整形外科と災害外科
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58 巻, 3 号
選択された号の論文の45件中1~45を表示しています
  • 濱中 秀昭, 久保 紳一郎, 黒木 浩史, 花堂 祥治, 猪俣 尚規, 海田 博志, 日吉 優, 山口 志保子, 帖佐 悦男
    2009 年 58 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1999年6月から2008年3月にかけて顕微鏡視下拡大開窓術を施行した症例142例のうち術後経過観察可能であった89例を対象とした.内訳は男性66例,女性23例,平均年齢67.7歳,平均術後観察期間は1.43年であった.臨床的にはJOA scoreを用いて評価を行い,画像学的検討は,手術前と最終観察時にて腰椎正面像,側面前後屈像を用い,椎体すべり率,椎間可動域,椎間板高を求め検討した.JOA scoreの術前平均は14.3点が,最終調査時23.1点と改善していた.改善率は59.4%であり比較的良好な成績を得た.JOA score改善率が50%未満の成績不良群では,すべり率が悪化し椎間板高が有意に減少していたが,術前すべり率,術前椎間可動域には有意差は認められなかった.
  • 冨永 博之, 和田 正一, 廣津 匡隆, 下野 哲朗, 吉永 一春, 前原 東洋, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 342-345
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    外側型腰椎椎間板ヘルニアに対し骨形成的偏側椎弓切除術を行い,術後6年以上(~10年)追跡可能だった11例(男性7名,女性4名)に関して検討した.手術時年令は平均58歳(28歳~77歳)で,障害神経根はL5:7例,L2:2例,L4:2例であった.棘突起,椎間関節の骨癒合をCTで評価したところ,棘突起,椎間関節ともに癒合:7例,棘突起のみ癒合:3例,椎間関節のみ癒合:1例であった.また症状の改善度をJOA score(ADLを除く)にて評価すると,術前平均は8.4点であったが調査時平均は13点へと改善しており,当院における外側型腰椎椎間板ヘルニアに対しての骨形成的偏側椎弓切除術の中長期成績は良好であった.
  • 福田 泰子, 菅 尚義, 宮崎 昌利, 吉田 省二, 金出 政人, 三原 茂
    2009 年 58 巻 3 号 p. 346-350
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    先端に強弯と,弱弯の切れ込みを持った径17mmの円筒形レトラクター(以下TR)を作製し,顕微鏡下に椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの片側進入後方除圧に使用してきた(TR法).この方法を使って根症状を伴った脊椎分離症に対して分離部除圧,神経根解放を行った.TRは先端の切れ込みが分離部を跨ぐようにセットし,顕微鏡下に除圧した.症例は10例11椎弓,うち8例に平均6.9 mmの辷りを伴っていた.手術時間は平均113分,出血量は平均8.3 mlであった.手術結果はJOA scoreで,術前が16点,術後3ヶ月で27.1点,6ヶ月で28.3点で調査し得た期間で全例に改善が見られた.手術創は18mm前後であった.
  • 近藤 桂史, 長嶺 隆二, 陳 維嘉, 原 俊彦, 杉岡 洋一
    2009 年 58 巻 3 号 p. 351-354
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Lateral releaseは人工膝関節置換術(以下TKA)時に良好な膝蓋骨トラッキングを獲得する手技だが,膝蓋大腿関節(以下PF Joint)Gapに関する報告はない.今回lateral release前後のPF Joint Gapを計測し,その影響を評価した.TKA症例43膝に対し,トライアルコンポーネントを挿入した状態で関節包を仮縫合.PF Joint内に,特殊なテンサーを用いてテンションをかけたままlateral releaseを行い,さらにPF Joint Gapを計測.Joint Gapは,lateral release前が20.6±4.7mmであったのに対し,release後は24.3±4.5mmに拡がった.Lateral releaseを行う事で膝蓋骨トラッキングは改善し,さらにPF Joint Gapも拡がってPF Jointのflexibilityが高まった.
  • ―TKAのデザインと手術手技の再検討―
    長嶺 隆二, Darryl D'Lima, Patil Shantanu, 東藤 貢, 近藤 桂史, 陳 維嘉, 原 俊彦, 杉岡 洋一
    2009 年 58 巻 3 号 p. 355-359
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    PS-TKAを想定し,前後十字靱帯切離の膝関節裂隙および大腿骨と脛骨の3次元的位置関係への影響を検討した.5体の正常新鮮屍体膝を使用した.CTを撮像後,ナビゲーションシステムを使用して膝伸展位から深屈曲位までの大腿骨と脛骨の動きを計測した.次に前後十字靱帯を切離し,計測を繰り返した.コンピュータ上でCTデータとナビゲーションデータを参考に膝関節を再構築し,膝キネマティクスを検討した.十字靱帯切離前後では,膝屈曲90度における内側関節裂隙が平均4.3mmから5.1mmへ開大するなど,関節裂隙の開大および脛骨の3次元的な変位を認めた.これまでのTKAでは正常な膝を参考にデザインや手術手技が確立されてきたが,十字靱帯切離後の状態を考慮に入れたデザインを再検討すべきであり,また,gap control technique法がより良いstabilityを獲得可能であると考えられた.
  • 原 大介, 三浦 裕正, 松田 秀一, 岡崎 賢, 馬渡 太郎, 諸岡 孝明, 岩本 幸英
    2009 年 58 巻 3 号 p. 360-364
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    当院で行われたKirschner Performance Knee型人工膝関節置換術症例の86例89膝の中期成績を調査した.男性8例9膝,女性68例80膝,手術時平均年齢70.5歳で,術後平均観察期間は6年7ヶ月であった.疾患の内訳は変形性膝関節症;67例79膝,関節リウマチ;9例10膝であった.2mm以上のradiolucent lineを認めたもの,術直後と比較して明らかにインサート厚みの低下を認めたものをX線で変化を認めたものと定義し,その症例数を調査した.他にKnee Society score,再置換に至った症例数などを調査した.X線上の変化を17膝(19.1%)に認め,5膝に再置換術が施行されたが,aseptic looseningによるものは3膝であった.比較的早期でのX線上の異常所見,再置換例が他の機種に比べ多くみられ,その原因としてポリエチレンのデザイン,滅菌法が考えられた.
