老年歯科医学
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4 巻, 1 号
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  • 稲松 孝思
    1990 年4 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
  • 新庄 文明
    1990 年4 巻1 号 p. 8-13
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    在宅老人の歯科治療には, 技術的, 経済的背景, 全身管理への配慮, 対象者の把握など, いくつかの困難な側面がある。したがって往診治療を含む高齢者の歯科治療への要請に応えるためには, これらの制約を取り除く対策が必要である。
    しかし, わが国には特異的に「寝たきり老人」と呼ばれる人々が多いのが実情である。それは, 第一に和風住居と日本型生活様式が体力の弱った高齢者の活動性を低くしていること, 第二に在院期間の長い入院医療が臥位の生活を強いていること, および第三に, 核家族化により弱くなりつつある家庭内介護力に代わる社会サービスが未熟なためである。さらに, 無歯顎で義歯を使用していない高齢者に寝たきり者が多いことは, 咀嚼力の衰えが身体活動の衰えをもたらしていることを示唆している。
    高齢者の食生活の改善は, 栄養の改善をもたらすだけでなく, 生活意欲の改善をもたらすことも少なくない。また, 食生活の偏りが寝たきりの原因ともなる高血圧, 脳卒中や, 骨粗鬆症のリスクに繋がることを考慮するならば, 成人の歯の喪失を防止することも重要である。
    成長の最終段階としての老人の健康状態は, 乳幼児期以降の生涯にわたってうけてきた医療や保健の総決算であるといえる。成人歯科保健対策をも含めて, 「寝たきり」と呼ばれるような状態を無くすることが, 寝たきり老人対策の目標とされねばならない。
  • 山崎 博嗣, 佐藤 広一, 須藤 剛, 道脇 健一, 河野 孝栄, 平井 基之, 尾崎 卓弘, 佐野 浩, 千葉 光行, 川島 康, 住野 ...
    1990 年4 巻1 号 p. 14-23
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    われわれは, 従来より循環器系疾患を有する患者の歯科処置時の生体反応についての研究を行っているが, 今回は循環器系疾患を有する75歳以上の高齢者患者において精神鎮静法を使用した症例について検討を加えた。全身状態の把握および動脈硬化の判定のため術前検査を行った。その結果, 加齢に伴う程度の変化は認められたが, 著しい異常を呈した症例はなかった。ただし, 今回の症例の多くは外来患者で, 歩行通院しているもので, かつ循環器系疾患に対しての内科的治療を受けており比較的病状が安定しているもので, 内科入院中のものは1名だけであった。しかし, 術前検査は患者の状態把握として重要と考えられた。歯科処置は, ジアゼパム静脈内鎮静法もしくは低濃度笑気吸入鎮静法応用下で局所麻酔を併用し, あるいは局所麻酔単独で行った。処置中は, 8チャンネルポリグラフを使用し, 心電図, 末梢容積脈波, 呼吸曲線などの連続記録と同時に, 頻回の血圧測定も行った。その結果, 処置中に不快症状を発現した症例はなかった。高血圧症を伴う症例では, とくにジアゼパム静脈内鎮静法を応用した症例においては処置直前値より処置中のほうが血圧が低い症例が多かった。これは, 処置に伴って上昇する血圧を精神鎮静法で抑えたものと解釈された。笑気吸入鎮静例では, 血圧の下降例と上昇例が認められたが, いずれも, 処置中の患者の状態は安定しており, 鎮静法に伴う副作用もしくは処置後に異常を来たした症例は認められなかった。高齢者における合併症もしくは患者の病態は, 症例毎に異なるため, 歯科処置に際しては, 当日の体調を含めた処置前の患者の把握にも注意し, さらに処置中の監視が患者管理上, 重要と考えられた。
  • 歯科医院来院と口腔健康管理に関する意識を中心として
    内川 賀雄, 奥村 智信, 田中 久義
    1990 年4 巻1 号 p. 24-32
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    首都圏の市部および区, 地方の市部, 郡部の計18歯科医院で, 平成元年2月から4月までの3カ月間に来院した患者を対象に歯科診療に関する意識を知るための意識調査を行った。調査書の配布総数は805枚で, 返信総数は599枚 (回収率74.4%) であった。年齢記入のある有効調査書は556枚で, 60歳以上の高齢者は72名 (全体の12.0%) であった。60歳以上の高齢者の意識について集計した結果, 歯科医院選択の基準は, 「かかりつけだから」が53.5%と最も多く, 来院の動機は「痛んだとき, 症状がでたとき」 (90.0%) が最も多かった。
