日本栄養・食糧学会誌
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38 巻, 6 号
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  • 金子 佳代子, 若木 範江, 小池 五郎
    1985 年 38 巻 6 号 p. 409-413
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 運動部に所属する健康な女子大学生7名に, ビタミンB1不足食を9日間, その後精白米を胚芽精米におきかえた補強食を10日間摂取させ, 血中ビタミンB1濃度, 赤血球トランスケトラーゼのTPP効果, 糖質代謝係数 (CMI), 尿中ビタミンB1排泄量を測定した。
    2) 実験食材料中のビタミンB1量は, ビタミンB1不足食4.49mg/日, 補強食0.70mg/日であったが, 調理後の含量はそれぞれ0.31mg/日, 0.54mg/日に低下した。
    3) ビタミンB1不足食を9日間摂取することにより血中ビタミンB1濃度が低下し, TPP効果が上昇したが, 補強食後にはそれぞれ回復した。CMI, 尿中ビタミンB1排泄量には, ビタミンB1不足食後と補強食後とに差はみられなかった。
    4) 本研究では一品料理などの簡単な献立, 清涼飲料水の多飲など, これまで種々の栄養調査により問題点を指摘されているような食事を短期間摂取することにより, 潜在的ビタミンB1欠乏に近い状態に至ることが明らかにされた。このことは, 平均栄養摂取量は良好であると言われる現在においても, 多数のビタミンB1欠乏者が存在することを裏づける結果であろう。さらに, 食事中の精白米を胚芽精米におきかえることにより, ビタミンB1不足状態が改善されたことは, 後者の栄養改善への有効性を示したものと考える。
  • 1981年国民栄養調査結果の再検討
    鈴木 継美, 門脇 忠彦
    1985 年 38 巻 6 号 p. 415-420
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1981年国民栄養調査成績のうち35~49歳男子2, 810名, 女子4, 158名をとりあげ, 身長 (H), 体重 (W), 身長と体重から計算される3種の体格指数 (W/H, W/HH2, W/H3), 皮下脂肪厚, 血圧についてその相互の関係を検討した。その結果, (1) 血圧値との間でもっとも大きい正の相関を示したものは男女ともW/HH2, (2) W/H, W/HH2, W/H3のうち身長との相関がもっとも弱いものは男女ともW/HH2, (3) 皮下脂肪厚ともっとも強い正の相関を示したものはW/HH2, (4) W/HH2別に整理した高血圧有病率はW/HH2が22をこえるとともに単調に増大, (5) 皮下脂肪厚別に整理した高血圧有病率は男女で異なるパターンを示し, 皮下脂肪厚とともに単調増大せず, もっとも大きい群ではむしろ減少傾向を示した。
  • 吉田 綾子, 住本 建夫, 田中 凉一
    1985 年 38 巻 6 号 p. 421-425
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1歳, 2歳, 3歳の保育園児について陰膳方式により, 脂質, コレステロール, 脂肪酸の1日摂取量を測定した。
    1) 脂肪酸の分析に, 架橋結合型の溶融シリカ製キャピラリーカラムを用いることにより, 再現性よく正確な値が得られた。
    2) 総脂質摂取量は平均30g前後で, 成人の約55%であった。
    3) コレステロール摂取量は平均値で1歳187mg, 2歳166mg, 3歳145mgと年齢が増すほど少なくなる傾向があったが, 個人差が大きかった。
    4) 脂肪酸摂取量は, 飽和酸9~10g, 不飽和酸15~17gで, 適切な割合に比べ飽和酸の割合が高かった。
    5) 摂取脂肪酸組成については, P/S比の低いものが多く, とくに1歳児では90%が0.6以下であった。成人と比較するとC20: 5, C22: 6の割合が著しく低かった。今回調査した幼児の摂取脂質の供給源は, おもに肉・卵類, 乳類であったが, 脂肪酸組成の改善のためには, ポリ不飽和酸を多く含む植物油や魚類のバランスの良い摂取が必要と考える。
  • 篠原 久枝, 山田 和彦, 細谷 憲政
    1985 年 38 巻 6 号 p. 427-433
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ニワトリ小腸粘膜からマルターゼを精製して, その性質について観察し, スクラーゼーイソマルターゼ複合体のマルターゼ活性と比較した。さらに他の動物のマルターゼと比較検討した。
    1) ニワトリ小腸粘膜のマルターゼをパパインを用いて可溶化し, 硫酸アンモニウム分画, セファデックスG-200カラムクロマトグラフィー, DEAEセファデックスA-25カラムクロマトグラフィーを行なうことにより, 電気泳動的にマルターゼ活性と一致する1本のバンドをもつ単一の酵素標品ならびにスクラーゼーイソマルターゼ (S-I) 複合体の部分精製標品を得た。マルターゼのマルターゼ活性は27倍に, S-I複合体のマルターゼ, スクラーゼ, イソマルターゼ活性はそれぞれ7倍, 42倍, 25倍に上昇した。
