日本栄養・食糧学会誌
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62 巻, 6 号
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総説
  • (平成21年度日本栄養・食糧学会奨励賞)
    望月 和樹
    2009 年 62 巻 6 号 p. 281-290
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    ビタミンA結合タンパク質CRBPIIおよび脂肪酸結合タンパク質L-FABPの空腸における遺伝子発現は, ラットの哺乳中期に増大し, 二糖類水解酵素スクラーゼ・イソマルターゼ複合体 (SI) および果糖輸送担体 (GLUT5) の遺伝子発現は, 哺乳中期から哺乳後期に増大する。本研究では, CRBPIIおよびL-FABPの遺伝子の発現増大は核内受容体PPARαを介しており, GLUT5遺伝子の発現増大は甲状腺ホルモンおよびグルココルチコイドホルモンの核内受容体 (TRα-1, GR) により調節されることを明らかにした。さらに, 栄養素・ホルモンのシグナルがこれら遺伝子の上流域・転写領域上におけるヒストンのアセチル化ならびにクロマチンリモデリング因子CBP/p300の結合を増大させることを明らかにした。これらの知見は, 栄養素・ホルモンが, 核内転写因子の活性化因子およびクロマチン構造を劇的に変動させる鍵因子として働き, 空腸消化吸収関連遺伝子の転写を調節することを示したものである。
報文
  • 喜多村 尚, 小原 郁夫
    2009 年 62 巻 6 号 p. 291-296
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    基本4味に対する味覚感度の月経周期における変動については明らかにはなっていない。本研究は, ヒトの月経周期による基本4味 (甘味, 酸味, 苦味, 塩味) に対する味覚感度の変動について検討した。卵胞期と黄体期が明らかである基礎体温パターンを示した11名の健常女子大生を, 被験者とした。味覚感度の測定部位は, 舌の前2/3の茸状乳頭が散在し, 鼓索神経支配を受けている舌の7カ所とした。ついで, 舌の先端部中央における4基本味に対する味覚感度の測定を行った。甘味の味覚感度は, 卵胞期および黄体期が月経期および排卵期より上昇し, 酸味の味覚感度は, 黄体期が排卵期より低下した。しかし, 塩味および苦味の味覚感度は, 月経周期による変動は観察されなかった。これらのことから, 甘味は, 代謝リズムが急激に変わる月経および排卵期に味覚感度が低下するが, 基本4味すべてにおいて卵胞期と黄体期の間で変動がないことが示唆された。
研究ノート
  • 脇坂 しおり, 小橋 理代, 菱川 美由紀, 山本 百希奈, 池田 雅子, 坂根 直樹, 松永 哲郎, 森谷 敏夫, 永井 成美
    2009 年 62 巻 6 号 p. 297-304
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    胃電図は, 腹部に装着した表面電極から経皮的に胃筋電活動を記録する非侵襲的な胃運動評価法である。本研究では, 胃電図を指標として朝食欠食と朝の胃運動の関連を検討するために, 朝食摂取習慣のある女性11名 (21.5±0.2歳) に, 1週間の朝食欠食および1週間の再摂食試験を連続して行った。各試験の前後に検査日を設け, 前夜から絶食した被験者の体組成, 空腹感と食欲 (Visual analog scaleによる) を測定し, 午前9時より胃電図と心電図を同時に記録した。得られた胃の電気信号を解析し, 1分間に約3回生じる正常波パワー (Normal power), 正常波パワー含有率 (% Normal power) およびその出現頻度 (Dominant frequency; DF) を定量した。心電図からは心臓自律神経活動を定量した。1週間の朝食欠食は, 有意ではないが% Normal powerとDFを低下させた。DFは欠食後から再摂食後にさらに低下した (p=0.074 versus baseline) 。朝食欠食後の空腹感スコア (r=0.55, p=0.077), 食欲スコア (r=0.60, p=0.051) と % Normal powerの相関には有意傾向が認められた。以上の結果より, 1週間の朝食欠食が習慣的に朝食を摂取している若年女性の胃運動を減弱させる傾向が認められたこと, および, 胃収縮運動の強さが空腹感や食欲の強さと関連している可能性が示唆された。
  • 大久保 剛, 伊東 利博, 日比野 英彦
    2009 年 62 巻 6 号 p. 305-309
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    ポリコサノールは, 米糠, サトウキビ, 小麦などの植物ワックスをけん化分解して得られる炭素数20以上の高級脂肪族アルコールの組成物である。ポリコサノールは, 血清脂質の低減作用や肝機能改善作用が数多く報告されており, 海外では医薬品としても使用されている。今回われわれは, 健康な成人男性8名に対して, 1日あたり40 mgのポリコサノールを6週間にわたり摂取した結果, 摂取開始前に比べて有意差をもって飲酒時 (アルコール1単位, エタノール量で約25 g) の血中アセトアルデヒド濃度を低減させることを確認した。具体的には飲酒180分後の血中アセトアルデヒド濃度が摂取前では平均13.0 μmol/Lだったのが, 摂取後には被験者全員が検出限界 (5 μmol/L) 以下になった。このことは, アセトアルデヒドによりもたらされる二日酔い防止効果などが期待される。
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