    歯科医の選択基準は『技術的にうまい』 (79.4%) が最も多く, 嫌いな歯科医は『思いやりがない』と『治療について説明がない』が同数で50.9%と最も多かった。
    歯科医院で口腔の管理や指導を受けたいと回答した者は85.7%であり, その内容としては『定期的な歯石除去』が41.7%で最も多かった。さらに歯科医院で口腔衛生の教室を開くとき希望する内容については『入れ歯を長持ちさせるようにするための教室』が最も多く44.4%であった。
    総合的にみると60歳以上の高齢者は人間的ふれ合いを求めると共に, 機能回復のための補綴物に対する思い入れが強く, より良き技術と義歯などに関する情報を求めていた。
  • 植松 宏, 梅崎 伸子, 酒井 信明
    1990 年4 巻1 号 p. 33-36
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者の患側に筋萎縮が現れることは, 中枢性筋萎縮として広く知られている。しかし, これら片麻痺患者の咀嚼筋について検討した報告はない。そこで, われわれは, CT撮影を行って咬筋と内側翼突筋の断面積を求め, 咀嚼筋の筋萎縮の有無について検討した。
    対象は片麻痺患者12例と健常者7例で, それぞれの平均年齢は48.1±3.7 (mean±SD) 歳と46.0±5.8歳で両者の間に有意差はなかった。また, 片麻痺患者はいずれも罹患後3ヵ月以上経過した慢性例であった。
    CT撮影は金属製の歯冠補綴物によるアーティファクトを避けるため, 下顎角から3cm上方で下顎下縁と平行になるように設定した。筋の断面積は付属のソフトウェアーを利用して求めた。
    その結果, 片麻痺患者については患側および健側ともに, 咬筋と内側翼突筋の断面積に有意差がなかった。健常者についても同様に筋の断面積に左右差がなかった。従って, 咀嚼筋に関しては, 片麻痺に伴う中枢性筋萎縮は認あられないものと考えられる。
    しかしながら, 片麻痺患者と健常者を比較すると, 咬筋, 内側翼突筋ともに, 片麻痺患者で筋の断面積の減少を認めた。これは, 適切を欠く食事内容と放置された歯科疾患による咀嚼運動の不足により, 麻痺側, 健側ともに廃用性萎縮を来しているものと推測された。
  • 澤田 孝紀, 椙山 加綱, 広田 康晃, 清光 義隆, 渋谷 徹, 丹羽 均, 伊堂寺 良子, 杉村 光隆, 堀 智範, 松浦 英夫
    1990 年4 巻1 号 p. 37-42
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    心エコー法は, 心房心室の肥大や拡大, 弁膜の変化, 壁運動の異常, 心膜液貯留, 心腔内血栓や腫瘍, 心奇形などの知見や心拍出量, 駆出率, 左室内径短縮率など心収縮機能についての情報を非観血的に得るのに有用な手段である。
    今回, 我々は心血管系の管理が必要であると思われた患者の歯科治療前に心エコー図を記録し, Gerstenblithらの調べた健康成人の心エコー図と比較検討した。
    対象は昭和63年6月から平成元年5月までの間に大阪大学歯学部附属病院リスク患者総合診療室を受診し, 歯科治療時に心血管系の管理が必要と思われた45歳以上の成人患者で, 心エコー図が満足に記録しえた12名である。Gerstenblithらの結果と比較して, 心血管系の管理が必要と思われた患者では, 僧帽弁拡張期後退速度, 左室内径短縮率, 平均心筋収縮速度などの低下の程度や弁膜の石灰化, 肥厚の程度が進行している場合が多かった。また, 虚血性心疾患や弁膜疾患の既往のある患者では, 壁運動の異常や低下が見られた。
    以上の結果より, 心エコー法を用いると心臓に関する解剖学的知見や心収縮機能などに関して具体的かつ客観的情報が得られるため, 歯科治療中の合併症の予防や発生した合併症に対するより適切な対策を前もって立てることができると考えられる。
  • 上保 奈々江, 植竹 由紀子, 原 房宏, 山田 晴子, 石田 鉄光, 平尾 直樹, 鈴木 章, 稲葉 繁
    1990 年4 巻1 号 p. 43-46
