日本栄養・食糧学会誌
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71 巻, 1 号
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総説
  • (平成29年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
    長澤 孝志
    2018 年 71 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    食品成分による筋萎縮抑制機構を明らかにするためには, 合成や分解に関わる因子の活性を測定するだけではなく, 合成・分解速度を直接測定することが重要である。骨格筋 (筋原線維) タンパク質の分解速度を測定するために, 3-メチルヒスチジンを用いた方法を尿だけではなく血中, 動静脈差, 後肢筋灌流, 単離筋肉切片, 培養筋細胞においても応用し, 正確かつ短期間の骨格筋タンパク質の分解速度を評価する方法を確立した。この方法を用いて, ラットにおいてロイシンやリシンの摂取により骨格筋タンパク質の分解を抑制できることが示され, その機構としてAktを介したオートファジー形成のダウンレギュレーションであることが明らかになった。リシンの筋萎縮抑制効果は, 加齢に伴う筋肉量の減少 (サルコペニア) のモデルであるSAMP8マウスにおいても認められた。このように, アミノ酸の摂取は骨格筋タンパク質の合成だけでなく, 分解も調節することで, 低栄養, 加齢, 疾病時の筋萎縮を抑制できることが期待される。

  • (平成27年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
    長岡 利
    2018 年 71 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    世界初のコレステロール(CHOL)代謝改善ペプチドであるラクトスタチン(IIAEK)を牛乳β-ラクトグロブリンから発見した。ラクトスタチンは新規Caチャネル関連シグナルを介してCHOL分解系の律速酵素CHOL 7α-水酸化酵素(CYP7A1)遺伝子を活性化した。新規リン脂質結合大豆ペプチドを含有する特定保健用食品は高CHOL血症患者のCHOL代謝を改善した。世界初の大豆由来CHOL吸収抑制ペプチド(ソイスタチン:VAWWMY)を発見し,ペプチドアレイによるVAWWMYの高機能化に成功した。卵白由来GLWEKをCYP7A1活性化ペプチドとして特定した。牛心臓ペプチドや米糠タンパク質は高CHOL血症を改善した。藍藻スピルリナのフィコシアニンやローヤルゼリーのMRJP1がいずれも新規CHOL低減化タンパク質であることを発見した。S-メチル-L-システインスルホキシドを含むCHOL代謝改善作用を発揮する特定保健用食品創成に貢献した。EGCGは動脈硬化を促進するPCSK9の低下を伴ってLDL受容体を活性化した。

報文
  • 野田 聖子, 山田 麻子, 中岡 加奈絵, 五関‐曽根 正江
    2018 年 71 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー

    アルカリホスファターゼ (ALP) はリン酸モノエステルを加水分解する酵素であり, 小腸に局在する小腸型ALPは食事性因子との関わりが大きいが, その生理機能は未だ不明な点が多い。本研究では, ヒト結腸癌由来細胞で, 培養後に小腸上皮様細胞に分化するCaco-2細胞を用いて, ビタミンDがALP発現および腸の分化マーカーである加水分解酵素の発現に及ぼす影響について検討を行った。コンフルエント後14日間培養し, Caco-2細胞にビタミンDを添加した結果, 添加後3, 5, 7日目において1,25-ジヒドロキシビタミンD3濃度100 nMのALP活性およびヒト小腸型ALP遺伝子のmRNA発現量が0 nMと比べて有意に高値を示した。一方, スクラーゼ・イソマルターゼの遺伝子発現はビタミンDにより増強されなかった。本研究において, ヒト小腸上皮様細胞でのビタミンDによる小腸型ALP発現の増強作用を示すことができ, 小腸型ALP発現調節を介したビタミンDの新たな生理機能の解明につながることが期待された。

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