日本栄養・食糧学会誌
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66 巻, 6 号
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総説
  • (平成25年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
    佐藤 隆一郎
    2013 年 66 巻 6 号 p. 279-285
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    脂質代謝異常に起因すると考えられる生活習慣病の予防, 改善に寄与する食品成分の探索を行った。脂質代謝制御において重要な働きをする生体内機能分子を定め, これら分子の機能, 活性を変動させ得る食品成分を, 分子細胞生物学的手法を駆使して樹立した評価系を用いて評価した。その際に機能分子として, 核内受容体, 転写因子, 受容体を設定し解析を行った。また, 入手可能な市販食品由来化合物を多数集めた食品成分ライブラリーを構築し, これらの活性を追跡した。結果として, 機能性食品化合物の作用点が標的分子を介したことを明確にする特徴を持つ。筆者らが見いだした機能性食品成分を列挙して解説した。
報文
  • 田辺 里枝子, 杉本 碧, 祓川 摩有, 川村 有香, 五関-曽根 正江
    2013 年 66 巻 6 号 p. 287-292
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    妊娠前の葉酸制限が母体の骨密度に及ぼす影響について検討した。6週齢SD系雌ラットをコントロール食 (Cont) 群と葉酸制限食 (FR) 群の2群に分け, 28日間飼育した。その後, 両群ともコントロール食とし同系の雄と交配を行った。妊娠群は出産直後に解剖を行い, 非妊娠群については妊娠群の飼育期間を参考にして実験開始後53日目に解剖を行った。実験開始後29日目で, 血清葉酸値はFR群がCont群と比べて有意に低値を示した。出産後, 妊娠FR群は, 妊娠Cont群または非妊娠FR群に比べて, 大腿骨の骨梁密度において有意に低値を示した。また, 皮質骨密度においても, 妊娠FR群は, 非妊娠FR群に比べて有意な低値を示した。今回の結果から, 妊娠前の葉酸制限は, たとえ妊娠期間中に葉酸を摂取しても, 出産後の母体の骨密度を低下させることが明らかになり, 妊娠前の適切な葉酸摂取の重要性が考えられた。
  • 草野 由理, 向 章宏, 柴田 貴広, 内田 浩二
    2013 年 66 巻 6 号 p. 293-300
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    6- (methylsulfinyl) hexyl isothiocyanate (6-HITC) は沢ワサビの主要なITCで, ラット肝細胞における解毒酵素の発現誘導活性をもつ成分として同定してきた。一方, ヒト腸管の解毒酵素の発現には, 腸管上皮細胞の細胞分化の制御機構が関与することを示してきた。本研究は, ヒト腸管上皮細胞モデルであるCaco-2細胞の細胞増殖期と分化期における解毒・抗酸化酵素の発現機構に, 6-HITCが与える影響を検討した。6-HITCは増殖期にあるCaco-2細胞のプロテアソームの活性低下を, また両時期のCaco-2細胞のheme oxygenase-1 (HO-1) 発現を誘導した。このHO-1発現はプロテアソーム阻害剤を増殖期のCaco-2細胞に投与した場合に観察されたことから, 6-HITCによるHO-1発現は細胞増殖期と分化期とでは異なる経路によることが明らかになった。
研究ノート
  • 笹川 克己, 峰尾 茂, 平山 匡男, 佐藤 眞治
    2013 年 66 巻 6 号 p. 301-307
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    スクロースの構造異性体であるイソマルチュロースは, 小腸でゆっくりと消化される糖質として知られている。摂食行動には様々な要因が関わっているが, 食品中の栄養成分の消化速度と摂食調節との関連性については明らかになっていない。そこで, ラットの摂食行動に及ぼすイソマルチュロースの影響について検討を行った。その結果, イソマルチュロース投与後24時間の摂餌量および総エネルギー摂取量は, コントロール群に比べ有意に減少することが明らかとなった。また, 胃内容物排出はコントロール群に比べ低下する傾向にあり, 血糖値と血漿中インスリン濃度の上昇はスクロース群に比べ有意に抑制された。以上の結果は, 消化速度の遅いイソマルチュロースが満腹感を持続させる作用を有することを示しており, 食欲コントロールに有用である可能性が示唆された。
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