卵白タンパク質は, 栄養機能は高いことは知られているものの, 健康機能についてはほとんど研究されていなかった。そこで, 卵白タンパク質が良質なタンパク源という特徴に着目し, 基礎的な研究を行ったところ, カゼインと比較して, 体タンパク質量, 筋肉量を増加させるとともに, 体脂肪量および内臓脂肪量を減少させることが示された。しかし, ヒトが卵白を多量に継続摂取することは比較的困難であったため, 卵白を乳酸発酵させることで, 風味を良くした「乳酸発酵卵白」を開発した。内臓脂肪が多めのヒトを対象とした試験を実施したところ, 「乳酸発酵卵白」は内臓脂肪型肥満を改善し, その効果は, 主にオボアルブミンによる脂質の吸収抑制によって引き起こされている可能性が示された。この「乳酸発酵卵白」は血清LDL-コレステロール濃度が高めの被験者で, 血清LDL-コレステロール濃度を低下することもわかった。卵白「乳酸発酵卵白」は, 生活習慣病の予防に活用できるタンパク源として, 人々の健康維持・増進に貢献することが期待された。
フルクトースの過剰摂取は, メタボリックシンドローム発症との関連が指摘されている。油脂は, 構成する脂肪酸により生理作用が大きく異なる。本研究は, 高フルクトース食に含まれる油脂の違いがラット脂質代謝に与える影響を比較した。ラードを対照として魚油, 大豆油または中鎖脂肪酸油を含む高フルクトース食をラットに4週間給餌したところ, 魚油群は, 著しい脂質代謝改善作用が認められた。大豆油群は, 肝臓脂質の低下が認められたが, 魚油群と比較してその作用は小さかった。中鎖脂肪酸油群は, 腸間膜脂肪における脂肪酸合成関連遺伝子の発現が著しく高く, 脂質代謝改善作用は観察されなかった。肝臓タンパク質発現プロファイルは, 魚油群が特徴的であり, 脂肪酸酸化や酸化ストレス応答に関連するタンパク質発現の上昇が認められた。これらの結果から, 高フルクトース食給餌下における油脂の生理作用の違いが明らかになった。
日本食品標準成分表2020年版 (八訂) (以下, 2020年版) では, 日本食品標準成分表2015年版 (七訂) (以下, 2015年版) で利用していたエネルギーの計算方法を変更している。本講座では, 2020年版のエネルギー計算方法, 特に, 2020年版で利用している収載値の不確かさの程度によって, 利用可能炭水化物 (単糖当量) あるいは差引き法による利用可能炭水化物のいずれかを用いるかを決定する方法について解説する。次いで, 2020年版に収載している食品のエネルギー値について, 2015年版のエネルギー換算係数とエネルギー計算方法によるエネルギー値とを比較し, 食品群別, 2015年版でエネルギー計算に利用したエネルギー換算係数の由来別および2020年版でエネルギー計算に利用した主なエネルギー産生成分の成分項目の組み合わせ別のエネルギー値の違いを説明する。さらに国民健康・栄養調査の基礎データを用いて, 摂取エネルギーへのエネルギー値の変更の影響を見る。