日本栄養・食糧学会誌
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48 巻, 3 号
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  • 大熊 浩, 石川 久史, 伊東 禧男, 林 良興, 遠藤 章, 渡邉 日章
    1995 年 48 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Hdを各種溶媒で分画し, その分画物摂取後のアルコール代謝に及ぼす影響についてラットおよびヒトを用いてそれぞれ検討した。
    1) 各種溶媒により得られたHd分画物のうち, アルコール投与ラットの血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度を最も低下させた画分は2規定塩酸溶出画分であり, それぞれの低下率は40%, 37%であった。次に効果を示した画分はメタノール抽出物であり, それぞれ12%, 17%低下させた。
    2) ヒト試験において, 糖質, タンパク質等からなるHdのエタノール抽出物の摂取では, 飲酒後の唾液中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度を低下させる傾向が見られ, 飲酒の2時間後においては, 被験者6名中4名の唾液中のアルコール濃度を有意に低下させた。
    3) エタノール抽出物はヒトの飲酒後の呼気アルコール濃度を有意に低下させ, 飲酒の1時間後においては, 被験者8名中5名で有意な濃度の低下を示した。
    以上の結果より, Hdには飲酒後の体内における血中アルコールやアセトアルデヒド濃度を低下させる効果があり, 飲酒による酔いの症状を軽減するとともに, 呼気中のアルコール濃度の消失を早めるものと思われる。
  • 金沢 文子, 渡辺 ゆかり, 杉本 智美, 城田 由里, 藤本 健四郎
    1995 年 48 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    ウィスター系雌ラットを大豆油を含む飼料で飼育し, 出産後大豆油食とDHAエチルエステル添加食に分けた。
    1) 仔ラットの胃から採取した乳汁の22: 6n-3濃度は, 大豆油群では初乳で最大値を示した後にしだいに減少したが, DHA食群ではしだいに増加した。
    2) 肝臓トリグリセリドの22: 6n-3濃度は5日齢で最大値 (大豆油食群, 4.5%; DHA食群, 13.1%) を示した。また, 各年齢で, 大豆油食群よりDHA食群の値が高かった。
    3) 肝臓リン脂質の22: 6n-3濃度は, 大豆油群では5日齢で最大値を (15.6%), DHA食群では5~20日齢の範囲で高値 (17.4~19.2%) を示した後に減少した。また, 各年齢で大豆油群よりDHA食群の値が高かった。
    4) 大脳皮質リン脂質の22: 6n-3濃度は成熟ラットでの値が最も高かった (大豆油食群, 17.8%; DHA食群, 19.7%)。また, 大豆油食群よりDHA食群が高値を示したが, その差は20日齢において最も顕著であった (大豆油食群, 14.1%; DHA食群, 16.7%)。
  • Binbin WANG, CHENG Chewchuang, 江頭 祐嘉合, 太田 剛雄, 真田 宏夫
    1995 年 48 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    4週齢のウィスター系雄性ラットを用いて飼料中のオリゴ糖のガラクトサミン肝障害発症に及ぼす影響について検討した。<BRガラクトースを含んでいるラクチュロース, ラフィノース, 2種のガラクトオリゴ糖 (以上ビフィズス菌増殖因子), ガラクトースおよびラクトースにガラクトサミン肝障害発症抑制効果が認められた。
    同じビフィズス菌増殖因子であるフラクトオリゴ糖とグルコマンノオリゴ糖にはこのような効果が見られなかった。ビフィズス菌増殖因子が必ずしもガラクトサミン肝障害発症抑制効果を示さない場合があった。
    ガラクトサミン肝障害発症抑制にはオリゴ糖中あるいは単糖としてのガラクトースが深く関与していることが明らかにされた。
  • 村上 哲男, 吉栖 肇, 伊藤 浩行
    1995 年 48 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    8週齢のSHRSPにセサミン (市販粉末飼料中に0.5%添加) を8週間投与し, 血圧や体重および大脳皮質におけるフリーラジカル障害に及ぼす影響を検討した。
    1) WKYでもSHRSPでも, 血圧や体重への影響は認められなかった。
    2) SHRSPの対照群では脳重量の増加がみられ, 半数に脳軟化巣が認められたが, セサミン投与群では脳重量の増加はなく, 脳卒中病変の発生も認められなかった。
    3) SHRSPの大脳皮質では尿酸値の著しい上昇がみられたが, これはセサミン投与により明らかに抑制された。
    4) SHRSPのセサミン投与群ではSOD活性は対照群に比べ低値であった。
    5) SHRSPのセサミン投与群ではNa/K-ATPase活性が対照群に比べ高値であった。
