日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
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76 巻, 3 号
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総説
  • 山根 俊介, 原田 範雄
    2023 年 76 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    遊離脂肪酸 (free fatty acid: FFA) は単なる栄養素ではなく, さまざまな生理的機能の調節因子として作用する。遊離脂肪酸受容体 (free fatty acid receptor: FFAR) は, 腸管において腸管内分泌細胞 (enteroendocrine cell: EEC) に発現しており, 主として長鎖脂肪酸 (long-chain fatty acid: LCFA) から構成される食事性脂肪の摂取や, 腸内細菌叢が生成する短鎖脂肪酸 (short-chain fatty acid: SCFA) などの刺激による腸管内分泌ホルモンの分泌に関与する。グルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド (GIP) は栄養素摂取に伴ってEECから分泌され, 膵β細胞からのインスリン分泌を促進する腸管内分泌ホルモンであり, インクレチンと総称される。長鎖脂肪酸受容体であるFFAR1やFFAR4, 短鎖脂肪酸受容体として知られるFFAR2やFFAR3のインクレチン分泌への関与が報告されている。インクレチンは血糖降下と体重増加抑制に有利に働く多面的な生理活性を有しており, FFARは2型糖尿病や肥満に対する創薬標的の候補となりうる。本総説ではインクレチン分泌機構におけるFFARの役割について概説する。

  • 原田 直樹
    2023 年 76 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    食事による血糖上昇に対応して適切にインスリンが分泌されて適切に作用することで血糖の恒常性が維持される。特にインスリン分泌能が低い東アジア人では, インスリン分泌を担う膵β細胞の機能維持が2型糖尿病を予防するために重要な課題となっている。腸管インクレチンホルモンであるgastric inhibitory polypeptide/glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP) とglucagon-like peptide (GLP-1) は, 膵β細胞に直接あるいは間接的に作用して, 膵β細胞の細胞増殖促進作用, 細胞死抑制作用, 血糖上昇に対応したインスリン分泌増幅作用を発揮する。インクレチンの血糖恒常性維持機構を利用した応用展開は, 2型糖尿病薬にとどまらず, 健康食品や食事自体による予防にも役立つと考えられる。本稿では, インスリン, インクレチンホルモンと2型糖尿病について概説し, インクレチンの分泌を促進あるいは作用を模倣する機能性食品成分について紹介する。

  • 大日向 耕作
    2023 年 76 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    消化管は生体の外と内をわけるインターフェースである。多様な消化管細胞のうち, 腸内分泌細胞が, 生体の「外」である管腔内の物質情報を受容し, 消化管ホルモンを「内」分泌し, 食情報を生体に伝達するとされる。タンパク質を例にとると, 基質特異性の異なる多様な酵素により断片化されると膨大な分子種が生成することが知られている。近年, 酵素消化物の一斉分析が可能となり, また, 酵素消化により生成する生理活性分子が多数発見されるとともに, 生理活性に重要な構造上のルールが明らかにされてきた。すなわち, 食に由来する外因性シグナルの分子レベルでの解明が進み生体との相互作用の解像度が顕著に上昇したといえる。本総説では, 外因性ペプチドに着目し, その消化管ホルモンシグナル調節について概説する。加えて, 多様な分子構造と生理活性を併せ持つペプチドが, 新しい食シグナルの情報伝達経路や加齢による変容をあぶり出す優れたプローブとなった例も紹介する。

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