廃棄物資源循環学会誌
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巻頭言
特集:高含水率有機系廃棄物処理の最新技術と挑戦
  • 渡邉 泰夫
    2024 年 35 巻 2 号 p. 89-98
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    2009年6月にはバイオマス活用推進基本法が制定 (同年9月施行) され,同法に基づき,バイオマス活用推進基本計画が閣議決定され (2010年12月),2022年9月には第3次の基本計画が閣議決定されている。

     第3次バイオマス活用推進基本計画では,「バイオマスの活用の推進に関する施策についての基本的な方針」,「国が達成すべき目標」等がとりまとめられている。

     経済性が確保された一貫したシステムを構築し,地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指す「バイオマス産業都市」の取組が進められているところであり,近年注目を集めている下水汚泥資源については,その肥料利用の拡大に向けて,農林水産省・国土交通省・農業分野・下水道分野の関係者が連携して取り組んでいる。

     バイオマスの活用の推進に向けて,バイオマス活用推進基本計画等を踏まえて,関係者が連携し,引き続き着実に取り組む。

  • 高見澤 一裕, 中崎 清彦
    2024 年 35 巻 2 号 p. 99-106
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    (一社)廃棄物資源循環学会 バイオマス系廃棄物研究部会が過去20年にわたり実施した小集会,年次大会におけるバイオマス関連の発表,廃棄物資源循環学会英文誌 (Journal of Material Cycles and Waste Management, JMCWM) に掲載されたバイオマス関連の論文を調査し,バイオマス系廃棄物利用の現状と課題について検討した。現在までのところ,社会に実装されたバイオマス利用技術の数は限られており,バイオマス利用技術の普及を促進するための課題として,均質で十分な量の原料供給,効率的で経済的な変換技術の開発,そして経済性の確保の諸問題を解決する必要があることを明らかにした。また,これらの課題に対処し,バイオマス系廃棄物利用を普及させるための取り組みとして,分子生物学を用いたコンポスト化やバイオガス化のような複雑な微生物システムの解析,バイオマス系廃棄物から直接電気エネルギーを取り出す微生物燃料電池,藻類を用いたバイオジェット燃料の製造等,新しい変換技術に関する研究と,これらの技術だけでなく,経済的実現可能性や環境への影響評価等を含む包括的な研究が実施されてきている調査結果をまとめた。

  • 金子 光瑠, 大門 裕之
    2024 年 35 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    近年,温室効果ガス排出量の低減や持続可能な開発目標の達成に向けて,再生可能エネルギー技術の開発と普及が強く求められている。再生可能エネルギー技術の一つであるメタン発酵技術は長年研究が行われてきており,技術として確立するには十分な知見がある。そして近年では次世代シーケンス技術の低価格化と高度化が進んだことで,メタン発酵プロセスに関与する微生物群と微生物間の電子移動について解明されつつあり,メタン発酵分野のさらなる発展が期待されている。本稿では,近年で著しく技術開発が進んでいるメタン発酵技術について述べる。ここでは,国内初の縦型乾式メタン発酵システム,小規模廉価型メタン発酵システム,メタン発酵システムの経済性を高める発酵助剤,発酵効率が向上する発酵触媒,さらにバイオメタネーションの促進に向けた電圧印加と水素利用について紹介する。

  • 伊藤 あゆ美, 鈴木 邦彦
    2024 年 35 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    農林水産省は,みどりの食料システム戦略において,有機農業に取り組む面積の割合を2050年までに全耕地面積の25 % (100万 ha) へ拡大することを目指している。これにより国内における肥料の生産・確保,とりわけ未利用の有機系廃棄物を肥料として有効活用する検討が活発化している。このような背景を受けて(株)小桝屋が循環プロバイダーとして有機系棄物処理と有機質肥料の製造を行なっている実例をあげる。加えて,有機質肥料を適切に利用してもらえるための独自のノウハウを紹介する。

  • 三島 慎一郎
    2024 年 35 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    食料自給率低下と食料輸入の増加による日本への窒素流入の増加は,国内の環境に影響を与えうる。よって,畜産,食品産業と食生活からの有機性廃棄物の排出と成分の資源量をとらえ,国内で地理的な偏りが生じているかを明らかにしていく必要がある。有機性廃棄物をすべて堆肥化した場合,国内には3.3~6.5 Tg 窒素が供給可能であり,3.7 Tg 窒素の化学肥料需要に匹敵するかそれ以上が存在する。これを利用するには,窒素以外の肥料成分に関しても考慮して利用する必要がある。また,国内で不均一に発生することも考慮する必要がある。こうした肥料成分利用の評価法としては,肥料成分の投入と収穫の差である収支,数理モデルによる窒素溶脱の推測といったものがある。有機農業は有機性廃棄物を使う一つの方向であるが,過大な期待をせず,地域にあるさまざまな肥料資源の量的把握から展開を考える必要がある。

  • 土手 裕
    2024 年 35 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    りんは肥料,工業用原料に用いられる重要な資源であるが,りん鉱石の生産量は年々減少している。流動性を増す国際情勢のなかでりん鉱石の全量を輸入に頼っている現状では,国内における廃棄物からのりん回収がますます重要となっている。下水汚泥中のりんは,脱水前消化汚泥や脱水ろ液からの MAP による回収や,ケイ酸カルシウム系回収剤による回収,下水汚泥焼却灰を直接肥料あるいは酸抽出/晶析により肥料原料として回収されている。家畜ふん (牛,豚,鶏) からは,堆肥炭化,焼却灰を直接肥料あるいは酸抽出/晶析により肥料原料として回収されている。今後のりん回収技術の開発に際し,家畜ふんの収集システムの整備,人口減少への対応等が必要である。

  • ――汚泥の乾燥および炭化の技術動向――
    小林 信介
    2024 年 35 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル 認証あり

    本稿では高含水率有機廃梨物である汚泥の固体燃料化技術,「乾燥」と「炭化」について概説を行う。水を多く含む汚泥を固体燃料化するためには,いかに効率的に水を除去するかが課題であり,また汚泥に含まれる可燃分 (有機物) を失わないように燃料としての質 (発熟量) を向上させるのかが鍵となる。現時点において,固体燃料化は汚泥利用技術として決してメジャーではないものの,汚泥を適切に処理しながら全量を有効利用するために基盤となる技術である。近年では固体燃料化時におけるエネルギー効率向上のため,さまざまな装置やプロセスが開発されているのに加え,従来プロセスを融合した新しい乾燥プロセスや炭化プロセスが提案されはじめている。本稿ではそれらの技術について紹介する。

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