日本栄養・食糧学会誌
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39 巻, 6 号
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  • 内藤 博
    1986 年 39 巻 6 号 p. 433-439
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    栄養素の過剰摂取が常に問題となっている現在, ミネラル, とくにCaと鉄の欠乏性が逆に顕在化している。
    この対策として, 食品に強化する方法は, かえって他のミネラルの利用性を妨げる心配がある。このようなことから, ミネラルの摂取量をふやさないで有効性を高めることが有利であると考えられる。
    CPPはその意味で一つの新しいアプローチの材料になるものであろう。すなわち食品タンパク質の難消化性ペプチドを探索して, ミネラルの吸収に有効なもの, または妨害する種類とそれらの性質を明らかにし, 食品の加工時, これらの効果を調節する可能性を示したもので, 食品栄養学上意義があるものと考えている。
  • 村松 成司, 高橋 徹三
    1986 年 39 巻 6 号 p. 441-447
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    尿中窒素排泄量と経皮窒素損失量, さらにそれらの相互関係に及ぼす運動の影響を検討する際, エネルギー供給条件とともに窒素摂取条件も大きな影響因子であると考えられる。本実験は維持エネルギー供給条件下で窒素摂取レベルを高低の2段階にした場合とさらにエネルギーを付加した場合とについて, 尿中窒素排泄量と経皮窒素損失量および窒素出納値に及ぼす運動の影響を検討した。主要な結果は以下のとおりである。
    1. 尿中窒素排泄量は低タンパク食期であるLC期とLE期ではLE期が有意に高く (p<0.01), 高タンパク食期であるHC期とHE期では有意な差はなかったがHE期のほうがHC期よりも高い傾向にあった。エネルギー摂取量を高くしたHE2期はHC期, HE1期よりも有意に低かった (p<0.05)。
    2. 尿中窒素排泄量の経時的変動については低タンパク食期, 高タンパク食期ともに運動負荷期において運動負荷直後に増加し, その後も依然安静対照期よりも高い排泄量を示した。1日量としてみた場合, 運動負荷日が安静対照日よりも高い尿中窒素排泄量を示した。
    3. 経皮窒素損失量はいずれのタンパク食期においても運動することにより有意に増加した。また, タンパク質摂取レベルの高いほうが経皮窒素損失量は高かった。
    4. 窒素出納値は低タンパク食期では運動負荷することにより有意に負に傾き (p<0.05), 高タンパク食期ではHC期とHE1期の間にほとんど差がみられなかった。しかし, エネルギー摂取量を高くしたHE2期では窒素出納値はHC期, HE1期に比べ有意に正の方向にあった (p<0.05)。
  • 岩渕 明, 牧野 久美子, 務台 方彦, 神立 誠
    1986 年 39 巻 6 号 p. 449-455
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ラットに無処理粉乳および乳酸発酵粉乳をそれぞれ給与した後, 経時的に胃内窒素形態分布と門脈血漿遊離アミノ酸濃度を調べた。
    無処理粉乳区および発酵粉乳区のいずれでも, 胃内窒素の主体は純タンパク態窒素であった。胃内全窒素に占める非タンパク態およびアミノ態窒素の割合は, 粉乳給与O. 5時間後から4.5時間後まで, いずれも発酵粉乳区のほうが無処理粉乳区より有意に高かった。胃内容物の胃滞留時間は, 発酵粉乳区のほうが無処理粉乳区よりも短い傾向が認められた。胃内pHは胃底部では, 発酵粉乳区のほうが無処理粉乳区より有意に低かったが, 幽門部では両区の間に有意な差が認められなかった。
    門脈血漿遊離アミノ酸濃度は, 発酵粉乳区では粉乳給与1時間後に最高濃度に達したが, 無処理粉乳区の最高濃度は4.5時間後であった。1時間後の濃度は発酵粉乳区のほうが, また4.5時間後は無処理粉乳区のほうがそれぞれ有意に高かった。
    これらの結果から, 牛乳の乳酸菌による発酵処理は, 乳タンパク質の消化吸収に促進的に作用していることが示された。
    なお, 本論文の要旨は1984年第38回日本栄養・食糧学会総会において発表した。
  • 竹久 文之
    1986 年 39 巻 6 号 p. 457-464