  • 生田 拓也
    2009 年 58 巻 3 号 p. 365-368
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    臼蓋形成不全を伴う変形性股関節症に対する人工股関節置換術(THA)の際に,加工したプレートを併用して臼蓋側の移植骨を固定し良好な結果を得ているので報告した.症例は8例,11関節で,全例女性であり平均年齢は56.7歳であった.Crowe分類はgroup I:3関節,group II:2関節,group III:5関節,group IV:1関節,術後経過観察期間は6ヶ月~4年6ヶ月,平均2年11ヶ月であった.JOA scoreは術前平均50.8点から術後平均89.0点に改善した.移植骨によるソケットに対する被覆率は34.7~64.5%平均48.0%であり,ソケットの設置角は35~52.4°,平均44.5°であった.移植骨の圧潰を認めた症例はなかった.THAの臼蓋側の置換の際に,ソケットの初期固定力が移植骨に依存する状態での移植骨の固定においては,加工したプレートを併用することによって固定力が増し術後療法を遅らせずに済み有用であった.
  • 永野 聡, 石堂 康弘, 有島 善也, 神囿 純一, 瀬戸口 啓夫, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 369-372
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    【はじめに】我々は臼蓋側に骨欠損がある人工股関節全置換術(THA)において,骨移植とともにハイドロキシアパタイト(HA)を充填して補強してきた.最近,より優れた骨伝導能を持つとされる連通多孔体HA顆粒(ネオボーン)を使用している.現在までに,ネオボーンを用いてTHAを行った症例10例について検討した.【対象】手術時年齢は平均70歳,経過観察期間は平均13ヶ月(5~21ヶ月)であった.9例がKTプレート併用の再置換術であり,1例が初回THAであった.初回THA例では自家骨,再置換例では同種骨をネオボーン5~10gと混合して移植した.単純X線上のカップの初期固定,HA顆粒間や母床骨との境界の不明瞭化について検討した.【結果】1例においてKTプレートのcentral migrationを認めたが,9例ではカップ傾斜角の変化はなく充分な固定が得られていた.術後4~7ヶ月で連通多孔体HA顆粒間または母床骨との境界の不明瞭化がみられ,連通多孔体HA顆粒による骨伝導能が示唆された.
  • 富村 奈津子, 山下 芳隆, 内山田 桜, 鮫島 浩司, 川内 義久, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 373-376
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年高齢化社会の到来とともにQOLを求めて手術を希望する高齢者が増加している.今回我々は,90歳以上の腰部脊柱管狭窄症患者2名に対して手術を施行し,良好な短期成績を得たので報告する.【症例1】94歳男性.93歳時に腰痛が出現,右下肢痛のため歩行困難となり当科外来を受診した.MRIでL4/5レベルの脊柱管狭窄を認め,疼痛に対して保存療法を行ったが無効であったため,手術を施行した.術後疼痛なく歩行可能となった.【症例2】92歳女性.10ヶ月前より腰痛,右下肢痛,間歇性跛行が出現し,初診時MRIでL4/5レベルの高度脊柱管狭窄を認めた.疼痛のため歩行困難となり手術を施行した.術後痺れは残存するものの軽減し,シルバーカーを使用し歩行可能となった.【考察】いかに高齢であっても保存的治療に抵抗し,日常生活が制限されるような症状の場合,手術や麻酔に耐えうる全身状態で患者及び家族の希望があれば,十分なインフォームドコンセントをした上手術を考慮してもよいと考える.
  • 増田 陽平, 吉村 洋一, 岡村 武志, 松崎 尚志, 多田 弘史
    2009 年 58 巻 3 号 p. 377-381
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々が経験したinsufficiency fracture(脆弱性骨折)の7例について画像に関する考察を含め報告する.平均年齢79.7歳,男女比1:6,仙骨翼両側骨折が71.4%,片側が28.6%であった.恥骨骨折合併を42.9%に認めた.何れの患者も自制疼痛内安静度自由とし軽快した.画像的特徴としてレントゲンで骨折を判別するのは困難で,MRIにおいて特にSTIR(脂肪抑制)では仙骨部の信号変化を捉えやすかった.骨シンチでは両側骨折の場合に蝶形,H型,Honda's signと呼ばれる集積増を認める.CTでは骨折線もしくは硬化像を確認できた.日常診療で本疾患は見落とされやすいために常にその存在を念頭に置き,検査においては,恥骨骨折の存在は本疾患を考慮し,感度の高いMRI,骨シンチでスクリーニングし特異度の高いCTで確定する.
  • 富田 雅人, 熊谷 謙治, 浅原 智彦, 川口 耕平, 林 徳眞吉, 安倍 邦子, 進藤 裕幸
    2009 年 58 巻 3 号 p. 382-386
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    MRIが発達した今日でも骨腫瘍の診断において,単純X線は重要である.今回非特異的なX線像を呈した骨肉腫の症例を2例経験した.[症例1]59歳,女性.現病歴:3ヵ月前から左膝痛が出現し近医を受診した.骨腫瘍を疑われ当科紹介受診した.単純X線にて脛骨近位部に不整形の骨硬化をみとめたが,骨膜反応はみられなかった.切開生検を行ない,軟骨芽細胞型骨肉腫と診断した.[症例2]29歳,女性.現病歴:4ヵ月前から右膝痛出現し近医受診した.MRIにて悪性骨腫瘍を疑われ当科紹介受診した.単純X線にて大腿骨遠位内側に淡い骨膜反応様病変をみとめたが,明らかな骨破壊・形成像はなかった.切開生検にて骨肉腫と診断した.典型的なX線像を呈する骨肉腫は,単純X線にて診断が可能であるが,本症例のように,非典型的な像を呈する症例もあり,また臨床像も非定形で、その診断は慎重になされなければならない.
