高週齢ラットを用い, 加齢と飼育飼料形態 (固型, 粉末) に加えて, 咬合支持および栄養の下顎骨と大腿骨における粗鬆化および全身持久性に及ぼす影響の検索をした。このために, 対照群, 粉末飼料群, 臼歯切除群, 低カルシウム・ビタミンD欠乏 (低Ca・VD欠) 固型群, 同臼歯切除群を設定し, 運動生理学的, 生化学的, 組織形態計測学的検討を行った。得られた結果は以下の通りである。
1. 遊泳運動持続時間は, 加齢に伴う短縮傾向を認めた。特に, 75週齢臼歯切除群, 同週齢低Ca・VD欠固型群および同週齢臼歯切除群では, 対照群に比して有意に運動時間の短縮を認めた。
2. クレアチンキナーゼ値は, 各群とも50週齢よりも75週齢の方が高い値を示した。また, 50週齢, 75週齢共に, 対照群, 粉末飼料群, 低Ca・VD欠固型群, 臼歯切除群, 低Ca・VD欠臼歯切除群の順に活性値の低下が認められた。
3. 遊離脂肪酸値は, 臼歯切除群および低Ca・VD欠臼歯切除群では, 対照群, 粉末飼料群に比べて低値を示した。また, 前者群では, 50週齢よりも75週齢の方が高値を示したが, 後者群では, その値は逆転していた。
4. 血清III型アルカリフォスファターゼ比は, すべての群において50週齢よりも75週齢の方が高い値を示した。また, 臼歯切除群, 低Ca・VD欠固型群および低Ca・VD欠臼歯切除群におけるIII型アルカリ性フォスファターゼ比は, 対照群, 粉末飼料群よりも高い値を示した。
5. 下顎頭部における骨塩量 (BMD) は, すべての群において加齢に伴い減少する傾向が認められた。なお, 75週齢の低Ca・VD欠臼歯切除群におけるBMDは, 他のすべての群に比して, 有意に低値を示した (P<0.01) 。また, 大腿骨中央部におけるBMDは, 下顎頭部と同様にすべての群において加齢に伴う減少傾向が認められた。なお, この傾向は臼歯切除群と低Ca・VD欠臼歯切除群において顕著であった。
以上の結果から, 生理的加齢変化に加えて, 歯の喪失による咬合・咀嚼機能の低下とそれに伴う飼育飼料の粉末化および栄養不良が, 下顎骨と大腿骨の粗鬆化を進行させる要因の一つであるばかりではなく, 全身の活動性に大きな影響を及ぼすことが確認された。
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