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    マウスにリンゴパルプ, 小麦フスマ, セルロース, コンニャク, コンニャク精粉, ペクチン, グァーガム, 羊毛をそれぞれ含む食餌を与え, 繊維摂取量と糞重量との関係, 糞重量と消化管内滞流時間との関係を検討した。
    1) 繊維摂取量に対する糞湿重量増加効果の大きかった繊維は, コンニャク, リンゴパルプ, ベクチンであり, グァーガム, コンニャク精粉の糞湿重量増加効果はわずかであった。
    2) 繊維摂取量に対する糞乾燥重量増加の著しかった繊維は, セルロースであり, ついでリンゴパルプ, 小麦フスマ, コンニャク, 羊毛であった。グァーガム, コンニャクは糞乾燥重量をほとんど増加させなかった。
    3) 糞増加量 (湿もしくは乾燥重量) に対する消化管内容物の滞流時間短縮率の最も大きかった繊維はリンゴパルプ, 小麦フスマであり, ついでペクチン, コンニャク, 羊毛であった。セルロース, コンニャク精粉の消化管内滞流時間短縮効果は小さく, グァーガムは消化管内滞流時間に影響を与えなかった。
    4) 繊維摂取量に対する糞量の回帰直線, および糞量に対する消化管内滞流時間の回帰直線の相関係数は, リンゴパルプ, 小麦フスマ摂取マウスで最も高値を示した。
  • 河野 節子, 青木 みか, 堀 清記
    1986 年 39 巻 6 号 p. 465-471
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 飲水制限により, 負荷食塩のいかんにかかわらず体重増加抑制をみ, 尿中カリクレイン排泄量の減少をみた。血圧は対照群にくらべ有意の差は認められないものの, 上昇傾向にあった。
    2) 尿カリクレインの分泌促進機構には, アルドステロン, 血圧上昇, 細胞外液量の増大があるが, 食塩の負荷条件, 飲水量により, 尿中カリクレイン排泄量は異なった。尿カリクレイン分泌は負荷食塩により増加するが, 負荷食塩量がほぼ同じとき, 食塩水で投与するほうが高食塩食で投与するより, 血圧上昇, 尿中カリクレイン排泄量の増加作用が強かった。
    3) 血漿アンギオテンシンII濃度は, 飲水制限により増加した。
    4) 高食塩水投与時は尿量と尿中カリクレイン排泄量, 尿中Na排泄量と尿中カリクレイン排泄量, 血圧と尿中カリクレイン排泄量との間で有意の正の相関を示した。しかし, 高食塩食群ではこれらの測定値間には正の相関傾向を認めたが, 相関は有意差ではなかった。
  • 安喜 秀己, 宮本 悌次郎
    1986 年 39 巻 6 号 p. 473-478
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    穀類に存在する結合型ナイアシンの難利用性の原因を明らかとするために, 米ヌカを試料として, 各種加水分解酵素のナイアシン可溶化効果および結合型ナイアシンの有効化を検討し, 効果の認められたセルラーゼとエステラーゼに対する結合型ナイアシンの挙動をDEAEーセルロースイオン交換カラムクロマトグラフィーで示した。
    1) 米ヌカに至適条件で酵素を作用させた結果, セルラーゼ, タカジアスターゼ, エステラーゼで可溶化率が高かった。結合型ナイアシンの有効化はセルラーゼ, プロテアーゼで高かったが, いずれもアルカリ分解には及ばなかった。また, ヘミセルラーゼの効果は最低だった。
    2) 最も効果のあったセルラーゼを反応させた後, さらに他の加水分解酵素を作用させた結果, 第2段階にエステラーゼを作用させた場合でナイアシンの可溶化および有効化に効果が認められた。
    3) 米ヌカ水抽出物のクロマトグラフィーで, 結合型ナイアシンが溶出する非吸着部と遊離型ナイアシンが溶出する吸着部の総ナイアシンの比は, 5: 4であった。
    4) 米ヌカのセルラーゼ処理物のクロマトグラフィーでは, 結合型ナイアシンの大部分が吸着部遊離型ナイアシンに転換した。
    5) 米ヌカにセルラーゼーエステラーゼを連続作用させると, ナイアシンの大部分は遊離型あるいはアルカリ分解せずに本定量菌に利用される型 (仮性遊離型ナイアシン) に転換した。
    6) セルラーゼ処理物の非吸着画分にエステラーゼを作用させると, この画分の約30%のナイアシンが遊離型となって吸着部に移行し, 非吸着部に残ったナイアシンも仮性遊離型ナイアシンに変換した。