  • 有島 善也, 横内 雅博, 永野 聡, 上薗 直弘, 川上 広高, 瀬戸口 啓夫, 善明 美千久, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 387-389
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    カフェイン併用化学療法にて肺転移巣が著明に縮小した症例を経験したので報告する.症例は17歳男性,脛骨近位例.CDDP+DXRにて術前補助化学療法を行ったが肺転移が出現.IFO+VP-16に変更し近位脛骨置換術を施行したが肺転移は増大傾向であった.その後5回の肺部分切除術を施行したが再発したため,IFO+VP-16にカフェインを併用し病巣の著明な縮小を認めた.最終的に肺転移出現後46か月で腫瘍死となった.近年,悪性骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法の有効性が報告されている.本症例では初期治療においてIFO+VP-16で肺転移をコントロールし得なかったが,カフェインを併用したことで著明な肺転移巣の縮小と呼吸器症状の改善による延命効果が得られた.カフェイン併用により殺腫瘍効果が増強されたものと思われる.
  • 樫原 稔
    2009 年 58 巻 3 号 p. 390-393
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫に生じた大腿骨頚部病的骨折のまれな1例を経験したので報告する.症例は79歳男性で誘因なく右殿部から大腿の痛みが出現し,3日後に歩行困難になり入院した.X線では骨折を認めず,2日後に疼痛増強し歩行不能になりX線で右大腿骨頚部骨折を認めた.血清M蛋白および尿Bence-Jones蛋白を認め,IgAκ型多発性骨髄腫と診断した.人工骨頭置換術を行い,摘出した骨頭の病理組織像は骨髄が非常に低形成で大きな核小体を伴う形質細胞類似の細胞が存在し,エオジン好性でCongo Red染色陽性物質を認め,多発性骨髄腫のアミロイド骨嚢腫を伴う大腿骨頚部病的骨折と診断した.高齢で骨髄抑制や細胞障害等の副作用を考慮し,化学療法や放射線療法は行わず,1年5ヵ月後に腎不全で死亡した.多発性骨髄腫の約10%にアミロイド沈着がおこり,本症例のようなアミロイド骨嚢腫による長管骨病的骨折や手根管症候群が報告されている.
  • 西川 和孝, 今澤 良精, 河村 誠一, 瀬尾 健一, 佐々木 伸一, 松本 善企
    2009 年 58 巻 3 号 p. 394-398
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    【はじめに】癌患者において脊椎転移のため疼痛や神経麻痺を生じADLが著しく障害されることをしばしば見受ける.今回当科において癌の脊椎転移に対し手術治療を施行した症例のADL障害を評価し報告する.【対象と方法】対象は2005年5月から2007年11月に癌の脊椎転移に対し手術を行った10症例.適応は徳橋の術前予後判定法を参考に決定.手術方法は徳橋のスコアリングに従い決定し,術前,術後のFrankel分類,Performance statusを評価した.【結果】術後,全症例においてFrankel分類,Performance statusによる評価で改善を認めた.生存中の歩行可能期間は8症例が術後生存期間の7割以上の期間歩行可能であった.【考察と結語】多くの報告と同様に手術を行った全症例で麻痺の改善,ADLの向上を速やかに認めた.10症例中8症例が自宅療養となり価値の大きい治療であると考えられた.
  • 黒木 綾子, 熊谷 謙治, 富田 雅人, 浅原 智彦, 林 徳眞吉, 安倍 邦子, 進藤 裕幸
    2009 年 58 巻 3 号 p. 399-402
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    腱鞘線維腫は主に手指,手,手関節の腱鞘部から発生する良性腫瘍であり,関節内に発生することは稀である.今回我々は膝関節内に発生した腱鞘線維腫の一例を経験したので報告する.症例は22歳,男性である.受診1年前より長時間同一肢位をとると右膝に疼痛が出現し,半年前より膝蓋骨近位側に腫瘤を触知し徐々に増大したため,当科紹介受診された.膝蓋骨近位側に33×48mm大の弾性硬,境界明瞭で膝蓋骨とともに動く腫瘤を触知した.MRIでは境界明瞭なT1WI低信号,T2WI比較的低信号で,造影効果が見られた.関節鏡所見は白色の2葉に分葉した広基性ポリープ状病変で,膝蓋骨でなく大腿四頭筋腱に連続性がみられた.腫瘤を一塊として摘出し,その病理診断は腱鞘線維腫であった.腱鞘線維腫は膝関節内で大腿四頭筋腱に由来するものは特に少ない.膝関節における再発の報告はないが,本例は稀な症例であり今後長期経過観察が必要である.
  • 山城 和馬, 瀬井 章, 藤本 徹, 水溜 正也, 谷脇 琢也, 水田 博志
    2009 年 58 巻 3 号 p. 403-405
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    頚椎砂時計腫は,形態よって手術手技が異なる.前方から一期的に摘出しえた頚椎砂時計腫を経験したので報告する.症例は75歳の女性であった.約4年前より左頚部に腫瘤を認め,腫瘤の増大と,腫瘤圧迫による左手指の痺れを自覚するようになり当科を紹介され受診した.左頚部に径4cmの弾性硬の腫瘤を認め,圧迫にて左第2-5指に痺れを認めた.画像検査上,戸山らの形態分類にてType IIbの砂時計腫を認めた.手術は前方よりアプローチし,一期的に全摘出が可能であった.病理組織診断は神経鞘腫であった.本症例のように椎間孔の拡大が顕著で,脊柱管内の病巣が大きくないものは,戸山のType IIbでも前方より一期的に摘出が可能である.