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    日本歯科大学附属病院高齢者歯科診療科における昭和62年10月~平成元年9月までの来院患者565名中, 咀嚼障害を主訴とした人は51.8%を占めており, 第1位となっている。咀嚼障害を主訴としていない高齢者の中にも, 十分な咀嚼が営まれていないにもかかわらず, 現状を受け入れてしまっていたり, 噛むことに対する意欲を失ってしまっている人も多勢いると思われる。
    また, 当診療科に来院する高齢患者の中で, 2/3は何らかの全身疾患を有しており, その中でも特に, 骨粗鬆症, 高血圧などは高齢患者にとって, 一般的な疾患であるといっても過言ではない。
    そこで, 我々は, 噛むことに対する意識を調べるとともに, 高齢患者の食生活での健康への配慮を知る一つの方法として, 平成元年4月より, 当診療科に来院した高齢者124名に対し, 外来診療において負担のかからない程度の記入方式による食生活調査アンケートを実施した。
    今回, このアンケート結果を報告するとともに, 栄養的に問題のあると思われる患者数名に対し, 連続三日間の食事記録調査を行い, 若干の知見を得たので報告する。
  • 歯周病の予防と治療
    鴨井 久一, 沼部 幸博
    1990 年4 巻1 号 p. 47-57
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の予防と治療の両面から検討を行った。その結果, 第1の問題点として歯周治療および予防は歯科医自身の治療だけでは治癒しない。患者のセルフコントロールの重要性を意義づけるためにinformed consentの概念について言及した。
    第2の問題点として加齢現象の主体をどう受け止めるべきか。従来若年者は代謝が活発で加齢とともにその代謝が遅くなるといわれているが, その実態を歯周組織の中で特に歯肉上皮のturn overを3H-thymidineを用いて検討した。そして歯周組織, 歯肉組織の上皮は老化による代謝の低下が証明された。しかし, これは加齢という生活史のなかで改造と適応であると考察した。
    第3の問題点は, 治療と予防を大学附属病院という恵まれた環境での方法と老人ホームなどの集団の場での対応を考察した。成人歯科保健対策検討委員回の中間報告にもあるように人生80年で20歯を残そうという考え方は, 歯周組織の保全と予後管理の重要性を示唆し, 今後の歯科治療の方向づけとして大きくとらえられる問題点である。
  • 山崎 博嗣, 道脇 健一, 川島 康, 青柳 裕, 下野 正基, 長谷川 重夫, 北村 温
    1990 年4 巻1 号 p. 58-66
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは, 本邦においては比較的まれな高齢者の口唇癌患者で, 種々な検索の結果, 3重癌であった1症例を経験したのでその概要を報告する。症例は, 84歳男性で, 初診より約5年前, 胃癌手術を受けた (Borrmann I型の早期癌で, 乳頭腺癌-髄様型β) 。その後, 抗癌剤 (5-FU) および免疫賦活剤 (PSK) の投与を受けていた。4年前残胃全摘, 同時に脾臓摘出。退院後からTegafur・PSKの投与を受けていた。約1年前, 超音波エコーにて右腎に腫瘍像が発見され腎摘出術を受けた (明細胞型のGrawitz腫) 。1か月前, 右口角部に腫瘤を認め, 増大傾向があるため昭和62年5月14日当科に紹介来院した。扁平上皮癌の診断下に入院のうえ, 60Co外部照射を右1門で開始した。30Gyで外部照射を終了し, その後, 137Cs針で組織内照射を行った (合計80Gy) 。放射線治療に対する局所反応は良好であったが, 約2週間後, 突然食欲不振に陥り, 憔悴した状態になったため, 第1, 第2癌の再発も考慮し腹部エコーにて精査したところ, 再発でないことが判明し, IVHにより栄養状態の改善をはかり軽快した。その後の経過中, 昭和63年11月口角部に浅い潰瘍が出現したが, 消炎療法にて改善し, 初診より2年余を経過した現在, 他の癌とともに良好にコントロールされ健在である。以上のことから本例は, 異時性の3重癌と考えられた。最近10年間の日本病理剖検輯報によると, 3重癌の報告は増加しており, また環境因子, 宿主因子あるいは医療原性因子など, 重複癌の発症因子を考慮すると, 人口の高齢化とともに増加することが十分考えられる。したがって, 歯科に来院した高齢者で, 癌の既往歴を有する患者に対して口腔内を精査することは, 口腔診断学上重要と考えられた。また, 高齢者の患者管理にあたつては関係各科の協力が必要と考えられた。
  • 清水 幸子, 菊谷 武, 伊藤 英俊, 石田 鉄光, 平尾 直樹, 鈴木 章, 今村 靖, 三枝 富司夫, 稲葉 繁, 山本 滋, 古屋 英 ...