    以上の結果より, セサミンはSHRSPの大脳皮質においてキサンチン-キサンチンオキシダーゼ系で産生されるフリーラジカルを速やかに捕捉することにより, 虚血による障害を防止すると考えられる。
  • 後藤 聡幸, 米原 葉子, 土田 博, 桑田 有
    1995 年 48 巻 3 号 p. 195-202
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Ca, P源としてのCPPに着目し, 飼料中の80%のCaとすべてのPをCPPにより補給した飼料 (飼料Ca水準, 0.5%: P水準, 0.4%) を用い, CaとPの利用性について検討を行った。その結果, 雄ラットではCPP食群のCaの吸収率と保持量は対照群よりも高値であった。雌ラットではCaの吸収率と保持量でCPP食群と対照食群との間に差がみられなかった。雌雄それぞれにおいてCPP食群のP吸収率と保持量が高く, CPP中に含まれるPの体内利用性は, 無機リンと比較して高いことが示唆された。また, 雌雄それぞれにおいてMg吸収率が高かった。CPPの摂取による腎組織中ミネラル量の増加や血清ミネラル上昇はみられなかった。以上のことからCPPに由来するP, Caの利用性は良好であることが示唆された。
  • 村上 哲男, 林 雅弘, 吉栖 肇
    1995 年 48 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット (SHRSP) にユーグレナ (Eugtena gracitis Z) をタンパク源とした飼料を5週齢から20週齢まで投与し血清ならびに血管組織ACE活性と大動脈エラスチン量に及ぼす影響をACE阻害剤のカプトプリルと比較検討した。
    1) 5週齢からユーグレナ飼料を投与したSHRSPの血圧は対照群と変わらなかったが, カプトプリルを投与したSHRSPでは血圧上昇は抑制された。
    2) ユーグレナ群の血清ACE活性は, 対照群と変わらなかったが, カプトプリル群では対照群より高値を示した。
    3) 胸部大動脈ACE活性は対照群に比ベユーグレナ群, カプトプリル群で有意に低値であった (p<0.05)。しかし, 腸間膜動脈ACE活性は対照群に比べ両群とも低値であったが有意な差ではなかった。
    4) ユーグレナ群, カプトプリル群の大動脈比体重は対照群より有意に小さく (p<0.05), 大動脈エラスチン量も高値を示した。
    以上の結果より, ユーグレナ飼料によるSHRSPの血管壁の肥厚抑制や弾性の低下の抑制は血管組織ACE活性の阻害を介していると考えられた。それが, 脳血管疾患の発症抑制や遅延につながり延命をもたらすものと推察した。
  • 村上 哲男, 小川 博, 林 雅弘, 吉栖 肇
    1995 年 48 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    DHAを強化したユーグレナ (DHA-ユーグレナ) をタンパク源とした飼料をSHRSPに5週齢から自然死あるいは20週齢まで与え, 血圧, 脳卒中の発症および寿命に及ぼす影響を調べた。
    1) 血圧の上昇抑制はDHA-ユーグレナ飼料の投与初期からみられ10週齢時には対照群より20mmHg低く, それ以後もその差を保ちながら210~220mmHgの血圧を維持した。
    2) DHA-ユーグレナ群の生存日数は対照群に比べて著しい延長を示し, 脳卒中の発症率も低下した。
    3) DHA-ユーグレナを脱脂して調製した飼料では, 血圧の上昇抑制作用はDHA-ユーグレナに比べて弱かった。生存日数の延長, 脳卒中の発症抑制も認められたが, 脱脂処理によりその効果は低下した。
    4) DHA-ユーグレナ飼料を投与したSHRSPでは大動脈の肥厚が抑制され, エラスチン量も高値を維持した。
    5) DHA-ユーグレナ群の大動脈および腸間膜動脈のアンギオテンシンI-変換酵素 (ACE) 活性は対照群より有意に低値であった。
    6) 血中の過酸化脂質 (TBARSレベル) とその関連酵素の活性は対照群とDHA-ユーグレナ群間で差は認められなかった。
    以上のように, SHRSPの血圧上昇抑制作用, 脳血管病変の発症抑制および延命作用は, 通常培養のユーグレナに比べてDHAを強化したユーグレナで, より有効であった。この理由として, 強化したDHAの降圧作用が効果的に作用したと考えられる。
  • 松崎 広志, 上原 万里子, 鈴木 和春, 佐藤 茂, 五島 孜郎
    1995 年 48 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    Wistar系雄ラットにPレベル0.5% (正常食) と1.5% (高P食) を投与し, 尿中および腎臓中Ca, MgおよびP濃度と腎機能の指標として血清および尿中生化学的なパラメータを測定し, さらに組織学的検討を加え高P食投与時の腎石灰化と腎機能の関係について検討を試みた。
    1) 高P食投与により腎臓中Ca, Mg, P量および尿中P排泄量は増加した。腎機能の指標については, 血清中尿素窒素量, 尿中クレアチニン, アルブミン排泄量およびクレアチニンクリアランスが増加し, 尿素クリアランスは減少した。以上の結果から糸球体の機能低下を起こしていることが示唆された。