  • 行實 公昭, 播广谷 勝三, 土井 俊郎, 松本 嘉寛, 岩本 幸英
    2009 年 58 巻 3 号 p. 406-410
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    多発性脊髄腫瘍に対して観血的治療を施行し,schwannomatosisと考えられた症例の臨床像について検討した.1985年から2008年までに多発性脊髄腫瘍に対して観血的治療が施行され,病理組織学的に神経鞘腫と診断された症例のうち,schwannomatosisと考えられた9例を対象とした.初発時年齢は平均40.0歳(21~73歳).発生部位は頚椎から仙骨にまで散見されたが,7例で胸腰椎移行部での発生をみとめた.9例で合計61個の脊髄腫瘍が認められ,椎弓切除あるいは骨形成的椎弓切除の後,合計32個の脊髄腫瘍が摘出されていた.4例で四肢にも神経鞘腫を認めた.5例に計29個の残存腫瘍を認め,MRI及び神経学的所見を経時的に経過観察中である.術後に顕在化する症例もあり,長期にわたる慎重な経過観察が必要で,経過観察には造影MRIが有用であると考えられた.
  • 日吉 優, 久保 紳一郎, 黒木 浩史, 濱中 秀昭, 花堂 祥治, 海田 博志, 猪俣 尚規, 山口 志保子, 帖佐 悦男
    2009 年 58 巻 3 号 p. 411-414
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    硬膜外脂肪腫症は比較的稀な疾病であり,通常長期間のステロイド投与に関連して生じるとされている.
    特発性硬膜外脂肪腫症とはステロイドとは無関係に発症したものとされ,これまでに数例の報告がなされている.我々は70歳の間歇跛行を呈した症例を経験したため,文献的考察を加え報告する.ミエログラフィー,CT,MRIにて診断され,椎弓切除術,ならびに脂肪摘出術をおこなった.術後,症状は徐々に改善していった.
  • ―生検をかねたpalliative surgeryの意義と問題点―
    山元 拓哉, 井尻 幸成, 善明 美千久, 坂本 光, 河村 一郎, 八尋 雄平, 米 和徳, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 415-418
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    (はじめに)重篤な進行性の麻痺により病理診断前にpalliative surgeryを施行した脊椎腫瘍の術後経過につき検討した.(対象および方法)対象は後方除圧固定術後2年以上経過した6例(全例男性),手術時平均年齢は70.3(56―84)歳であった.これらの原疾患,神経症状,生命予後,患者および家族の満足度につき検討した.(結果)原疾患はATLが2例,肝細胞癌,甲状腺濾胞腺癌,paraganglioma,形質細胞腫が各1例で,Frankel分類で二段階改善が2例,一段階改善が4例であり,全例で術後歩行可能となった.死亡例は2例(術後5ヶ月,2年4ヶ月)で,再手術例は1例(術後3年)であった.5ヶ月で死亡した1例を除き手術に対する満足度は高かった.(考察)術直後のADLは良好であったが,生命予後と長期的ADLは追加治療の効果によるため術前に十分な説明と同意を得る事が必要である.
  • 島内 誠一郎, 野口 雅夫, 辻 正二, 銅川 博文, 森 愛, 志田 崇之
    2009 年 58 巻 3 号 p. 419-422
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    [目的]大腿骨転子部骨折に対してIPTネイル(IMPACTネイル,以下IPTネイル)を使用したので報告する.[対象]2007年5月から2008年6月までに当院で行ったIPTネイル30例(男性4例,女性26例,平均年齢81.2歳)を対象とした.[結果]骨折型はAO分類でA1:16例,A2:11例,A3:1例,頸基部骨折2例.手術時間は平均65.9分(37~100分),Tip Apex Distance(以下,TAD)は平均16.54mm,telescoping量は平均3.75mm,術後合併症は術後9カ月経過した後に再転倒に伴って起こったと思われる骨頭骨折を1例に認めた.[考察]IPTネイルは骨頭回旋不安定性に有利な双軸性short femoral nailであり,なおかつ骨頭に2本screwを挿入した状態でlag screwの回旋を防止できる仕組みになっている.当院での術後成績について報告する.
  • 花石 源太郎, 永島 雅人, 中井 健一郎, 石橋 勝彦, 田中 宏明, 渡嘉敷 卓也, 稗田 寛
    2009 年 58 巻 3 号 p. 423-427
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    [目的]大腿骨転子部骨折術後再手術となった症例について,その原因を検討する.[症例]1983年10月~2008年8月の期間,当院で施行された大腿骨転子部骨折骨接合術590例中,再手術となった症例は6例(男性2例,女性4例 平均年齢79歳)であった.骨折型と固定方法は,Evans分類3群が1例(MK pin),4群が4例(CHS 1例,PFN 2例,γnail 1例),頸基部骨折が1例(PFNA)であった.[結果]再手術となった原因は,偽関節が3例,lag screwのcut outが4例,骨幹部骨折が1例,骨頭壊死が1例であった.再手術の術式は,骨接合術が2例,人工骨頭が2例,人工関節が2例であった.[考察]再手術になった要因として,不安定型骨折,頚基部骨折,整復位不良,内固定材料の設置不良などが考えられた.
  • 藤瀬 一臣, 吉川 尚秀, 嘉本 光人, 尾崎 まり, 南崎 剛
    2009 年 58 巻 3 号 p. 428-431
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    当院における大腿骨転子部骨折症例について術前後の歩行機能評価を行い,検討した.対象は平成18年1月から平成20年3月までに当院にて手術を行った全116例(男性17例,女性99例).使用インプラントはGamma3(96例),PFNA(20例)であった.これらの症例に対してJensen分類を用いて2群間に分類し,歩行機能評価を行った.116例中90例(77.6%)は術前とほぼ同等の歩行能力を再獲得出来たが,116例中26例(22.4%)では歩行能力の低下を認めた.骨折型は歩行能力の予後には関与しなかった.認知症合併により有意に歩行機能の低下を認めた.今回26例中11例(42.3%)は認知症が存在し,歩行能力の低下の大きな要因であった.認知症の発症,進行を防ぐことが重要であると思われた.