    1990 年4 巻1 号 p. 67-72
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    現在, 厚生省国民生活基準調査によると, 65歳以上の高齢者の有病率は64.4%にのぼっている。当診療科においても過去約2年間 (1987年10月~1989年8月) の集計によると, 543名中361名が何らかの全身疾患を有している。また, 健常者でも高齢のため1人での通院が困難なケースが多く見られる。そのため高齢者では, 通院回数に制限がある場合, 治療が広範囲に及ぶと予想される場合, 繰り返し行う抜歯等の侵襲のため, 肉体的, 精神的な負担に耐えられない場面に遭遇する。例えば, 当科でも全身疾患の第2位を占める脳血管障害後の片麻痺患者は, 多くの場合車椅子による家族等の介護人による付添いが必要となる。すなわち, 歯科診療を始めるにあたって本人の身体的負担, 付添人の経済的, 時間的負担を考えると, 来院回数を極力少なくした集中治療の必要が生じてくる。
    現在の医療制度においては, 齲蝕, 歯周病などの歯科治療では, 入院治療ができず, 内科的疾患により入院し, 歯科治療を行わなければならない不合理がある。しかし, 高齢患者の場合, 静脈内鎮静法や全身麻酔による集中治療により, 多くの処置を一度に行い通院回数を減らし, 患者の種々の負担を軽減することが可能である。
    今回は, 当科における集中治療例を紹介する。
  • 顆粒状ハイドロキシアパタイト適用による上顎フラビーティシュー部顎堤の改善効果
    長岡 英一, 河野 弘, 濱野 徹, 三村 保
    1990 年4 巻1 号 p. 73-83
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    老年無歯顎患者には顎堤の萎縮が著明な総義歯難症例が多く, 不適切な義歯の使用による種々の義歯性口内炎を生じ, これらのうち義歯の支持域に存在するフラビーティシューは義歯の不安定の要素となっている。その程度にもよるが, フラビーティシューは, 通常は, 補綴的に印象時に対処されているが, その成因を除去することが肝要である。さらに, 下顎顎堤の萎縮が著明な症例では, フレンジテクニックによる義歯の維持, 安定の向上やブレードティース使用による顎堤の負担軽減などが行われている。また, 外科的処置としては, フラビーティシューの除去, 口腔前庭拡張術ならびに自家骨あるいは人工骨による歯槽堤造成術が行われている。
    一方, 上顎顎堤の前方部分にフラビーティシューが存在する症例では上顎義歯の前上方への回転移動に伴う下顎位の偏位によって, 顎関節に為害作用を及ぼすことが考えられる。
    今回, 上顎前方部顎堤にフラビーティシューを有し, 下顎顎堤の萎縮が著明な顎関節症無歯顎患者に対し, 顆粒状アパタイト, ブレード・ティースならびにフレンジテクニックを適用することによって, フラビー部顎堤の改善, 咀嚼効率の向上による顎堤や顎関節部の負担の軽減ならびに上顎義歯の安定の向上を得, 良好な結果を得た。
    本論文は, 上記1治験例における治療方法や治療効果について考察を加えたものである。
  • 中澤 清, 大堀 嘉子, 近藤 怜子, 田村 葉子, 椿 葉子, 服部 みち代, 井川 淑子, 斉藤 俊文, 内山 文博, 渡邊 昭, 並木 ...
