本研究では, 自立した社会生活を送っている高齢者に対して, 義歯の使用状況や満足度が口腔機能や全身的な健康状態に及ぼす影響について検討を行った。
調査対象者は, 大阪府老人大学講座受講生2, 474名 (男性1, 222名, 女性1, 252名, 平均年齢66.6±4.3歳) とし, 集合調査法によるアンケート調査を行ったところ, 以下の結果が得られた。
1. 自立した社会生活を送っている高齢者では, 全国的な無作為調査に比べて無歯顎者の割合が低いなど口腔内の状態は良好であったが, 上下顎とも約2/3の者が有床義歯の対象者であった。
2. 咀嚼, 審美性, 発音, 味覚などの口腔機能に関する満足度は, 義歯装着者では, 天然歯列者と比較して低かったが, 部分床義歯と全部床義歯の装着者との間には著しい差はみられなかった。
3. 健康状態に対する自己評価について, 義歯装着者と天然歯列者との間にほとんど差は認められなかった。しかし, 義歯装着者の中では, 義歯の満足度の高い方が健康状態の自己評価も良好な傾向がみられた。
以上の結果より, 天然歯を喪失した高齢者においても, 満足度の高い義歯を装着することによって, 口腔機能のみならず全身的な健康の向上につながることが示唆された。
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