  • 穂積 晃, 村田 雅和, 宮田 倫明, 久芳 昭一, 前田 和政, 松村 陽介, 古市 格
    2009 年 58 巻 3 号 p. 432-436
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    セメントレス人工骨頭置換術(Synergy select II)の初期固定性について検討した.当院および関連施設で行われた人工骨頭置換術90例のうちセメントレス人工骨頭置換術(Synergy select II)を使用した62例62関節を対象とした.平均年齢80歳(51-97歳)平均経過観察期間は9.6週(2-72週)であった.後療法は術後2日目より全加重を許可した.術直後および経時的レントゲン正面像においてステムの沈下を計測した.9例に3mm以上のステムの沈下を認めた.また小転子下端レベルでのステムの髄腔占拠率は非沈下例で平均83.2%,非沈下例では67.7%であり有意差を認めた.ステム沈下例において術後早期の脱臼を1例,術後4週でステム先端部での転倒による骨折を1例に認めた.これらの結果をふまえ成績不良例の原因,問題点とその対策について考察した.
  • 末永 英慈, 井原 秀俊
    2009 年 58 巻 3 号 p. 437-440
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    内側半月断裂型および後角横断裂の占める割合について検討した.平成20年7月までの過去5年9ヶ月間に当院にて半月処置の目的で関節鏡を行った50歳以上の内側半月損傷188例201膝を対象とした.平均年齢63歳(50-86歳),男性49例51膝,女性139例150膝であった.半月断裂型,部位は鏡視所見により分類した.横断裂は111膝(55%),横断裂と水平断裂の合併は33膝(16.4%),水平断裂は30膝(15.9%),弁状断裂は21膝(10%)に認めた.横断裂のうち89膝(80%)は後角に認めた.近年,後角断裂の占める割合が高くなった理由として,後角横断裂が周知されてきたこと,疾患そのものの増加,MRI診断精度の向上などが考えられる.後角横断裂の場合は手術療法として,半月切除だけでなく,半月温存治療であるラスピングも選択肢に含まれるために,後角横断裂の認識と診断は重要である.
  • 井原 秀俊, 岡 さゆり, 高山 正伸, 福本 貴彦, 池永 千寿子, 田代 美由紀, 池田 修
    2009 年 58 巻 3 号 p. 441-443
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    女性スポーツ選手は,ジャンプ着地時に男性に比較して浅い膝屈曲にて着地する.浅い膝屈曲は前十字靱帯(ACL)への負荷を増大させ,ACL損傷リスクの一因と報告されている.本研究の目的は,膝伸展と膝軽度屈曲位の間で,姿勢制御に差があるかどうかを検討することである.大学女子ハンドボール部員12名を対象にした.加速度計を膝,不安定板に取り付けた.まず,小型不安定板に開眼にて支持足で10秒間バランスを保持し,その際の動揺を加速度計にて測定した.3回成功するまで実施した.失敗数も記録した.次に,大型不安定板に開眼にて両足で立ち,10回の傾斜外乱に対して身体のバランスを保持するように指示した.その際の傾斜対側に対する傾斜側の揺れを加速度計で求めその比を,ステップ力として評価した.加速度の最大振幅を姿勢制御能の指標とした.2つの身体制御能評価について,膝伸展位と20°屈曲位で比較した.不安定板での姿勢制御能,失敗数,外乱に対する支持能において,膝屈曲度の相違による有意の差は得られなかった.
  • 西岡 宏晃, 廣瀬 隼, 中村 英一, 鬼木 泰成, 田中 あづさ, 舛田 哲朗, 水田 博志
    2009 年 58 巻 3 号 p. 444-446
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    【目的】ガドリウム遅延相軟骨造影MRI(dGEMRIC)はプロテオグリカン(PG)量を,T2マッピングはII型コラーゲンを評価する新たなMRI撮像法である.両者を同時に行う場合,dGEMRICに必要な造影剤(Gd-DTPA2-)のT2値に及ぼす影響を検討した.【方法】膝前十字靱帯損傷患者5例5膝(平均20.2歳)を対象とした.dGEMRICプロトコールに従いGd-DTPA2-を経静脈内投与し,投与前と投与120分後にT2マッピングを行った.大腿骨と脛骨の内外側顆に分けて造影前後のT2値を比較し,全顆部におけるT2値の相関関係を評価した.【結果】造影前後のT2値は,それぞれの各顆部で差がなく,全顆部において優位な相関関係を認めた(r=0.826,p<0.0001).【まとめ】Gd-DTPA2-のT2値に及ぼす影響はわずかであり,T2マッピングは造影後1回の撮像で評価可能である.
  • 河村 一郎, 井尻 幸成, 坂本 光, 永吉 隆作, 善明 美千久, 山元 拓哉, 竹之内 剛, 砂原 伸彦, 武冨 栄二, 米 和徳, 小 ...
    2009 年 58 巻 3 号 p. 447-450
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は,RAに好発する後頭頚椎病変でも生物学的製剤・MTX製剤併用による修復効果が認められるか否かを知る目的で,頚椎レントゲンを経時的に観察したので報告する.infliximab: IFXとmethotrexate: MTXを併用投与し1.5年以上投与観察したRA患者(IFX/MTX群)69例中,経時的に頚椎レントゲンを撮影できた29例を対象とし,コントロールとして生物学的製剤非使用・MTX製剤非使用17例と,生物学的製剤非使用・MTX製剤使用16例と比較検討した.さらに調査開始時のレントゲンで脱臼なし群,前方脱臼群,垂直脱臼群の3群に分類し,前方脱臼,垂直脱臼の進行の有無を評価した.その結果,前方脱臼群ではIFX・MTX群に前方脱臼の進行予防が認められ,各群に有意差が生じたが,垂直脱臼に関して進行予防は認められなかった.
