日本栄養・食糧学会誌
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56 巻, 6 号
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  • 宅見 央子, 大西 律子, 鏡 義昭, 松田 賢一, 高山 英子, 田中 恵子, 山内 睦子, 福田 泰樹, 米谷 俊
    2003 年 56 巻 6 号 p. 341-354
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 健常者対象の嗜好食品を含めた食品交換表 (N) を利用した食事コントロール法がQOLを保ちながら, 食生活改善に役立つかどうかを検討することである。栄養学を専攻していない一般の健康な女性16名 (年齢: 38.8±6.7歳) を対象に, 適正な範囲の体重および体脂肪率の減少を目標とした8週間の食事コントロールを文書連絡のみで実施した。被験者は, 日々の食事内容を単位式食事記録用紙に記入し, 指示された食事内容と実際の食事内容を比較することにより, 食事のセルフコントロールを実施した。最後まで食事コントロールを終了した13名 (年齢: 392±7.0歳) の結果の解析より, 被験者は適量の嗜好食品を摂取しながら, ほぼ指示エネルギー量を守ることができた。被験者の健康状態には問題がなく, 体重は54.9±6.7 (kg) から52.9±5.7 (kg) に, 体脂肪率も27.5±5.0 (%) から25.3±4.5 (%) に有意に減少した (p<0.01)。タンパク質, 食物繊維, 鉄, ビタミンA, ビタミンB1, ビタミンB2, ビタミンCの栄養密度が有意に増加し (p<0.05), 食事コントロール終了時の自記式質問票調査結果では, 13名中10名が「日々の栄養バランスがわかって参考になった」と回答し, 同時に合計9名の被験者が適量の嗜好食品も摂取しながら食事コントロールする方法を好意的に考えていた。以上より, 嗜好食品も含めた食品交換表 (N) を利用した食事コントロール法は,「食の楽しみ」にも配慮された負担の少ない方法であり, 健常者の食生活改善に役立つ可能性があることが示された。また, 食事コントロール終了約6カ月後の自記式質問票による追跡調査において, 13名中10名が減少した体重を維持または試験前の体重より少なかったことと, 10名が「量の目安がつくようになった。」と回答していることから, 交換表 (N) を利用した食事コントロールを実践した経験が, 試験終了後も各自の適正なエネルギーや食品摂取量を認識することに役立っている可能性が考えられた。
  • 山田 未佳, 三皷 仁志, 津崎 ゆかり, 三輪 尚克, 茶圓 博人, 山本 格
    2003 年 56 巻 6 号 p. 355-363
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ルチンおよびヘスペリジン (ビタミンP) は抗酸化作用を有し, さまざまな疾患に対し予防・改善効果を発揮することが期待されている。しかしながら, 水に対する溶解度がきわめて低く, その効果を十分に活用できなかった。グルコースを付加した糖転移ビタミンPは, ビタミンPと比べ水溶度が1万倍以上に向上した。われわれは, 糖転移ビタミンPの抗酸化作用を評価し, また, 高脂血症においてフリーラジカルに起因する酸化ストレスに有効かどうかを検討した。糖転移ビタミンPは, in vitro においてビタミンPと同等の抗酸化作用を保持し, これらを経口投与したラットの血漿は, 硫酸銅による脂質過酸化が抑制された。また, 糖転移ビタミンPは, 高脂肪食で誘発した高脂血症マウスの血中総コレステロール (Chol) および HDL-Chol を有意に低下させた。高脂血症マウスでは, 血中および眼球中の過酸化脂質が有意に増加し, 酸化ストレスの亢進が示唆された。糖転移ビタミンPはこの増加を有意に抑制した。さらに, 糖転移ビタミンPは, 高脂血症マウスにおいて亢進したインターロイキン (IL)-1β, インターフェロン (IFN)-γおよびIL-4産生を有意ではないものの抑制していた。以上の結果から, 糖転移ビタミンPは生体内で抗酸化作用を発揮することにより, 高脂血症において亢進した脂質過酸化および炎症反応を軽減させることが明らかとなった。
  • 松葉 滋, 山田 則子, 山崎 卓也, 田渕 三保子, 小野寺 準一
    2003 年 56 巻 6 号 p. 365-369
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    ベニバナの生体内における抗酸化作用を検討するために, ベニバナ花弁のメタノール抽出物を低ビタミンE飼料負荷ラットに4週間投与した。その結果, 肝臓の過酸化脂質低下および動脈硬化指数の軽減作用が明らかとなった。そこでその効果がベニバナのどの成分に起因するのかを検討するために, メタノール抽出物 (M) を脂溶性部 (A) と水溶性部に分け, 水溶性部はポリアミドカラムクロマトグラフィーにより, 主成分として糖, タンパク質を含む画分 (B), フラボノイド配糖体を含む (C), サフラワーイエローを含む (D) に粗分けした。なお紅色色素成分カルタミン (E) は, 別途発酵ベニバナより調製した。これらの分画部を同様に低ビタミンE飼料負荷ラットに4週間経口投与した。その結果, 分画部A, Bは血中および肝臓の過酸化脂質を有意に低下させた。さらに分画部D, Eには動脈硬化指数の低下が認められた。以上の結果よりベニバナ花弁には生体内の過酸化脂質を低下させる成分と脂質代謝を改善させる成分が含まれていることが明らかとなった。
