日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
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76 巻, 4 号
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総説
  • 豊田 優, 宮田 大資, 高田 龍平
    2023 年 76 巻 4 号 p. 193-198
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/24
    ジャーナル フリー

    ビタミンC (VC) は, 日常生活でも耳にするほど知名度が高い必須栄養素である。VCが欠乏すると, 古来より知られる病気のひとつである壊血病になり, 死に至る。1920年にオレンジに含まれる抗壊血病因子をVCと呼ぶことが提案され, 今日に至るまでその生理機能が精力的に研究されてきた。ヒトは体内でVCを合成できないため, 食事から摂取し, 体の隅々に行き渡らせる必要がある。しかし, その仕組みの全容は明らかになっておらず, 分子実体の多くが未解明である。生体内でもっぱらアニオン型として存在するVCは受動的に細胞膜を透過できないため, その体内動態制御にはVCを基質とする膜輸送体の存在が必須である。ヒトのVC輸送体は取り込み型の2種類が知られるのみであったが, ごく最近, 排出型の新規輸送体が見出され, VCEPと命名された。本稿では, VCの体内動態制御機構について概説したのち, VC輸送体に関する最新の知見を紹介する。

  • 中川 公恵
    2023 年 76 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/24
    ジャーナル フリー

    血液凝固や骨形成に重要な役割を果たす脂溶性ビタミンであるビタミンKには, 側鎖構造の違う同族体が存在する。我々は, 主として緑色野菜に含まれるビタミンK1 (フィロキノン, PK) や発酵食品に含まれるメナキノン類 (MK-n, n=6-14) を摂取している。しかし, 我々の体内に最も多く存在するビタミンKは, ビタミンK2 (メナキノン-4, MK-4) である。これは, 摂取したPKやMK-nが体内でMK-4に変換されるからである。この変換反応は, UbiA prenyltransferase domain containing protein 1 (UBIAD1) という酵素が担っており, 全身の組織内でMK-4への変換は行われている。本稿では, 著者らが発見したビタミンK同族体のMK-4への変換機構とそれを担う酵素UBIAD1の役割, UBIAD1欠損マウスから見えるビタミンKの新たな生体機能について概説する。

  • 神戸 大朋
    2023 年 76 巻 4 号 p. 207-216
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/24
    ジャーナル フリー

    亜鉛は生命活動に不可欠となる必須微量栄養素の一つである。近年, 亜鉛トランスポーターをはじめとした亜鉛代謝に関わる分子の理解が進み, 予想を超えた亜鉛の新たな生理機能が解明され始めている。また, 日本人は他の先進国に比べ亜鉛不足に陥る傾向が強いことも様々な疫学調査で報告されていることから, 亜鉛の生理機能を正しく理解し, 健康の維持・増進に亜鉛を役立てることが重要になってきた。本稿では, 亜鉛欠乏症を考察することで亜鉛の重要性を概観し, 亜鉛の生理機能に密接に関わる亜鉛トランスポーターの役割や疾患との関係について紹介する。さらに, 筆者らの研究成果を中心に, 消化管における亜鉛吸収の機序や, 分泌型・膜結合型・細胞小器官局在型亜鉛酵素の活性化の機序について亜鉛トランスポーターとの関連の観点から議論し, 生体内での亜鉛の役割について理解を深める機会を提供したい。

  • ―リン代謝の基本から最近の話題まで―
    瀬川 博子
    2023 年 76 巻 4 号 p. 217-222
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/24
    ジャーナル フリー

    リンは, 人体の必須元素の一つであり, ATP合成, シグナル伝達, 骨のミネラル化など, 多様なプロセスに必要とされる。リンは, 肉や魚など動物性タンパク質を含む食品に多く含まれる他, 乳製品, 種子類に含まれる。リンは多くの食品に含まれており, 通常の食事では不足や欠乏しない。血中リン酸 (Pi) 濃度は, 腸管からの吸収, 骨形成, 骨吸収および, 腎からの排泄と再吸収が様々な因子に応答し, そのバランスが保たれている。腸管や腎臓のPi吸収, 再吸収は, Piを輸送するトランスポーターが担っており, それらをリン調節ホルモンである副甲状腺ホルモン, 活性型ビタミンDやfibroblast growth factor 23が厳密に制御している。リンバランスの破綻は, 成長のみならず生命予後にまで影響する。本総説では, 生体内リン恒常性調節機構について基本事項から最近我々が同定した新規リン代謝調節因子について概説する。

報文
  • 川内 美樹, 小玉 智章, 荒木 光, 射場 仁美
    2023 年 76 巻 4 号 p. 223-229
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/24
    ジャーナル フリー

    酒粕は清酒を醸造する際に圧搾した後の副産物であり, その多くは産業廃棄物として処理されている。しかし, 酒粕には米由来の成分だけではなく酵母や麹菌の菌体成分, その代謝産物も含むため栄養価が高く, 様々な生理機能が報告されている。本研究では, 凍結乾燥させた酒粕を混合した飼料を2型糖尿病モデルマウスに摂取させることで得られる効果について検証した。糖尿病モデルマウスに酒粕混合食を40日間摂食させた結果, 随時血糖値の上昇が有意に抑制され, 経口糖負荷試験 (OGTT) においても改善傾向が確認された。血清インスリン濃度は酒粕を与えることで減少し, 血清アディポネクチン濃度は有意に増加した。さらに, 酒粕混合食群では骨格筋でのglucose transporter 4 mRNAの発現が有意に増加した。これらの結果から, 凍結乾燥させた酒粕には2型糖尿病における耐糖能異常の発症を抑制する効果があることが示唆された。

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