    以上より, 米ヌカ結合型ナイアシンの難利用性の一因柔, セルロースにあると考えられる。穀類中結合型ナイアシンの有効利用のためにセルラーゼ続いてエステラーゼ処理を行ない, 可溶化および遊離化させるプロセスを提案する。
    終りに, 本研究の実施にあたり, 米ヌカを提供していただいた毛利精穀研究所に厚くお礼申しあげます。
  • 松尾 眞砂子, 東 和子, 森本 茂美
    1986 年 39 巻 6 号 p. 479-483
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) さつまいもの加熱によるアスコルビン酸 (AsA) の損失には, アスコルビン酸オキシダーゼ (AsA-0) ではなく, カテコラーゼ (CA) が関与していることを明らかにした。
    2) さつまいもやしゃがいもに食塩や醤油を加えて加熱するとCA活性が阻害され, その結果, AsAの分解が抑制された。その阻害度は食塩より醤油のほうが大であった。
    3) CA活性が食塩より醤油によって強く阻害される一因は, 醤油の酸によって反応液のpHが至適域より酸性にずれることである。
    この報告の大要は昭和61年度日本栄養・食糧学会第40回総会 (名古屋) において発表した。
  • 井崎 やゑ子, 吉田 宏三, 日高 公雄, 戸田 和子
    1986 年 39 巻 6 号 p. 485-493
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    緑黄色野菜類を中心に, 果実, 漬物, 葉緑素製品についてα-トコフェロールと光合成色素であるクロロフィル (a, b), β-カロチンの含有量ならびにその相互関係を調べた。
    1) 葉菜類においてクロロフィルとβ-カロチンはきわめて高い正の相関を示し (相関係数0.979) そのモル濃度比は25: 1であった。
    2) 葉菜類におけるクロロフィルとα-トコフェロール, およびβ-カロチンとα-トコフェロールの間にも正の相関が認められたが, 相関係数はそれぞれ, 0.744, 0.761と若干低くばらつきがみられた。
    3) 花らいや花軸を食用とする野菜では, クロロフィルおよびβ-カロチン量に対するα-トコフェロールの割合が, 葉菜類に比較して相対的に高いことが明らかになった。
    4) 青菜の漬物ではクロロフィルの残存量にかかわらず, β-カロチン, α-トコフェロールの含量の高いものが多かった。
    5) クロレラ製品はクロロフィル含有量がきわめて高いが, β-カロチン, α-トコフェロール量の割合は一般的な葉菜類に比べてかなり低いものが多かった。
    6) 緑黄色野菜およびその漬物はα-トコフェロールの供給源として有望であるが, 腸管吸収率を高めるため脂質を含む他の食品群とともにバランスよく献立に組み入れる工夫が望まれる。
    本研究にあたり貴重なサンプルを恵与していただきましたタキイ種苗株式会社研究農場の各位, ならびにご指導ご助言いただきました国立衛生試験所内山充部長, 京都府立大学伊吹文男教授, 並木隆和教授に深く感謝の意を表します。
  • 福与 真弓, 原 征彦, 村松 敬一郎
    1986 年 39 巻 6 号 p. 495-500
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    先にわれわれは緑茶より抽出した茶葉粗カテキン (タンニン) は血中コレステロール濃度を低下させる作用を持つことを観察したも。
    この事実をさらに調べるために, われわれは緑茶カテキンの主成分である (一) エピガロカテキンガレート (EGCg) を分離し, 15%ラードと1%コレステロール含有25%カゼイン食 (高脂コレステロール含有食) 投与ラットの脂質代謝に対する効果を調べた。EGCgは0.5%, 1.0%濃度で添加した。飼育期間は全実験で4週間とした。EGCgの添加は成長および飼料摂取に対して影響を与えなかった。高脂コレステロール含有食を与えたラットでは, 25%カゼイン食 (正常食) を与えたラットに比べて血漿および肝臓コレステロール濃度は増加した。EGCg投与で血漿総コレステロールとLDL-コレステロール濃度は減少し, HDL-コレステロール濃度は増加した。肝臓全脂質, 全コレステロールおよびトリグリセリド濃度は高脂コレステロール含有食投与ラットで増加したが, EGCg添加群ではこれらの濃度は減少した。さらに, EGCg投与は糞中への全脂質およびコレステロールの排泄量を増加させた。25%カゼイン食への1.0%EGCg添加では, 血漿および肝臓コレステロール濃度に影響を与えなかった。