  • 氏家 聡, 下地 由美, 西川 泰, 谷口 摩里子, 南田 久美子, 伊藤 利恵, 川端 大樹, 上中居 和男
    2003 年 56 巻 6 号 p. 371-374
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    鉄はわれわれの生体内に不可欠な元素の一つであるが, 近年, 鉄欠乏性貧血が問題となっている。そこで, 生体内への鉄分補給に関して, 腸管から血中への鉄分吸収 (血清鉄濃度) を指標に, 食酢摂取による鉄吸収効果を擬似鉄欠乏状態のラットを作製して検討した。鉄と米酢を与えた群の血清鉄濃度は, 鉄のみを与えたコントロール群に比べ, 有意に上昇した。また, 黒酢, プルーン酢, リンゴ酢を用いた場合の血清鉄濃度の変化を調べたところ, これらの食酢は米酢と同様の効果が認められた。食酢の主成分である酢酸を用いた場合にも, 同様の吸収促進効果がみられた。これらのことから, 食酢は鉄吸収を促進し, その作用には酢酸が寄与していることが示唆された。
  • 西川 泰, 樫内 賀子, 高田 曜子, 上中居 和男, 堀名 恵美, 松浦 寿喜
    2003 年 56 巻 6 号 p. 375-378
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    熱帯アメリカ・ブラジルが原産で, 民間療法として糖尿病や高血圧症に利用されるインスリーナ (学名: Cissus sicyoides L.) の血糖上昇抑制作用を増強させる調製法を, α-グルコシダーゼ (EC3.2.1.20) 阻害活性を指標として検討した。乾燥インスリーナおよび焙煎インスリーナを4, 80, 120℃の蒸留水で抽出した液を比較すると, 抽出温度を高くすることにより活性の上昇が認められた。また, 焙煎処理はさらに活性を高めた。さらに, ラット門脈カテーテル法を用いて, スクロースに対する消化吸収阻害効果の持続時間を測定し, その効力を比較した。その結果, 焙煎をし120℃20分間抽出した抽出液は, 未焙煎葉を80℃で30分間抽出した抽出液に比べ, 門脈血中グルコース濃度をより低下させた。これらのことから, 糖尿病予防に有用なインスリーナのα-グルコシダーゼ阻害活性上昇の要因は焙煎および加熱であることが示唆された。
  • 平成13年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞
    松尾 達博
    2003 年 56 巻 6 号 p. 379-387
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    高飽和脂肪食 (牛脂食) が高多価不飽和脂肪食 (紅花油食) に比べて体脂肪蓄積を増大させるメカニズムを解明するために, 特に牛脂食摂取による交感神経活性の低下に着目し, ラットを用いて検討した。牛脂食摂取ラットは紅花油食摂取ラットに比べて, 食餌誘発性体熱産生 (DIT) が低く, 脂肪の合成・蓄積に作用する血清インスリン濃度が高い。これらのことに関して, DITの主要器官である褐色脂肪組織 (BAT) およびインスリンを分泌する膵臓について, 交感神経活性が紅花油食群に比べて牛脂食群で低下していることを示した。紅花油食群に比べて牛脂食群で, 血清中性脂肪濃度は1日を通じて高値であるが, その原因は血中中性脂肪の活性組織への取込み低下と肝臓の脂肪合成の増大による。これらのメカニズムについて, 心筋, 骨格筋, BATおよび肝臓の交感神経活性の低下が関与していることを明らかにした。また, 牛脂食群での末梢組織の交感神経活性低下の一因として, 視床下部機能の関与を示した。
  • 平成14年度日本栄養・食糧学会学会賞
    中谷 延二
    2003 年 56 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
    香辛料の機能成分のなかで抗酸化性, 抗菌性に着目して活性成分を探索した。抗酸化性に関しては香草系香辛料のシソ科のローズマリー, セージからきわめて抗酸化性の高いアビエタン型フェノール系ジテルペノイドを単離, 構造解析した。同科のオレガノ, マジョラム, キク科のヨモギ類から極性の高い水溶性抗酸化ポリフェノールを見いだした。香辛系香辛料のショウガからジンゲロール型およびジアリールヘプタノイド型の30種の新規化合物を含む50種の抗酸化成分を得た。ウコンには各種クルクミノイドが見いだされた。トウガラシ, コショウからはフェノール系アミド化合物を単離し, オールスパイスからはフェニルプロパノイド配糖体やタンニンを, ナンヨウザンショウからは一連のカルバゾール類を見いだした。抗菌性については非揮発成分に着目し, ハイゴショウ, パプアメース, ナツメグなどから多種類の化合物を得た。抗酸化物質は生体内酸化ストレスよって発症するがん, 動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つことが期待される。
  • 第7回 まとめと補足
    中里 薄志, 青江 誠一郎
    2003 年 56 巻 6 号 p. 397-400
    発行日: 2003/12/10
    公開日: 2009/12/10
    ジャーナル フリー
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