動脈硬化性心血管疾患の予防には, 脂質異常症をはじめとする多様な危険因子の包括的管理が重要である。代表的な危険因子である脂質異常症の治療は, 薬物療法に先んじて食事療法が基本であり, そのなかで機能性食品等の役割も期待される。また, LDLコレステロール (LDL-C), HDLコレステロール (HDL-C), トリグリセライド (TG) などの血清脂質の量的評価のなかで, LDL-Cの高値は主要な動脈硬化リスク因子として位置付けられているが, 高TG血症やHDL-Cの低値はリスク因子として未解決の課題がある。我々は動脈硬化危険因子に対するより優れた包括的な管理の確立を目指し, ビタミンEやカロテノイドなどの抗酸化物質により脂質代謝関連バイオマーカーの改善, 血清脂質の量的精密分析および質的評価の開発などをはじめ, 一貫して代謝栄養学的な研究を展開してきた。これらの成果が人々の健康寿命の延伸に役立つことを期待する。
自然免疫系はウイルス, 病原体などの感染を防ぐ生体の初期防御機構である。本研究では, 自己に由来する自然免疫系の抗原である内因性抗原に着目し, 自然免疫系に内因性抗原が及ぼす影響を明らかにするべく検討を行った。自然抗体は酸化タンパク質をはじめとする様々な内因性抗原の表面電荷を指標に認識しており, 恒常性維持などに寄与することが明らかになった。また食品成分とタンパク質の反応によっても自然抗体のエピトープが生成し, 免疫応答活性化に寄与することが示唆された。自然免疫系による内因性抗原の認識は, 骨格筋における筋細胞同士の融合など, 組織における生体応答に関与することも確認され, 自然免疫系は異物認識を介した感染の予防のみならず, 内因性抗原や食品成分による制御を介して全身で様々な機能を担うことで, 健康維持に寄与していることが予想される。
皮膚は, 水分の喪失を防ぐ, 微生物や物理化学的な刺激から生体を守るなど, 生命を維持するためになくてはならない様々な機能をもっている。それゆえ, 常に皮膚機能を高めておくことが必要であり, その方法として日々の食生活の改善や機能性を有する食品素材の継続的な摂取が効果的である。我々は, 様々な食品素材の中から, 「SC-2乳酸菌」「コラーゲンペプチド」「スフィンゴミエリン」の3成分に着目し, 吸収動態, 有効性評価, メカニズム解析をすすめた。また, これら3成分を配合した新たな食品を開発した。臨床試験において, 3成分を配合した被験食品を摂取することにより, 対照食品を摂取したときと比べ, 紫外線刺激から肌を保護するのを助けること, 肌の潤いを保ち, 肌の乾燥を緩和することが示された。本技術により, 食べることによって人において皮膚機能を高めることが可能となり, 人々の健康の維持・増進に貢献できると考える。