    2) 組織学的検討では, 高P食投与により一部の遠位尿細管管腔および大部分の集合管管腔が拡張し, その拡張した管腔の大部分に多量のCaの沈着が観察された。糸球体および近位尿細管ではCaの沈着および形態的変化は観察されなかった。
  • 大塚 正道, 久保 孝夫
    1995 年 48 巻 3 号 p. 225-227
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    食品としての製造的, 物性的向上がみられた湿熱処理干しシイタケ-フラクトオリゴ糖の混合物SK-204はコレステロール負荷ラットによる血中T-CHOL, PLの増加を抑制するとともに肝臓中脂質の増加をも抑制することが認められた。
  • 松山 博昭, 青江 誠一郎, 小西 寛昭, 矢作 佐智子, 八尋 政利, 中島 一郎
    1995 年 48 巻 3 号 p. 228-231
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    完全水素添加 (FH) 油配合飼料の長期摂取がラットの消化管組織形態に及ぼす影響をセルロース (CE) と比較検討した。ショ糖の10%をカノーラFH油の微粉末で置換した飼料と, 同様にCEで置換した飼料を調製し, それぞれラットに5カ月間与えた。投与5カ月後に解剖し, 消化管組織形態の検索を行った。また血清の生化学検査, 肝臓重量を測定した。
    その結果, 胃, 小腸, 盲腸, 結腸には, FH群, CE群ともに病理組織学的な変化は認められなかった。また, 肝臓重量体重比, 血清生化学検査値にも, FH油の影響は認められなかった。
    本成績より, FH油を比較的長期に摂取した場合, 消化管組織に及ぼす影響はCEと同等であることが認められた。
  • 中村 アツコ
    1995 年 48 巻 3 号 p. 232-235
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    1) 梅肉エキスは, pH 3付近の黒褐色ペースト状物質であり, 1kgのウメから43g得られた。
    2) 梅肉エキスはクエン酸とリンゴ酸を主とする40~50%の有機酸, フルクトースとグルコースとソルビトールとを主とする2~3%の糖と糖アルコールおよびアスパラギンとアスパラギン酸を主とする0.5~1%の遊離アミノ酸を含有していた。
    3) 遊離アミノ酸量は, 濃縮の最終段階で急激に減少し, 出発時の17%になった。この際同時に, 急速な褐色化と還元糖の減少も起きたことからアミノカルボニル反応が進行したものと考えられる。
    4) ウメ果汁中でアミノ酸の87%を占めるアスパラギンは, 濃縮の最終段階で急激に減少し, アスパラギン酸が増加したが, それでもなお, 梅肉エキスにおいても最多成分で65%を占めた。
    5) 可視吸収スペクトルには, クロロフィル由来のフェオフィチンaに帰属できる吸収極大が観察された。
  • 越智 宏倫, ラマラツナム ナラシマン, 竹内 征夫, 杉山 裕之
    1995 年 48 巻 3 号 p. 236-238
    発行日: 1995/06/10
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    The antioxidative activities of wasabi (Eutrema wasabi MAXIM.) root, stem, and leaf extracts were evaluated by several methods. The wasabi stem extract was found to be a strong antioxidant when tested by the TBA method using deoxyribose as the substrate, whereas the HPTLC assay using linolenic acid as the substrate indicated that the activity of the leaf extract was greater than those of the stem and root extracts. All three extracts showed strong-OH radical scavenging activity when tested by the ESR method. Superoxide scavenging activity was extremely high in the leaf extract, whereas the stem and root extracts did not show any appreciable effect. These results suggest the occurrence of different antioxygenic principles in the leaf and stem of wasabi. As most of the wasabi leaf and stem has not been utilized so far, these findings will contribute to the total utilization of wasabi plants.
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