「日本人の食事摂取基準」は, 健康増進法に基づき厚生労働大臣が定めるものとされ, 日本人の健康の保持・増進, 生活習慣病の発症予防のために摂取することが望ましいエネルギー (カロリー) と栄養素の量の基準であるとともに, 「日本人の健康を栄養面から守る」基本である。2015年版の主な点は, 「生活習慣病の重症化予防」が追加されたこと, 「目標とするBMI (体格指数) 」が採用されたこと, また活用のプロセスがフローチャート化されたことである。「日本人の食事摂取基準 (2015年版) 」の活用に当たっては利用目的を明確にし, その目的に沿った食事摂取状況のアセスメントを実施することが望ましい。そのためには, それぞれのアセスメント方法の長所と短所を理解することが重要である。
日本人の食事摂取基準は, 国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を厚生労働大臣が定めるもので, 国民の健康の維持に欠かせない基準である。一方, 食品の栄養表示は, 消費者が食品を選択する際の重要な情報であるとともに, 人びとの健康に密接に関連している。そのため, 栄養表示に係る基準は, 国の健康・栄養施策と整合性を図るとともに, 食品の国際的な規格を策定するコーデックス委員会を通じて, WHOの食事と運動と健康に関する世界戦略等の世界的な健康政策との整合性も図られている。栄養表示の基準となるのが「栄養素等表示基準値」であり, 平成27年4月, 食品表示法に基づく食品表示基準の施行に伴い, 日本人の食事摂取基準 (2015年版) の基準値を基に改定された。本稿では, 食事摂取基準と栄養素等表示基準値との関係について解説する。
沖縄県A自治体の健常な65歳以上の1,525人について, 経済的満足感や生活満足感・主観的幸福感 (精神・情緒的健康) の認知的要因と食品摂取の多様性の, 主観的健康感に対する直接的・間接的な関連を, 性別に明確にすることを目的とした。食品摂取の多様性は, 料理単位の主食, 主菜, 副菜, 牛乳・乳製品, 果物を揃える頻度で評価した。共分散構造分析の結果, 経済的満足感の主観的健康感に対する直接的な関連と比べて, 精神・情緒的健康や多様な食品摂取を介する間接的な関連が, 男女共に大きかった (CFI=0.963, NFI=0.944, RMSEA=0.034) 。主観的健康感に対する直接的・間接的関連を統合すると, 精神・情緒的健康は女性が大きく, 経済的満足感は男性が大きかった。経済的支援を基盤とした精神・情緒的健康を高められる支援は, 食品摂取の多様性を促進し, 良好な主観的健康感と関連を示す可能性が示唆された。
エネルギーを有さない人工甘味料のスクラロースが食欲感覚や胃運動に及ぼす影響を, スクロースとの比較により明らかにすることを目的とした。15℃で150 mLのスクラロース溶液 (SR) , 等温・等量・同程度の甘さのスクロース溶液 (S) , コントロール (軟水, W) を, 異なる日の朝9時に前夜22時より絶食した若年女性に負荷した。30 mLずつ分注したサンプルを口に含み口腔内に十分に行き渡らせてから飲み込む方法で甘味刺激を5回繰り返し, 0・1・5杯目の甘味の感じ方を調べた。胃電図, 心電図 (心拍数) , 体温は, サンプル摂取20分前から摂取65分後まで測定し食欲感覚は15分毎に評価した。SとSRともに摂取直後の食欲を一過性に抑制しSRで低下が顕著だった。その後の食欲は溶液の甘味を強く感じるほど高まった。胃電図の応答はSとSRで異なり, 心拍数増加はSでのみ認められた。本結果よりSRは心拍数や体温は上昇させないが, 一過性に食欲を抑制し異なる胃運動を示すことがSとの比較において示唆された。