    2) マルターゼはセファデックスに弱く吸着されたが, S-I複合体はセファデックスには吸着されなかった。それらの分子量は, ポリアクリルアミドディスク電気泳動法により, それぞれ260,000ならびに280,000と推定された。
    3) マルターゼならびにS-I複合体によるマルターゼ活性のKm値は, それぞれ4.2mM, 1.1mMであり, Vmax
    値は, 488および177μmol substrate hydrolyzed/mg protein/hrであった。いずれのマルターゼ活性も, Trisにより拮抗的に阻害され, K1値はそれぞれ51.6mM, 6.9mMであった。また重金属イオンのAg+, Hg2+により強く阻害され, Cu2+, Zn2+により部分的に阻害された。至適pHは, いずれもpH6.0であった。
    以上のことから, ニワトリ小腸粘膜から精製されたマルターゼは, 単一の酵素タンパク質であり, その性質は哺乳動物のグルコアミラーゼ活性をもつマルターゼとは若干異なるものであることが明らかにされた。
  • 時岡 淳子, 高橋 満里子, 亀高 正夫
    1985 年 38 巻 6 号 p. 435-445
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 藤巻らによって開発された「one stepプラステイン合成法」を応用し, パパイン [EC 3.4.4.10] 触媒で15N-Metを導入して15N-Met導入プラステインを合成した。生成プラステインには, Metが2.56mg/16mgN含まれ, 原材料の分離大豆タンパク質 (SPI) の約2倍量に増加しており, Thrに対するMetおよび含硫アミノ酸の比がSPIより上昇し, 全卵タンパク質のアミノ酸パターンに近いアミノ酸組成を示した。また15N濃度は1.05 atom%であることから, 導入した15N-Metの15Nがプラステイン中のMetにのみラべルされていると仮定すると, 生成プラステイン中のMetは理論的に45%が導入された15N-Metであり, 55%がSPI由来のMetであると計算された。
    2) このプラステインの人工消化物について, Sepha-dex G-25とG-15によるゲル濾過により得られた各画分中の15N-Metは, ペプシンあるいはペプシン-パンクレアチンによる消化時間の経過とともに, 低分子ペプチド画分中に多くなり, これらの酵素製剤により15N-Met導入プラステインは消化されやすいことが示唆された。
    3) 上記酵素製剤によるMet導入プラステインおよびSPIの人工消化率については, TCA不溶部の消化という視点からみると, SPIのほうが高い値を示した。このことは, プラステインがSPIに比べ多量のTCA可溶性の低分子ペプチドを含むことを示すものである。
    プラステイン合成反応についてご指導いただいた東京大学農学部農芸化学科食糧化学研究室荒井綜一助教授, 女子栄養大学食品栄養学研究室木村廣子助教授, 同大大学院学生庄子由美子氏に感謝いたします。また, SPI, 全卵タンパク質, 15N-Met導入プラステインのアミノ酸分析の一部を依頼した日本農産工業 (株) 中央研究所の戸塚耕二所長に感謝いたします。
  • 前田 有美恵, 石川 雅章, 山本 政利, 寺田 志保子, 増井 俊夫, 渡辺 佳一郎
    1985 年 38 巻 6 号 p. 447-450
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    イワシについて焼く, 煮るめ調理を行なった場合のイワシ中の不飽和脂肪酵の安定性を明らかにするために, 脂肪酸組成およびEPA, DHA含有量の変化を検討した。またイワシ中の脂肪酸とEPA食品のそれとを比較し, 次の知見を得た。
    1) イワシ中のEPA, DHAをはじめとする不飽和脂肪酸は, 焼く, 煮るの加熱調理を行なっても安定で脂肪酸組成は変化しなかった。
    2) 生魚に比べ焼魚はEPAが17%, DHAが15%減少したが, これは脂質の減少 (20%) にほぼ比例していた。また煮魚ではEPAおよびDHAはほとんど減少しなかった。すなわち, 焼魚, 煮魚ともに調理によるEPAおよびDHAの極だった損失はないことが明らかになった。
    3) イワシ (11月) は可食部1g当たりEPAを24.9mg, DHAを31.7mg含有していた。同量のEPAおよびDHAを摂取するのにEPA食品ではイワシの12~36倍も高価であった。
    こうしたことより安全性, 経済性および栄養の面を考慮すると, EPAおよびDHAの摂取にはEPA食品よりもイワシを活用するほうが望ましい。
  • 佐藤 孝義, 八尋 政利, 下田 幸三, 浅居 良輝, 浜本 典男
    1985 年 38 巻 6 号 p. 451-458
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    HPLCによる乳, 粉乳, および植物油脂中のK1, K2の定量法を検討し, 以下の結果を得た。
    1) HPLCのカラムは, 市販7種類のODSカラムを比較し, K1, K2の分離能が最も優れていたYMC-PACK A-314を選択した。移動相は, エタノール-水 (99: 1) が適当であった。
    2) 調粉以外め試料では, HPLCの前処理として, ヘキサンーエチルエーテル (1: 1) で抽出したのちに, シリカゲルカラムにKを吸着し, ヘキサンーエチルエーテル (97: 3) で溶出することによって, 油脂とKを分離できたが, この際の油脂負荷量についても検討した。この結果, 1回の吸着-溶脱で, クリーンアップ操作を完結できた。
