日本食品標準成分表2020年版 (八訂) (以下, 成分表2020) は, エネルギー (以下, E) の算定方法の変更により全食品のE値が変更された。新E (2020E) と共に従来の算出方法のE (2015E) が収載されている。2020Eと2015Eの一致率は全食品の平均値で97%である。成分表2020では, EとE産生成分の組み合わせは3つである。どれを選択するかは利用者が目的に応じて判断する。成分表2020の最新の正誤表を反映した食品成分データに基づく, 3つの方法を容易に実施できる栄養計算ソフトは栄養計算には必須である。献立や商品のE表示では, EとE産生成分はどの成分かを明記し, 成分表2020に変更したことも周知することが望ましい。栄養成分表示のエネルギー量は, 2015EのE産生成分に栄養成分表示のためのE換算係数を用いているが, 2015EのE産生成分に2020EのE換算係数を用いた値の表示は給食施設用として期待される。
2015年から熱量とたんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の栄養成分表示が加工食品に義務付けられている。栄養成分表示値は, 食品表示基準で定められた分析方法 (表示分析法) による分析値を原則とするが, 日本食品標準成分表 (成分表) の収載値等の合理的根拠に基づいた計算値も認められている。消費者が栄養成分表示を比較して自らに適した食品を選択できるように, 計算値は, 表示分析法による分析値と可能な限り近しい値であることが望ましい。成分表2020年版 (八訂) では, 成分表2015年版 (七訂) から熱量計算方法が変更され, 複数の項目が併記されている栄養成分も多い。そこで本稿では, 表示分析法と成分表2020の分析方法を比較し, 成分表2020を栄養成分表示に用いる場合の適切な参照方法について考察した。
令和2年12月に, 日本食品標準成分表が改訂された。このことを受け, 消費者庁は, 「食品表示基準」及び「食品表示基準について 別添 栄養成分等の分析方法等」 (以下「分析等通知」という。) における, 栄養成分等の分析方法の改正の要否を検討するために, 「令和2年度 食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」を実施した。この調査事業を踏まえ, 令和4年3月及び同年8月に食品表示基準や分析等通知の改正を行った。具体的な内容としては, 脂質, 食物繊維, クロム, セレン及びヨウ素において新たな分析方法を追加するとともに, 従来の分析方法における運用上の課題を解決するために分析等通知の通則を変更したものである。本稿では, 調査事業で整理された食品表示基準及び分析等通知に関する課題とその対応方策を報告するとともに, 今般, 改正した食品表示基準及び分析等通知について解説する。
我が国では一般加工食品の栄養成分表示が義務付けられているが, 諸外国では栄養成分に応じて食品を区分またはランク付けする「Nutrient Profile Model」 (以下, NPモデル) が包装前面表示等に活用されており, 適切な食品選択や健康指標との関連も報告されている。そこで, 我が国の食文化に対応したNPモデルとして, 一般加工食品と料理を対象としたモデルに分けて検討した。一般加工食品は, 対象を18歳以上, 項目を脂質, 飽和脂肪酸, ナトリウム (食塩相当量) および熱量とし, 国民健康・栄養調査食品群別表の中分類を基に分類し, 閾値を設定した。料理のNPモデルでは, 国民健康・栄養調査から食塩摂取量の適正群と過剰摂取群で各料理カテゴリー別の食塩摂取量を比較した。さらに, 一般消費者を対象とした大規模な実施可能性調査を実施した。本稿では, 日本版NPモデル試案の開発手順と実施可能性について解説する。
2019年あるいは2020年の秋期に全国7都市の保育所に在籍する3‐6歳児の幼児798名を対象に, 連続しない平日2日と休日2日の計4日間, 秤量記録法による食事調査を実施した。平日と休日それぞれの習慣的な栄養素等摂取量を算出し, 日本人の食事摂取基準 (2020年版) の各指標の基準と比較し評価した。習慣的な栄養素摂取量が推定平均必要量 (EAR) 未満の割合が平日に比べて休日で有意に多かった栄養素はビタミンA, B1, B2, C, カリウム, カルシウム, 鉄であった。休日と比較し, 平日では望ましい栄養素等摂取状況にあることが示唆された。しかし, カルシウムはEAR未満の幼児の割合が男女ともに平日で約40%以上, 休日で70%以上と高い値を示した。休日ではカルシウムの他にも, ビタミンA, B1, 鉄などの摂取不足が見られ, 幼児における栄養素等摂取状況の問題点が明らかとなった。保育所で提供される給食や間食からカルシウム等の不足しがちな栄養素を補給できるようにするとともに, 家庭での食事状況の改善の必要性が示唆された。