老年歯科医学
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36 巻, 4 号
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総説
臨床報告
  • 古屋 裕康, 菊谷 武, 伊藤 瑞希, 市川 陽子, 佐藤 志穂, 田村 文誉
    2022 年 36 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

     眼咽頭型筋ジストロフィー(Oculopharyngeal muscular dystrophy:OPMD)の嚥下障害により誤嚥性肺炎を発症し経口摂取困難となったが,摂食嚥下リハビリテーションにより経口摂取を再開し,その過程でオンライン診療の活用により経口移行となった症例を経験したので報告する。

     患者は77歳の女性。初診より3年前にOPMDと診断され,緩徐に摂食嚥下障害が進行していた。診断より3年後,誤嚥性肺炎を発症し経鼻胃管栄養となった。自宅退院後,当医療機関に摂食嚥下リハビリテーションの依頼があった。栄養改善,代償法獲得,嚥下訓練により経口摂取を再開した。その後,経口摂取量を増加していく時期において誤嚥リスクに配慮しながらオンライン診療を活用した。オンライン診療では,医療職の同席により全身状態や摂食状況を正確に把握することが可能であった。さらに,対面診療単独よりも頻回な診療が可能となり,摂食嚥下リハビリテーションの機会を増加させた。

     OPMDの嚥下障害に対して栄養改善,代償法獲得,嚥下訓練により経口摂取が再開したことから,継続した摂食嚥下リハビリテーションや嚥下機能評価の必要性が示された。また,オンライン診療の活用は,対面診療を補完する方法として有用であった。

調査報告
  • 佐藤 裕二, 七田 俊晴, 古屋 純一, 畑中 幸子, 内田 淑喜
    2022 年 36 巻 4 号 p. 322-325
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

     目的:新型コロナウイルス感染症の蔓延により,自粛生活が強いられ,対人間でのコミュニケーション能力が低下している。そこで,当科を受診した新型コロナウイルス感染症蔓延前後の患者群に,舌口唇運動機能(滑舌)の差があったかの調査を行った。

     対象と方法:対象の2群は「新型コロナウイルス感染症蔓延前:2019年4月1日~2020年3月31日146名」と「新型コロナウイルス感染症蔓延後:2020年7月1日~2021年8月31日50名」であり,性別,パタカ10回法による舌口唇運動機能の評価を集計した。

     結果:性差については認められなかったが,新型コロナウイルス感染症蔓延後には有意にパタカ10回法の値が大きく,80歳未満では差がないものの,80歳以上ではコロナ前とコロナ後のパタカ10回法の結果は,5.1±1.1(秒)と5.9±1.3(秒)であり,0.8秒程度大きいことが示された。

     結論:80歳以上の高齢者において,新型コロナウイルス感染症蔓延後の患者群では,蔓延前の患者群と比較して,パタカ10回法で評価される舌口唇運動機能が低下している可能性が示された。

  • 大野 友久, 岩佐 康行, 梅田 慈子, 金森 大輔, 貴島 真佐子, 阪口 英夫, 松尾 浩一郎, 元橋 靖友, 尾崎 研一郎, 水口 俊 ...
    2022 年 36 巻 4 号 p. 326-334
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

     厚生労働省統計によれば医科入院患者の7割は高齢者である。病院歯科の医科入院患者への対応状況を把握するため質問紙調査を実施した。

     2021年1月18日~2月19日に病院歯科勤務の日本老年歯科医学会会員を対象とし,質問紙・Webフォームで調査を実施した。

     329名中182名(153施設)から回答を得た(回収率55.3%)。最も多い歯科業務を「外来患者対応」「医科入院患者対応」「摂食嚥下リハビリテーション」「口腔外科」「歯科訪問診療」で分けると「医科入院患者対応」(36.3%)が最多だった。全業務で「医科入院患者対応」に使う時間は約40%,学術活動は約10%であった。最も多い歯科業務で回答施設を分類し,多かった「外来患者対応」「医科入院患者対応」「口腔外科」で比較すると,歯科ユニット数は「医科入院患者対応」(2.96±2.43)が「外来患者対応」(5.16±4.97),「口腔外科」(6.30±3.70)より有意に少なく(p<0.001,p=0.042),常勤歯科医師数は「外来患者対応」(3.00±4.26),「医科入院患者対応」(2.22±2.70)が「口腔外科」(5.35±5.45)より有意に少なかった(各p<0.001)。歯科収益黒字と回答したのは「口腔外科」55.0%,「医科入院患者対応」47.7%であった。

     「医科入院患者対応」が主業務の病院歯科は多く,小規模で黒字になりやすい可能性がある。

  • 道津 友里子, 梅本 丈二, 佐野 大成, 芥川 礼奈, 岩下 由樹, 溝江 千花, 梅田 愛里
    2022 年 36 巻 4 号 p. 335-342
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

     2018年10月,福岡大学病院において医師,歯科医師,認定看護師,歯科衛生士,言語聴覚士および管理栄養士で構成された摂食嚥下センターが開設された。急性期病院における当センター受診患者の実態調査を行った。対象は,2018年10月からの1年間に摂食嚥下チームが医療介入を行った患者のべ364名(男性213名,女性151名)とし,そのうち重複は12名である。診療録を基に,年齢,紹介元診療科および入院にいたった原因疾患,誤嚥性肺炎既往の有無,摂食機能療法の介入の有無および介入期間,介入前後のFunctional Oral Intake Scale(FOIS),嚥下機能検査施行状況,退院後転帰について後ろ向きに調査し,紹介元の診療科別に比較検討した。

     対象患者の平均年齢は71.0±17.5歳,65歳以上が290名で全体の80%を占めた。紹介元診療科は脳神経内科108名(29.7%)で最も多く,次いで救命救急センター86名(23.6%),計20診療科より紹介があった。対象患者のうち摂食機能療法介入した228名において介入時平均FOISは2[1-5](中央値[四分位範囲]),終了時平均FOISは5[2-6]であり,経口摂取状況に有意な改善がみられた(p=0.001)。

     当院摂食嚥下センターでは関連する各診療科よりコンサルトがあり,早期からの嚥下機能評価および摂食機能療法介入により経口摂取状況改善に寄与したことが示唆された。

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