    これらの結果は, EGCgはコレステロール投与ラットの血漿コレステロール低下作用を持つことを示している。
  • 山上 雅子, 金子 哲也, 西山 勇
    1986 年 39 巻 6 号 p. 501-505
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    健康な男子5名を被験者とし, 同一の食事をとらせつつ, 発汗を伴うような身体活動を避けて5日間生活させ, その間, 就寝中を除き2時間ごとに採尿した。NaおよびKの排泄状況を食品成分表を用いて算出したNa事よびKの摂取状況との関連において検討した。その結果以下の知見を得た。
    1) 単位時間当たりのNaおよびKの尿中排泄量, Na/K比 (mEq/rnEq) および尿中NaおよびK濃度には明らかな日内変動が見られた。
    2) 実験期間3日めの朝食からNa摂取量を著減させたところ, 約5時間後の生成尿からNa排泄量が減少し始めた。また, 4日めの朝食からNa摂取量を増加させたところ, 約5時間後の生成尿からNa排泄量が増加し始める傾向が見られた。
    3) 実験期間中のNaおよびK摂取合計量に対する尿中排泄量の割合は約60~80%にとどまった。また, Na排泄量は摂取に一定時間の遅れをもって並行的に変化するのではなく, 数日前の摂取レベルと数時間前の摂取レベルとの複合的反映と考えられる。
  • 吉田 綾子, 住本 建夫, 田中 涼一
    1986 年 39 巻 6 号 p. 506-509
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    30歳代の主婦を対象とし, 7日間の陰膳について, 脂質, コレステロール, 脂肪酸を測定し, 個人差およびMB方式で得られた結果との比較について検討した。
    1) 平均脂質摂取量は, 1名が40.8g/日, 他は50g/日前後であった。
    2) コレステロール摂取量は, 脂質摂取量と関係なく, 3名は350~400mg/日, 3名は約500mg/日であった。
    3) 摂取脂肪酸組成では, C18:1が最も多く, ついで5名がC18:2を, 1名がC16:0を多く摂取していた。C20:5, C22:6のような魚介類由来の脂肪酸摂取量は個人差が少なく, C20:5は0.5%, C22:6は1.0%程度であった。全体にモノエン脂肪酸の割合が大ぎく, 全脂肪酸の40~47%を占めた。
    4) P/S比は, 日によって変動が大きかったが, 平均すると1.0前後になるものが多かった。
    5) 6名の脂質摂取における平均像をMB方式の結果と比べると, 脂質摂取量, P/S比については近い値を示した。しかし, コレステロール摂取量, モノエン脂肪酸の割合は, 今回の陰膳による結果のほうがかなり多く, これは年齢による肉, 卵, 牛乳などの食品の摂取が違うためと考えられた。また, C22:1もMB方式に比べ多かったが, 加工食品に由来するものかどうか検討を加えたい。
  • 福本 順子, 中島 けい子
    1986 年 39 巻 6 号 p. 510-517
    発行日: 1986/12/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    以上の結果は, 次のようにまとめることができる。
    1) 調理品においては多様な食品材料や調味料の混合があるので, 食塩量の算定にナトリウムあるいは塩素のどちらの定量結果を用いても全般的にはほぼ同様な値を得ることができる。
    2) しかし, 塩素定量を基礎とする算定値は, ナトリウム定量を基礎とするものに比べ高い算定値を示す傾向があり, ナトリウム電極法では水分補正をしないと算定値がさらに低くなる傾向が見られた。
    3) 原子吸光法では調理の過程で加熱などの抽出に相当する操作があるため, 調理品試料からのナトリウム抽出に1%塩酸を用いる意義は低いと考えられた。
    4) 食塩の生理学的意義はおもにナトリウムの作用にあると考えられるから, ナトリウム量を算定の基礎とすることが現実的であるが, 測定範囲の広さでは, 検量線の曲線補正機能のある原子吸光法が, 操作の簡便性ではナトリウム電極法が優れていた。
    5) 塩素濃度計は, 塩素の定量には従来の滴定法よりも定量範囲が広く, 操作も簡便で優れていたが, 調理品の食塩量の算定には特別の利点を見いだせなかった。
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