日本栄養・食糧学会誌
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55 巻, 3 号
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  • 山本 由喜子, 中川 佳子, 森川 和浩, 廣瀬 香苗
    2002 年 55 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    コレステロール投与ラットへの5%の寒天またはアガロペクチン投与による血糖値および血中トリグリセリド, 総コレステロール濃度への影響を調べた。その結果, 寒天には血糖値および血中トリグリセリド, コレステロール濃度に対する影響は認められなかった。アガロペクチンには血中コレステロールの上昇を有意に抑制する効果を見いだした。しかし, 血糖値, 血中トリグリセリド濃度へはアガロペクチンの有意な影響はみられなかった。また, アガロペクチン投与時には, 胆汁酸, コレステロールの盲腸内含量および糞中排泄量が高値を示した。これらの結果より, アガロペクチンは胆汁酸, コレステロールの小腸における吸収を抑制, 糞中への排泄を促進し, 血中コレステロール濃度の上昇を抑制することが推察された。さらに肝臓脂質に対する影響を調べた結果, アガロペクチンは肝臓の総脂質およびトリグリセリドを低濃度に抑える効果があることが示された。
  • 孫 麗曼, 大田 豊, 勝山 直文, 玉 城一, 屋宏 典, 知念 功
    2002 年 55 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症の予防研究に必要となる確実な誘発法として食餌制限が有効であることを示し, さらに女性ホルモンであるエストロゲン投与が予防法の一つとして効果的であることを明らかにした。6週齢の Wistar 系雌ラットにAIN-93G標準食を10日間自由摂食させて予備飼育した後, 5匹ずつ4群に分けて, 食餌制限とエストロゲン投与を行って3週間の飼育実験を行った。対照群となる Group 1にはAIN-93Gを自由に摂取させ, 残りの群にはタンパク質, ミネラルおよびビタミン量を標準食の2倍に調製した制限食を Group 1の摂食量に対して50%食餌制限した。Group 3には, 標準量としてホルモン療法における体重50kgの女性への1日当りエストロゲン投与量 (0.625mg) をラットの体重 (100g) 当りに換算した1.25μgを投与し, Group 4にはその5倍を投与した。本研究によって次の結果を得た。(1) 食餌制限のみの Group 2は, 大腿骨の破断エネルギーおよび骨密度が低く, X線の透過度が高い骨粗鬆症の症状を示し, その発症に対して食餌制限が効果的であることを確認できた。(2) 食餌制限してもエストロゲンを投与した Group 3および4は大腿骨の破断エネルギーと骨密度は対照群 Group 1と同様に高く, X線の透過度は低くなり, 食餌制限で誘発する骨粗鬆症症状をエストロゲン投与で抑制できることを明らかにした。(3) 血清中のエストロゲン濃度は, 対照群 Group 1に比べて食餌制限のみの Group 2では有意に低く, エストロゲン投与群 Group 3および4では有意差はみられなかった。(4) 子宮の重さも対照群 Group 1に比べて Group 2は有意に低く, Group 3および4では有意差はみられなかった。(5) 食餌制限によって誘発される骨粗鬆症は, それに伴うエストロゲンの欠乏が要因の一つであると判断した。
  • 白石 美恵, 馬場 良子, 藤田 守
    2002 年 55 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    休止期, 妊娠期, 授乳期 (出産後0, 7, 14日目) および離乳期ラットの乳腺において, 母体内のアレルゲンが母乳中へ移行するかを知る目的で, 光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて, 形態学的および超微形態学的観察を行った。さらに授乳期ラットの血管内にオボアルブミンを投与し, 乳腺組織を用いて免疫組織化学的検索を行った。光学顕微鏡的観察の結果, 授乳日数の経過とともに腺胞の発達がみられ, 腺腔も拡大した。電子顕微鏡的観察の結果, 授乳期において, 立方状と扁平状の乳腺上皮細胞が観察された。免疫組織化学的検索の結果, 血管内に投与したオボアルブミンの反応産物は, 血管内, 結合組織内, 乳腺上皮細胞内, さらに, 腺腔内および導管内に認められた。これらのことから, 授乳期において, 母体内の食物アレルゲンの一部は血管側から乳腺上皮細胞を通過し, 母乳中へ移行する可能性が示唆された。
  • 渡邊 智子, 鈴木 亜夕帆, 萩原 清和, 見目 明継
    2002 年 55 巻 3 号 p. 165-176
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    五訂成分表収載食品のうち255食品について, 調理による成分の増減を考慮した成分表を作成した。この成分表を用いる栄養価計算は, 従来と同様の方法と作業量にかかわらずより正確な栄養量の算出を可能にする。ここで, 算出した栄養量は実際の摂取栄養量により近似したものとなる。この成分表を用い, 献立例の栄養価計算をすると, 従来の計算結果に比べ, 水溶性ビタミン類, とくにB6およびCの減少が, また水分およびビタミンKおよび食物繊維の増加が大きく評価されることがわかった。
  • 最少有効摂取量について
    斉藤 慎一郎, 池田 郁男, 菅野 道廣
    2002 年 55 巻 3 号 p. 177-189
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    植物ステロールはコレステロールに類似した構造をもち, 植物の脂溶性画分に豊富に存在する。植物ステロールはこれまで多くの臨床試験において血漿中の総コレステロール濃度および低密度リポタンパク質 (LDL)-コレステロール濃度を低下することが示されており, その効果は小腸におけるコレステロール吸収阻害作用によるものである。植物ステロールはステロール骨格内に二重結合を含み, これが飽和化されたものを植物スタノールと呼ぶ。これまで報告されたいくつかの試験では, 植物スタノールは植物ステロールに比べコレステロール低下効果が高いことが報告されている。しかし一方で, スタノールとステロールで効果に違いがみられないとの報告もある。これらのさまざまな臨床試験を検証した結果, 植物ステロールとスタノールの効果はほぼ同等であり, 遊離型換算で0.8g/日が最少有効摂取量であると推定された。
  • 平成13年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞
    辻 英明
    2002 年 55 巻 3 号 p. 191-198
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    大豆におけるアレルゲンを詳細に検索し, 16種類のアレルゲンを見出した。このうち, Gly m Bd 30K, Gly m Bd 68KおよびGly m Bd 28Kが大豆における主要なアレルゲンであることを明らかにするとともに, Gly m Bd 30Kは34-kDa oil-body-associated protein, Gly m Bd 68Kはβ-conglycinin のα-subunit であると同定した。Gly m Bd 28Kは未同定のアスパラギン結合型糖タンパク質であることを明らかにした。さらに, これらの選択的な定量方法を確立して伝統的な発酵大豆食品が低アレルゲン化された食品であることならびに溶媒法により容易に主要アレルゲンを除去しうることを明らかにした。一方, 小麦においては, 15種類のアンルゲンを見いだした。このうち, 27-, 31-と37kDaのタンパク質成分が主要なアレルゲンであることならびにTri a Bd 17Kはすでに同定されているアスパラギン結合型糖鎖を有するα-amylase inhibitor CM16とCM17であることを明らかにした。また, 本研究過程で, Gly m Bd 28Kと Tri a Bd 17Kの糖鎖が患者血清中のIgE抗体と特異的に反応するという興味深い現象を見出した。
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