    1990 年4 巻1 号 p. 84-88
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    当センターの診療システムの考え方の基本であるリハビリテーション歯科診療は, 人間らしく生きる権利の獲得あるいは回復を目指すことである。それは単に機能・形態障害の問題としてとらえるだけでなく, 能力障害・社会的不利の三つのことなるレベルから高齢者の問題を考える必要がある。今回は食べるということについて一つの症例を通して考えた。
    1. 高齢者の摂食機能訓練において, 脳卒中片麻痺患者では, 運動機能の低下を回復するものであったが, Alzheimer病においては, 口腔周囲感覚の異常と考えられる過敏が摂食機能を阻害しているのがみられた。
    2. 摂食機能訓練開始以前は, 食物形態が普通食で刺激が強く, 摂食が苦しい体験となり口を開こうとしなくなる。
    3. 摂食指導後は, 食物形態が刺激の少ないドロドロ食に改善され, 自分で上下口唇を使って食物を取り込み, 嚥下が滑らかになり, 摂食時間が短縮され, 介助者も余裕が持てるようになる。
    4. 主体性がすらいでくる高齢者患者においては, 食事を自分の口唇で取り込むことが心身の自立を保ち, 生きようとすることへの援助と考える。
  • 館 尚子, 山田 伶子, 稲見 研二
    1990 年4 巻1 号 p. 89-93
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    近年, わが国は急激な高齢化社会を向かえ, 病院を受診する高齢者が増加し, それにともない病院歯科の受診希望も増加してきています。当院は札幌北部と隣接してはいますが病院周辺は石狩川をはさんだ, 農, 漁村地域で昔からの姿を変える事なく無医地区として取り残されています。当院は16年前に “地域と触れ合う医療の実践” を目的として開院し, 現在独自の “地域医療部” というシステムが確立しており, そのチームアプローチに歯科も加わったため歯科を受診する高齢者も日々増加しています。
    6月現在, 当院には65歳から96歳までの高齢者入院患者は112名おり, 平均72.9歳です。患者の多くは合併疾患を持っていて, そのほとんどが要介護高齢者であるために歯科受診希望がある場合には “地域医療部” すなわち病院全体でチームを組み, 治療開始から終了, そして退院後の診療, 定期診査までを患者個々の全身状態および取り巻く環境に応じて行っています。
    今回は6月上旬の高齢者入院患者の口腔内について報告すると共に, 当院の地域医療部のしくみについて紹介し, どのようにして有病高齢者の口腔衛生管理を行っているのかを報告します。
  • 江面 晃, 又賀 泉, 山口 晃, 北野 智丸, 樋口 昌男, 黒川 裕臣, 榎本 友彦, 大滝 晃一, 吉岡 弘行, 畑 好昭
    1990 年4 巻1 号 p. 94-97
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    近年, 在宅歯科診療に対する要望が社会的にも高まってきた。本学においては, 昭和62年9月より歯科医師, 歯科衛生士を中心に在宅歯科往診ケアチームを組織し活動を行っている。そこで, 本学の在宅歯科往診診療の現況を報告した。
    在宅診療は, 歯科医師2名, 歯科衛生士1名, 臨床研修医1名と歯学部学生1名ないし2名が同行して行い, 学生教育の一環にもなっている。現在までに在宅診療を行った74人の患者の内容については, 男性34人46%, 女性40人54%であった。患者年齢の分布は, 70歳代の患者数にピークがみられた。
    在宅診療を行った患者の全身合併症 (基礎疾患) は, 脳脊髄血管障害と精神神経系疾患で約76%を占めている。
    主訴は, 義歯不適合, 義歯の作製希望および歯痛が大部分を占めていた。
    処置内容は, 義歯の作製, 修理・リベース, 義歯調整などの有床義歯に関するものと抜歯が多く行われていた。在宅診療の実際では, いわゆる寝たきり老人がほとんどであり, 全身合併症を有している者が多く, いかなる歯科診療においても全身疾患を配慮することが必要である。在宅診療を希望した74名中13名の患者は, 重篤な合併症を併発しており, 在宅での診療に危険を伴うため, 入院全身管理下で処置を行った。
  • 小山 悠子
    1990 年4 巻1 号 p. 98-105
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    病気そのものを治療の対象とする西洋医学に対し, 東洋医学では心身一如の病人という人間を対象としている。口腔という局所にかたよりがちな, ややもすれば機械論的な治療に陥り易い歯科医療において, 高令者の治療に当たっては, 実に重要な数々の示唆が, 東洋医学には溢れている。その上, 一般社会にも東洋医学に対する関心が高まっていることから, 初診患者を対象に, アンケート調査を行ってみたところ, 「東洋医学を応用した歯科治療を受けたい」と半数以上の人が解答しており, 歯科領域における必要性もうかがわれる。また高令者においては, 様々な疾患を抱えている場合が多く, 生体の機能の低下も考えられるので, 機能異常や疾患を推測できるBi-Digital O-Ring Test等の応用による診断に始まって, 指圧マッサージを頸肩部や手足に施し (Body Mind Touch), 心身のリラクセーションを促すとよい。このような “手当て” を通して形成された良好な治療者と病人関係という “場” を重視し, 治癒機転を促進していくべきである。顎機能不全症などの咬合採得難症例においても, 完骨下関穴低周波通電法 (TEAS) による効果を認めている。このように微細でマイルドな治療手段を用いた東洋医学的療法を, ハードな歯科治療に適用して行くことで, 高齢患者を快適状態に導き, ホメオスターシスを助長することは, ホリスティックデンティストリーを確立する上で非常に大切な手段といえよう。