    3) しかし調粉では, リパーゼ処理によって油脂を分解したのちに, ヘキサンで抽出する操作が必要であった。
    4) ポストラペルに用いた水素化ホウ素ナトリウムは, 試薬調製後の時間経過とともにKの測定値が低下するので, 長時間の連続測定を行なう場合には, 誤差補正が必要であった。
    5) 生牛乳のシリカゲル処理, 調粉のリパーゼ処理によって繰返し測定, 添加回収試験を行ない, いずれも満足すべき結果が得られた。
    定量限界は, 液状乳で0.2μg/l, 全粉乳で1μg/kg, 植物油脂類で2μg/kg, 調粉で2.5μg/kgであった。
    6) 乳, 粉乳および植物油脂のK1, K2は支障なく測定が可能であった。
    生牛乳, 殺菌乳ならびに全粉乳ではK1よりもK2がかなり多く, 人乳ではK2よりもK1のほうがやや多い結果を得た。植物油脂からはいずれもK2は検出されなかった。K1は, ヤシ油では検出されず大豆油に著しく多く含まれていた。
  • 15か月間にわたる観察
    石榑 清司, 池田 順子, 永田 久紀
    1985 年 38 巻 6 号 p. 459-464
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    健康な成人男女各1名を対象に, 約15か月間の毎日の栄養素摂取量を調査し, 栄養素摂取量の日間変動を検討した。
    毎日のエネルギーおよび各栄養素摂取量は2名の被験者ともかなり大きな変動を示し, 多くの栄養素で長期間にわたる徐々の減少傾向が認められた。しかし, 周期的な変動は認められず, 日々の栄養素摂取量にはかなり大きなランダムな変動が認められた。また, 栄養素摂取水準をある程度正確に把握するにはエネルギー, および総タンパク質, 炭水化物の両栄養素では少なくとも2日間それ以外の栄養素では3日間以上の調査が望ましいと思われた。
  • 大塚 譲, 竹内 久美子, 吉岡 千尋, 石川 行弘, 宮川 正美
    1985 年 38 巻 6 号 p. 465-469
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    個人別栄養素摂取量を明らかにするために栄養調査を行ない, 食品類別荷重平均成分表ではなく, 四訂版食品標準成分表を用いて個人別摂取量を計算した。その結果, 集団レベルでの摂取量は栄養所要量を充足しているが, 個人別栄養摂取量にはばらつきが大きく, とくにビタミンA, Dに摂取量の差が大きかった。食品群別摂取量をもとに計算した場合ビタミンA等の摂取量が低くなった。
  • 柳田 桂子, 高橋 満里子, 亀高 正夫, 山中 聖敬
    1985 年 38 巻 6 号 p. 469-472
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    腸管内常在微生物の有無という視点に立って, フローラの影響を明らかにするため, 7週齢の無菌ラットおよび通常化ラットを用いて反転腸管サック法により, 小腸中部と盲腸におけるアンモニア吸収の差異を検討した。その結果, 漿膜側溶液 (SF) 中へ移行してきたアンモニアと粘膜側溶液 (MF) 中のアンモニア濃度との比 (SF/MF) をもって吸収能を示すと, MFのアンモニア初濃度が1mMの場合, 無菌ラットの小腸管におけるアンモニアの吸収割合が, 通常化ラットのそれより優った。また, 15N-アンモニアを用いた実験においても, 同様の成績を得た。しかし, 盲腸におけるアンモニア吸収についての両ラット間の差異は明瞭でなかった。
  • 岩本 朋子, 石田 薫, 柴崎 由美子, 大村 京生
    1985 年 38 巻 6 号 p. 473-475
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    The effect of eritadenine, a hypocholesterolemic factor ef Shiitake mushroom Lentinus edodes, and excess methionine on the lipid contents of rat liver was investigated and the following results were obtained.
    1) Addition of eritadenine and more than 0.45% methionine to the diet containing 18% casein decreased the plasma total cholesterol level, but total lipid in the liver exceeded 20%.
    2) Addition of 8mg% eritadenine and up to 2.4% methionine to CLEA CE-2 diet did not affect the liver lipid level, but the plasma total cholesterol level increased slightly but significantly.
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