日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
60 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
報文
  • 奥 恒行, 田辺 賢一, 渡邊 有希, 尾野 春子, 成瀬 真理, 中村 禎子
    2007 年 60 巻 5 号 p. 233-240
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究ではフラクトオリゴ糖 (FOS), ラクチュロース (LAT), ガラクトシルスクロース (GS) およびイソマルトオリゴ糖 (IMO) を用いて難消化性オリゴ糖の性状の違いがCaならびにMg代謝に及ぼす影響を比較・検討した。飼料組成は各オリゴ糖10%添加飼料とし, 対照にはスクロースを用いた。Wistar系雄ラット (3週齢) を1群6匹で44日間個別飼育し, 6週間後に出納実験を行った。なお, 給餌量は同一になるように軽い制限給餌とした。CaおよびMgは原子吸光法により測定した。尿中デオキシピリジノリン (DPD) はEIA法を用いて測定した。消化されないFOSおよびLATは腸管からのCaならびにMg吸収を促進し, 大腿骨中のCaおよびMg含有量を増加させた。しかし, 部分消化性のGSの効果はやや弱く, 消化性のIMOの効果はさらに弱かった。消化されにくいオリゴ糖は尿中DPD排泄量も低下させた。以上の結果, 難消化性オリゴ糖のCaおよびMg代謝への影響は, オリゴ糖の種類, 特に消化性の低いものほどCaおよびMgの腸管からの吸収を促進することが明らかになった。
  • 中嶋 洋子
    2007 年 60 巻 5 号 p. 241-247
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    妊娠・授乳期の脂肪摂取量の差異が, 仔ラットの脂肪摂取嗜好に及ぼす影響を調べた。妊娠・授乳期の母親ラットを低脂肪食飼料 (LFD), 標準食飼料 (CTD) およびラードを添加した高脂肪食飼料 (HFD) で飼育し, 離乳後仔ラットにはLFDとHFDを選択摂取させ両飼料の摂取割合を5週目まで調べた。いずれの群の母親と仔ラットとも, 実験期間を通して等カロリーになるように飼料を摂取しており, 各群間の体重に有意な差はみられなかった。離乳1週目の仔ラットのHFD摂取割合は85-90%であり, 3群間に有意な差はみられなかった。2週目以降も, LFD群の仔ラットは85% (脂肪エネルギー比率, F比 : 38%) 前後, HFD群の仔ラットは90-95% (F比 : 39-40%) の高率でHFDを摂取し続けたが, CTD群の仔ラットでは60-65% (F比 : 31%) に低下した。CTD群の母親と5週齢の仔ラットの血漿トリグリセリド濃度は他の2群に比べて有意に低かった。したがって母親が不適正なPFC比率で飼料を摂取したならば, その仔ラットは離乳後適正な脂肪エネルギー比率になるようLFDとHFDを選択摂取する能力を失うと考えられた。
  • 臼井 達洋, 岡崎 真理, 神内 伸也, 鈴木 史子, 飯塚 博, 日比野 康英
    2007 年 60 巻 5 号 p. 249-255
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    霊芝菌糸体培養培地抽出物 (WER) は, 霊芝菌糸体を固形培地に接種し, 一定期間培養後, 子実体発生直前に培地と共に熱水抽出・凍結乾燥したものである。今回, 血糖値上昇に対するWERの影響を検討するために, マウスにWERを経口投与した後, 糖負荷を行い血糖値の変化を観察した。またin vitro において, WERの糖質分解酵素に対する阻害活性を調査した。さらに, 食後過血糖改善薬 (α-グルコシダーゼ阻害薬 : ボグリボース) とWERとの併用効果について検討した。WER (1g/kg) の単独経口投与は, マウスの血糖値に影響しなかったが, マルトース負荷30分前にWERを投与すると, 蒸留水を投与した対照群と比較して, マルトース負荷後30分および60分の血糖値上昇が抑制された。WER投与群の血糖値曲線下面積は, 対照群と比較して約20%減少した。また, 可溶性デンプンを負荷した場合においても, WER投与群の血糖値曲線下面積は15%減少した。これに対して, スクロースおよびグルコースを負荷した場合では, WER投与群と対照群との間に有意な差はみられなかった。In vitro において, WERはマルターゼ, α-アミラーゼ, およびスクラーゼの活性を濃度依存的に阻害した。これらの結果から, WERは小腸において糖質分解酵素活性を阻害し, 単糖の腸管からの吸収を低下させることが示唆された。加えて, WERとボグリボース混合液のマルターゼ阻害作用は, ボグリボースが低濃度 (0.035μg/mL) の場合はWERの濃度に依存して増強したものの, マウスにおける糖負荷実験においては, ボグリボースの効果量 (0.1mg/kg) とWER (1g/kg) の併用による効果の増強は認められなかった。したがって, 効果量の薬剤とWERを併用しても過度の血糖降下作用がないことから, WERと上記薬剤の同時服用における安全性を確認することができた。
研究ノート
  • 永井 成美, 亀田 菜央子, 小橋 理代, 西田 美奈子, 堀川 千賀, 江川 香, 吉村 麻紀子, 北川 義徳, 阿部 圭一, 木曽 良信 ...
    2007 年 60 巻 5 号 p. 257-264
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    L-カルニチンがヒトの空腹感に及ぼす影響を明らかにするために, 若年健常女性12名 (21.3±0.3歳) を対象として, L-カルニチン300mgを含有するフォーミュラ食と通常のフォーミュラ食を用いた二重盲検プラセボ対照試験による検証を行った (ウォッシュアウト : 1週間)。前夜からの絶食の後, フォーミュラ食を朝食として摂取させ, 食前および食後6時間まで満腹感スコア (ビジュアルアナログスケールズ ; VASs), 唾液コルチゾール, 血清カルニチン濃度, 血糖値, および心拍変動パワースペクトル解析を用いた自律神経活動指標を経時的に測定した。実験結果から, L-カルニチン摂取により主観的空腹感が軽減される可能性があること, および, 空腹感の軽減には血清総カルニチン濃度が関連していることが示唆された。さらに, 唾液コルチゾールはL-カルニチン摂取30分後, 2時間後には低値を示したが, 空腹感軽減との明確な関連は明らかではなかった。
feedback
Top