  • 村田 洋一, 首藤 敏秀, 山岡 和弘, 入江 学, 佐々木 聡明, 川本 泰作, 加茂 健太, 松浦 恒明, 原口 和史
    2009 年 58 巻 3 号 p. 451-455
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    56歳女性,10年前に頚部の激痛と左肩痛で他院にて精査を受けるも原因不明.以降冬毎にまた2年前からは冬以外にも頚部から左肩にかける痛みが出現し増悪と緩解を繰り返した.NSAIDsは無効であった.血圧に左右差なく,レイノーや皮疹を認めない.CRP:0.2 mg/dl,血沈:24/53 mm(h/2h),リウマトイド因子,抗CCP抗体,抗核抗体はいずれも陰性,WBC:5290.HLA:A2/A24,B60/B46.単純レントゲンでは明らかではないが,CTでは胸鎖関節に著明な骨破壊を認め,MRIでは同部はT1低信号,T2高信号であった.原因は不明であったが胸鎖関節の破壊を伴う関節炎を疑い,少量プレドニンおよびサラゾスルファピリジンにて症状は速やかに軽快した.胸鎖関節の破壊を来しうる鑑別疾患をあげて,病因・病態について考察する.
  • 川口 耕平, 馬場 秀夫, 田上 敦士, 岡崎 成弘, 進藤 裕幸
    2009 年 58 巻 3 号 p. 456-459
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    小児ダウン症に伴う環軸関節亜脱臼に対して片側Magerl法を行った1例を経験した.症例はダウン症の8歳6ヵ月女児で,特に誘因なく頚部痛出現し,小児科にて環軸関節亜脱臼を指摘され当科紹介受診した.後頭後頚部痛を認めるのみで,神経学的異常所見はなかった.頚椎単純X線像でAD I7 mm,Os odontoideumを認めた.Magerl法による後方固定術を予定したが,小児のためCTにて軸椎椎弓根狭部が狭く,Screw刺入が困難と判断し,外来経過観察した.8歳11カ月時に頚部痛の増悪,頚椎単純X線像にてADI拡大を認め手術となった.術前のCT,MRAでは右の椎骨動脈の低形成を認めた.ナビゲーションシステム下に片側Magerl+Brooks法を施行,左側は椎骨動脈優位側であり,screw刺入部が狭いため行わなかった.術後は3ヶ月間フィラデルフィア装具にて固定した.9歳10ヵ月,頚部痛改善している.
  • 松村 陽介, 古市 格, 村田 雅和, 宮田 倫明, 穂積 晃, 久芳 昭一, 前田 和政
    2009 年 58 巻 3 号 p. 460-463
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    〈目的〉下肢壊疽に対して,下肢切断術を施行した症例を調査し,生命予後・創治癒に関する因子を検討すること.〈対象〉2005年1月から2007年12月までに,当院で下肢切断術を施行した33例で,初回手術時平均年齢77歳,男性17例,女性16例であった.原因疾患は,閉塞性動脈硬化症17例(52%),糖尿病6例(18%),両者を合併したものが8例(24%),その他2例(6%)であった.初回切断部位は大腿切断が20例ともっとも多く,ついで足部足趾切断が9例,下腿切断が4例であった.再切断,創治癒遅延を,12例に認めた.〈結果〉1年生存率は51.5%であった.下肢壊疽に対して,下肢切断術を受けた症例が1年以内の短期間に死亡してしまう危険因子として,高齢,術前ADLが寝たきり,大腿切断例があげられた.また,創治癒遅延を認める危険因子としては,CRP高値が考えられた.
  • 加藤田 倫宏, 小野 文武, 阿部 隆伸, 夏秋 洋平, 宮崎 幸子, 永田 見生
    2009 年 58 巻 3 号 p. 464-468
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は比較的まれとされている帯状疱疹後の右上肢運動神経麻痺を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は76歳男性.帯状疱疹の診断にて皮膚科入院中右肩の挙上困難が持続するため整形外科紹介受診となる.頚椎疾患,肩腱板損傷の両面から精査行うも明らかな病変なく水泡の出現時期と部位,麻痺の部位が同一であったことから帯状疱疹由来の分節性神経麻痺と診断した.帯状疱疹は日常診療でもよくみられる疾患であるが知覚神経だけでなく運動神経にも障害を起こすということは整形外科領域ではあまり知られていない.帯状疱疹由来の分節性神経麻痺は保存的加療のみで予後は良好であり,この疾患の存在を広く周知して念頭に置いた上で,正しい病態の認識と誤った治療を行わないことが大切と考えられる.
  • 善明 美千久, 横内 雅博, 有島 善也, 永野 聡, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 469-472
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    滑膜肉腫はまれな悪性軟部腫瘍であるが,化学療法に比較的反応しやすいといわれており,近年治療戦略においての議論がさかんである.今回われわれは,化学療法を行った6例の滑膜肉腫症例の治療成績を検討したので,文献的考察を加えて報告する.対象は1995年から2008年までに当科で化学療法を行った滑膜肉腫6例である.男性2名,女性4名.初診時年齢は平均31.5歳(25―65歳),経過観察期間は平均73.6ヶ月(7―163ヶ月)だった.組織型はmonophasic 3例,biphaic 1例,pooly differentiated 2例だった.6例のうち5例は術前化学療法を行っていた.初診時すでに肺転移を認めたのは2例だった.6例のうち3例は肺転移にて死亡し,初診から死亡までの期間は平均81.3ヶ月(46―144ヶ月)だった.現在生存中の3例はすべて肺転移を認めており,化学療法施行中である.
