日本栄養・食糧学会誌
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70 巻, 6 号
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総説
  • (平成29年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    桒原 晶子
    2017 年 70 巻 6 号 p. 257-262
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

    脂溶性ビタミンの栄養状態と疾患との関係について, これまで欧米を中心に報告されており, ヒトを対象とした栄養研究において, 摂取量と生体指標を同時に調査することが当然のように行われていた。しかし, わが国においてはそのような研究が限られている。著者らは, 脂溶性ビタミン摂取必要量を検討するための摂取量と血中濃度を同時に測定した横断研究, またビタミンDについてはヒトを対象とした介入研究も行った。その結果, 日本人の食事摂取基準 (2015年版) のビタミンD目安量が, 少なくとも日照の限られた集団では不足を招くこと, また不足の回避のためには現行の目安量の3倍程度は摂取すべきことを明らかにした。また, 効率良く脂溶性ビタミンを摂取するためには, 脂質摂取についても考慮すべきであることも示した。その他, ビタミンKの骨での作用に対する必要量や, ビタミンE摂取量と高血圧症との関係についても報告し, 脂溶性ビタミン類のヒトの健康に対する臨床的意義を示した。

  • (平成29年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    永塚 貴弘
    2017 年 70 巻 6 号 p. 263-269
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

    日本人の死因の1位はがんであり, がんによる死亡者数は年々増加している。著者らは脂溶性の食品機能成分による抗がん作用を検証し, その作用メカニズムを究明してきた。無限の細胞分裂能を付与する酵素テロメラーゼががん組織に高頻度に検出され, その活性阻害によるがん抑制が期待されている。テロメラーゼの活性を制御する食品脂質を探索した結果, 含硫糖脂質, 長鎖不飽和脂肪酸, トコトリエノール, 糖化脂質を発見した。また, こめ油成分であるトコトリエノールとフェルラ酸が相乗的にがんを抑制する (G1期停止を介したがん細胞増殖阻害とテロメラーゼ阻害) ことを明らかにした。本稿では, 長鎖不飽和脂肪酸と糖化脂質によるテロメラーゼ制御, こめ油成分による相乗的ながん細胞増殖抑制について概説する。

報文
  • 山田 貴子, 新谷 知也, 飯田 哲郎, 岸本 由香, 大隈 一裕
    2017 年 70 巻 6 号 p. 271-278
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

    ブドウ糖果糖液糖のアルカリ異性化である希少糖含有シロップ摂取による血糖応答に及ぼす影響をヒト試験で評価した。グリセミック・インデックス (GI) 試験を行った結果, 希少糖含有シロップのGI値は49であった。次に, 空腹時血糖値126 mg/dL未満の成人50名を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバーによる低用量単回試験を行った。ショ糖6 gまたは希少糖含有シロップ8.8 g (同量のブドウ糖含有量) をコーヒーに溶解し摂取させ, 120分までの血糖値およびインスリン値を観察した。希少糖含有シロップはショ糖に比べて血糖AUC (曲線下面積) およびインスリンAUCが有意に低下し, 低下率は血糖1.8% (p<0.01) , インスリン6.1% (p<0.05) であった。以上の結果, 希少糖含有シロップはショ糖に比べ血糖応答およびインスリン値の上昇が低い低GI甘味料であることが示された。低用量単回試験は倫理委員会の承認後, 臨床試験登録システムUMIN-CTRに登録し実施した (UMIN000018120) 。

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