カロテノイドは天然界に広く存在する色素であるが, 食事として摂取するものの起源は野菜や果実が多い。また, ヒトはカロテノイドを生合成することができず, 吸収された後, 種々の組織に分布する。我々は, カロテノイドの皮膚への蓄積を光学的に非侵襲で測定できるデバイスを用い, 野菜摂取量を簡便に見積もることができる装置を開発した。住民を対象とした国内の横断研究 (n=811;女性58%;平均年齢49.5±15.1歳) において, その測定値は, 野菜や果実の摂取量と相関することが知られている血清カロテノイド濃度および簡易型自記式食事歴法質問票 (BDHQ) から算出された野菜摂取量と有意な正の相関を示した (それぞれr=0.678, r=0.210)。また, 数値が高いほどメタボリックシンドロームと関連する複数の指標の測定値が健康的であることが示唆された。容易に測定できることから, 現在, 健診の現場等での活用が始まっている。
野菜と異なる用量の発酵乳 (乳タンパク質, 乳酸菌代謝物, 植物油脂などを含む) を同時摂取した後のカロテノイドの血中濃度の違いを比較することを目的に, 18名の健常男性を対象として, 3群3期のランダム化クロスオーバー試験を実施した。野菜 (235 g), 野菜と低用量の発酵乳 (7.5 g), 野菜と高用量の発酵乳 (15 g) のいずれかを摂取し, 摂取前, 摂取2, 4, 6, 8時間後に採血を行い, 全画分, triacylglycerol rich lipoprotein (TRL) 画分の血漿カロテノイドを測定した。TRL画分血漿α-カロテン, β-カロテン, リコペンの上昇曲線下面積 (iAUC) は, 野菜摂取とくらべ, 野菜と発酵乳の摂取により低, 高用量ともに有意に高値となった。全画分血漿ルテインのiAUCは, 野菜摂取とくらべ, 野菜と高用量発酵乳の摂取により有意に高値となった。これらの結果から, 野菜と発酵乳の摂取は, 野菜のみ摂取したときとくらべ, カロテノイドの吸収を促進させる可能性が示唆された。
ニホンミツバチApis cerana japonicaのハチミツは, 自然発酵することが知られている。しかし, 発酵したハチミツは, 販売されることがほとんどない未利用資源となっている。本研究では, 発酵したニホンミツバチのハチミツを食品として利用するため一般成分と25種の遊離アミノ酸を分析した。発酵したハチミツは, グルタミンやGABA, シスチン, フェニルアラニン, プロリンの5種で大幅な含有量の増加が確認された。さらに, 未発酵のハチミツでは未検出であったヒスチジンやシトルリン, テアニン, シスチン, メチオニン, トリプトファンの6種が発酵したハチミツのみに確認された。一方で, 一般栄養成分には大きな相違は見られなかった。発酵したハチミツのみで増加していた遊離アミノ酸の存在が, 今回はじめて確認された。これらのアミノ酸は, ヒトやミツバチにとって有用であることから, 未利用資源である発酵ハチミツの利用が期待できる。