  • 山家 健作, 山下 英樹, 遠藤 宏治, 尾崎 充彦, 南崎 剛, 尾崎 まり, 庄盛 浩平, 吉田 春彦, 井藤 久雄, 豊島 良太
    2009 年 58 巻 3 号 p. 473-477
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    軟部腫瘍の診断は,病理組織診断が最終診断となることが多いが,病理組織像が多彩で典型像を示さない例も多く,専門病理医でも診断に難渋する.近年,軟部腫瘍において多くの疾患特異的な融合遺伝子が同定され,診断へ応用されている.今回,RT-PCR法を用いた融合遺伝子の検出が軟部腫瘍の診断に有用であった症例を報告する.症例は滑膜肉腫2例,粘液型脂肪肉腫2例,悪性末梢神経鞘腫瘍1例,孤在性線維性腫瘍1例,類上皮肉腫1例であった.いずれも,臨床所見,術前生検の病理組織所見のみでは確定診断できなかった.滑膜肉腫,粘液型脂肪肉腫は特異的な融合遺伝子が検出された.悪性末梢神経鞘腫瘍,孤在性線維性腫瘍,類上皮肉腫は,特異的な融合遺伝子の存在は報告されていないが,鑑別診断となった融合遺伝子が存在する腫瘍を除外することで診断の補助となった.軟部腫瘍の診断において,融合遺伝子の検出は有用な手段となる.
  • 島田 隆太郎, 川村 英樹, 中川 雅裕, 林 協司, 川村 英俊, 瀬戸口 啓夫, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 478-481
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者やcompromised hostの増加により,成人に発症する続発性後咽頭膿瘍の報告が増加してきているが,今回我々は明らかな先行感染を認めず,激しい頚部痛を主訴に来院した健常人女性の後咽頭膿瘍の1例を経験したので報告する.【症例】49歳女性:頚部痛を主訴に当院初診.頚椎の安静疼痛が高度で著明な可動域制限を認めた.血液検査にてCRPの上昇を認めた.レントゲン写真にて後咽頭腔の拡大ならびにMRIにて後咽頭腔にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号変化を認め,後咽頭膿瘍と診断し抗生剤投与を行い症状改善した.【考察】近年,成人に発症する続発性後咽頭膿瘍が増加してきており,頚椎化膿性脊椎炎,縦隔膿瘍,髄膜炎に進展する例も報告され,適切な診断,治療が重要とされている.激しい頚部痛を訴える患者では健常人であっても後咽頭膿瘍も念頭に置き,早急な診断,治療が必要と思われる.
  • 舛田 哲朗, 中村 英一, 鬼木 泰成, 西岡 宏晃, 田中 あづさ, 廣瀬 隼, 水田 博志
    2009 年 58 巻 3 号 p. 482-487
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Cryptococcus neoformansは肺や中枢神経の真菌感染症の起炎菌として知られているが,骨・軟部組織への感染は稀である.今回我々は,大腿四頭筋に発生した本感染症の1例を経験したので報告する.症例は70歳女性.関節リウマチと間質性肺炎に対しプレドニゾロン17.5mg/日内服していた.また糖尿病とC型肝硬変も合併していた.3日前より誘因なく,右大腿遠位外側に疼痛と腫脹・発赤が出現したため当科外来を受診した.37.3℃の熱発と血液検査上白血球数とCRPの上昇を認めた.同部の皮下膿瘍を疑い穿刺後,外来にてCEZの点滴を行ったが,症状増強した為緊急入院となった.MRI上外側広筋周囲に高信号領域がみられた.培養検査にてCryptococcus neoformansが検出された為,同菌による筋膜炎/筋炎と診断した.約2週間のフルコナゾール投与にて症状は消失し,CRPは正常化した.
  • 野田 大輔, 白水 圭, 鎌田 聡, 内藤 正俊, 青柳 直子, 藤木 さよ
    2009 年 58 巻 3 号 p. 488-490
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    今回,人工股関節置換術直前に口腔内感染症が判明したため手術を延期し,歯科治療を優先させ改めて人工股関節置換術を行った症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.口腔内感染症は一時的な菌血症を引き起こし,血行性感染により人工関節置換術後感染の原因となりうる.又,歯科治療により菌血症を生ずることがあり,特に抜歯では菌血症を生じやすいとされている.人工関節置換術後感染は一旦起こると重篤になる場合が多く,注意が必要であり術前口腔内感染症の有無を把握することで,術後感染の危険性を減少することが可能となると思われる.しかし,術前の口腔内評価は施設毎でまちまちであり,一定の基準はないと思われる.人工関節置換術前は良好な口腔内衛生を保つことと,必要があれば術前に歯科医との連携をとることが望ましい.
  • 川上 広高, 山王 朋佳, 竹之内 剛, 恒吉 康弘, 砂原 伸彦, 小宮 節郎
    2009 年 58 巻 3 号 p. 491-495
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    [はじめに]今回私達は,整形外科手術後の創治癒におけるドレッシング材の有用性と問題点を明らかにすることを目的とした前向き研究を行ったので報告する.[対象と方法]2008年7月以降,当院にて手術施行された人工関節置換術(THA,TKA)33例,脊椎手術(胸腰椎椎弓形成術,腰椎後方固定術)27例を対象とした.術後ドレッシング方法を2種類用意し,無作為に選択した.[結果]発赤を認めた割合は,カラヤヘッシブが13%,オプサイトビジブルが17%だった.水疱を認めた割合は,7%,10%だった.表皮離開を認めた割合は,7%,13%だった.ドレッシング材交換の頻度は,33%,20%だった.ドレッシング材交換の原因として,ともに浸出液多量,水疱,剥離の順となった.[まとめ]ドレッシング材の導入により,創部観察が容易となり,創管理が簡素化された.浸出液,感染のリスク等を検討し,適切な術後ドレッシング材の使用が求められる.
  • 内山田 桜, 川内 義久, 鮫島 浩司, 富村 奈津子, 山下 芳隆
    2009 年 58 巻 3 号 p. 496-498
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    手術部位感染症の発生は重大な術後合併症の1つである.その原因は様々で,手術時の不十分な手洗いもその1つである.今回我々は,手術時手洗いにウォーターレス法を導入し,その臨床的及び医療経済的結果を検討した.ウォーターレス法を導入した平成20年3月から平成20年8月までの6ヶ月間とそれ以前の6ヶ月間の手術部位感染症(以下SSI)の発生数および手洗い時間,手荒れの程度,費用,手指培養検査での細菌検出率を比較した.短期的ではあるが,ウォーターレス法は従来法に遜色ない結果で,医療経済的にも節約効果が得られた.