  • 鴨井 久一
    1990 年4 巻1 号 p. 106-107
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 下野 正基
    1990 年4 巻1 号 p. 108-112
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    加齢に伴う歯周組織の変化について概説した。歯肉では一般に上皮層の菲薄化, 角化現象の低下, 歯肉結合織の硝子化などがみられる。歯肉上皮の根尖側への遊走について, プラークによる炎症と歯の持続的能動的萌出説の両面から考察した。歯根膜の加齢に伴う変化として, 歯根膜空隙の狭窄傾向, 細胞成分の減少, 歯根膜線維の硝子化などがみられる。マラッセ上皮残遺の存在意義と加齢に伴う局在の変化についても述べた。老年者の歯槽骨には多孔性変化がみられるが, これは加齢に伴って骨添加能が減少し, 骨吸収能が増加したたあと考えられた。セメント質の新しい分類について述べ, これらのうち, 加齢に伴うセメント質の増加は細胞性混合重層性セメント質が関与していることを示唆した。以上のことから, 高齢者における歯周組織の再生について若干の考察を加えた。
  • 今村 嘉男
    1990 年4 巻1 号 p. 113-117
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    高齢者の歯周病の特徴を述べ, そのような高齢者患者への口腔清掃指導を難しくしている問題点とその対策にっき若干の解説を行った。高齢者の歯周病の特徴としては, 発症が青, 少年期で急速に進行する病型を経て徐々に成人型の歯周病に移行したものが殆んどであり, 重症型のものが多いこと, 齲蝕や欠損といったその他の歯科疾患が混在しているため病態を複雑にしていること, さらに全身的に進行性の慢性疾患を有していることが多い。加えて精神面の硬直化や肉体的な機能低下という避けがたい老化現象が高齢者にはみられ, それらが青, 壮年者への指導とは比較にならないむずかしさを与えているのである。したがって指導にあたっては, 問診に十分時間をとり, 相手をよく理解し, できるだけ相手に合わせた態度で接することが肝要である。技術指導も欲張らず, ワンポイントでしかもあせることなく根気よく, 繰り返し行うべきである。ブラッシングも始あから複雑なブラシの使いこなしを要求するのではなく, できるだけ単純化した方法を指導すべきである。また, 患者の視力や聴力にも気を配り, 照明を十分あてることや, 耳もとでゆっくり話すといったことが大切である。患者の口腔内に清掃を困難にしている充填物, 補綴物がある場合には, 清掃性のよいものに置き変えることも歯科医としての責務である。
  • 1990 年4 巻1 号 p. 118-123
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1990 年4 巻1 号 p. 124-129
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1990 年4 巻1 号 p. 130-134
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1990 年4 巻1 号 p. 135-140
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1990 年4 巻1 号 p. 141-147
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1990 年4 巻1 号 p. 148-152
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 園山 昇, 稲葉 繁
    1990 年4 巻1 号 p. 154-155
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    日本老年歯科医学研究会では, 平成元年度の総会および学術研究大会を9月9日, 10日の両日に東京・お茶の水の日仏会館ホールにおいて開催した。この第4回大会は.口本歯科大学の園山昇教授が大会長を勤められ, 準備委員長には稲葉繁助教授がその労をとられた。
    42題に及ぶ一般講演に熱心な討議が加えられ, さらに特筆すべきことは, 平成2年4月より本研究会が「日本老年歯科医学会」と名称を変更し, 内外の充実を計るべく決定がなされたことである。
  • 園山 昇
    1990 年4 巻1 号 p. preface1
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/12/05
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