日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
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73 巻, 5 号
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総説
  • 宇都宮 一典
    2020 年 73 巻 5 号 p. 193-197
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/19
    ジャーナル フリー

    日本人の食事摂取基準2020年版の主たる改訂点の一つに, 「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」の項目立てを新設したことがあげられる。糖尿病は生活習慣病中でも重要な疾患として取り上げられており, 糖尿病診療ガイドライン2019との整合性を図る形で, その内容を反映するものとなっている。糖尿病の予防と管理の上で基本になるのが, 総エネルギー摂取量の設定である。従来, BMI=22を標準体重として, これに見合うエネルギー設定をしてきたが, 総死亡率が最も低いBMIには幅があり, その関係はフレイル予防を目指す高齢者では異なっている。また, BMI=30を超える肥満者が22を目指すことは難しい。そこで, 標準体重という言葉を廃して, 目標体重と改め, 患者の属性や現体重などから柔軟に設定することとした。今後, 二重標識水法による実際の消費エネルギー量を踏まえ, 実効性の高い設定法を検討する必要がある。

資料
  • 河村 亜希, 杉田 正明
    2020 年 73 巻 5 号 p. 199-205
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/19
    ジャーナル フリー

    スポーツ現場におけるn-3系脂肪酸摂取の有用性が示唆されているが, スポーツ選手を対象とした先行報告は極めて少ない。本研究は, n-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸 (EPA) およびドコサヘキサエン酸 (DHA) の24か月間の摂取が女子長距離選手における血中脂肪酸濃度の変化に及ぼす影響を知ることを目的とした。12名の選手に対してEPA 664 mg, DHA 284 mgを24か月間毎日摂取させ, 1か月に1回の血液検査を実施した。その結果, 血中EPA濃度は介入前と比較し3か月後に126% (p<0.01) 増加し, 血中アラキドン酸 (AA) 濃度は1か月後に17% (p<0.05) 減少した。EPA/AA比は介入前 (0.41±0.04) と比較し3か月後 (0.86±0.05) に110% (p<0.01) 増加し, その後0.67‐0.98の範囲で推移した (p<0.05, p<0.01) 。一方, DHAの血中濃度に変化は見られなかった。従って, 女子長距離選手におけるEPAおよびDHAの日常的な摂取は, 血中EPA濃度を増加させ, 血中AA濃度を低下させることで長期的にEPA/AA比を高めることが確認された。

  • 友竹 浩之, 安富 和子, 富口 由紀子, 山下 紗也加, 郡 俊之
    2020 年 73 巻 5 号 p. 207-213
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/19
    ジャーナル フリー

    約2カ月間の健康増進教室参加者28名 (75±5歳 女性) の咀嚼能力, 握力, 食意識などを教室前後で比較し, 咀嚼, 栄養, 運動の指導の有効性について調べた。教室前後の調査項目は, 体重, 上腕周囲長, 下腿周囲長, 握力, 咀嚼能力 (チューインガム・グミゼリーを使用) , 食意識調査 (質問紙) , 栄養状態評価 (質問紙) とした。教室はテーマにそって, 講義と実習を行った (第2回「噛むことの大切さ」, 第3回「低栄養を予防する食べ方」, 第4回「運動の大切さと筋肉を鍛えるコツ」) 。教室実施期間中は, 咀嚼および栄養強化食品として高野豆腐を参加者全員に提供し, 摂取状況や噛むことの意識を毎日記録してもらった。参加者の教室前後の咀嚼能力を比較した結果, 有意に高くなっていた (チューインガム判定p=0.004, グミゼリー判定p=0.009) 。握力 (p=0.049) , 上腕周囲長 (p=0.012) も有意に増加していた。咀嚼の意識についての得点は, 教室前と比較して有意に高かった (p=0.016) 。

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