルサイン測定を実施,その結果を検討した。対象は,2016年6月から12月までの7カ月間に施設入所中の高齢患者とした。症例数は男性47例,女性134例の計181例で,平均年齢は83.4±9.3歳であった。全身疾患では循環器疾患が73.5%,次いで脳血管疾患56.4%,認知症を含む精神疾患53.6%と続いた。処置内容はブラッシングを主体とした口腔衛生管理が61.1%,義歯装着,修理,調整などの義歯関連が25.0%,充塡などの保存治療が6.7%であった。

     処置前の血圧では57例(31.5%)で異常値を示し,そのうち在歯管(Ⅱ)の適応症例は54例(94.7%)であった。処置中の血圧では62例(34.4%)で異常値を認め,処置内容でみると62例中52例(83.9%)は在歯管(Ⅱ)の適応処置ではなかった。

     以上より,在歯管(Ⅱ)の適応疾患は限定されているものの,異常値を示した症例の大部分を網羅していた。しかし,在歯管(Ⅱ)の適応処置には訪問歯科診療で多く行われる口腔衛生管理や義歯調整は含まれておらず,かつ今回の結果でもそれらの処置で異常値が多く出ていたことから,その拡大に向けた検討が必要と考えられた。

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