  • 宮崎 健洋, 戸羽 直樹, 原 夏樹, 村井 哲平, 平沼 泰成, 福田 文雄, 肱岡 昭彦
    2009 年 58 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    小児の肘頭骨折は稀な骨折である.肘頭の骨化は8歳頃から起こり,それまでは肘頭の骨端軟骨は鉤状突起を含んでおり,鉤状突起を含んだ骨端軟骨の裂離を呈する骨折型が稀に報告されており,我々の経験した症例も同様であった.軟骨成分が多い小児の肘頭骨折の診断は難しく,我々の症例も単純レントゲンやCT検査では十分な評価を行うことができなかった.MRIでは軟骨成分の評価も行え骨折の状態を術前に把握する事が可能であった.小児の肘頭骨折に対するMRI検査は非侵襲的であり,術前評価として有用と考えられた.
  • 肥後 勝, 吉野 伸司, 中村 雅洋
    2009 年 58 巻 3 号 p. 503-506
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は外転位固定装具を用いて治療し,骨成熟時まで追跡できたペルテス病の35例36股の長期成績について報告する.症例は男児33例女児2例,診断時年齢は平均5.3歳,装具装着期間は平均13.7か月,追跡調査期間は平均9年であった.骨端核の壊死範囲はCatterall分類III群14股,IV群22股であった.レ線上32股にat risk signとして亜脱臼や骨嚢腫像を認めた.最終調査時の股関節のX線学的成績はStulberg分類を用いて評価し,Class I 12股,Class II 11股,Class III 12股,Class IV 1股であった.長期成績は良好群23股64%,不良群13股36%であった.成績不良例は年長例,Catterall IV群,亜脱臼と骨嚢腫像を合併した症例に多くみられた.外転位固定装具は簡便で,歩行可能で,患児の受け入れも良い治療方法であるが,8歳未満のCatterall III群に最も良い適応がある.
  • 金丸 由美子, 米倉 暁彦, 宮本 俊之, 岡崎 成弘, 進藤 裕幸
    2009 年 58 巻 3 号 p. 507-510
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は13歳男性.8歳時に交通事故にて左膝開放骨折を受傷した.前医にてデブリードマンを行うもMRSA感染を併発し,創閉鎖に複数回の植皮を行い感染は沈静化するも膝関節拘縮を来たし当院紹介となった.初診時伸展-25度,屈曲55度と著明な可動域制限を認めた.観血的授動術直後より感染が再燃し関節内洗浄を行い,再度授動術を行うも大腿骨遠位骨端離解を生じギプス固定を余儀なくされた.骨癒合後に再度授動術を行い,伸展-5度,屈曲105度まで可能となり歩容は改善した.しかし脛骨内側顆部の骨端骨幹部癒合のため徐々に脛骨近位の内反変形が進行した.Femorotibial angle(FTA)が右175度,左191度となり歩行障害が出現した受傷後4年の時点で手術を希望され,矯正骨切り術にて左FTA 173度と過矯正し歩容は改善した.しかし術後13ヶ月,骨端線は未だ開存し左FTA 177度と徐々に内反変形が進行しており,今後追加手術が必要と考える.
  • 可徳 三博, 峯 博子, 青柳 孝彦, 北川 範仁, 笠原 貴紀, 鶴田 敏幸
    2009 年 58 巻 3 号 p. 511-515
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    変形性足関節症に対する固定法は,距腿関節のみを固定する方法(以下距腿法)に比し,髄内釘で距骨下関節まで固定する方法(以下髄内釘)は正座を含めADL障害が強いとされ関節リウマチ以外に用いられることは希である.我々は上記2法に関して当院で2002年9月より2008年3月の間に行った18例19足(距腿法7足,髄内釘12足)に対し,全荷重時期,骨癒合までの時間,入院期間,入院費用,JOA score(疼痛,不安定性,歩行能力,知覚異常,日常生活動作 計55点)による評価を行い2法を比較した.全荷重までの期間,骨癒合に関しては髄内釘が早かった.入院期間は髄内釘が短い傾向にあったが有意差は無かった.入院費用には差がなかった.JOA scoreは髄内釘が術後36.5点,距腿法では術後36.4点と術後の点数は有意差は無かった.以上の結果から,RAのみならず,変形性足関節症でも髄内釘の適応が大きいものと推察した.
  • 古市 格, 村田 雅和, 宮田 倫明, 穂積 晃, 久芳 昭一, 前田 和正, 松村 陽介
    2009 年 58 巻 3 号 p. 516-521
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    術後6ヶ月以上経過した人工足関節置換術の短期臨床成績と手術手技について調査し報告する.使用機種はナカシマメディカル社のFINE Total Ankle Systemを用いた.本機種は3パーツからなり,中央のポリエチレンソケットに前後左右方向のスライドおよび10度の内外旋運動を可能とし,ストレスの分散を図ることができるように設計されている.対象はRA足関節3例,OA足関節3例の6例で,平均年齢は73歳.JOA足関節スコアは術前平均35点が術後82点へ改善し,いずれの症例でも疼痛の改善と可動域の改善が見られた.OAの1例でコンポーネントの緩み,RAの1例に皮膚壊死が起った.緩みは非進行性,皮膚壊死に対しては形成外科的処置で治癒できた.実際の手術は軟部組織の取り扱いと,コンポーネントの設置位置に十分配慮すべきである.本機種は,短期成績ではRAやOAの破壊された足関節に対して有用である.
  • 村岡 邦秀, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 萩尾 友宣, 今村 尚裕, 竹山 昭徳, 唐島 大節, 内藤 正俊
    2009 年 58 巻 3 号 p. 522-527
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    【目的】足関節後方インピンジメント症候群に対する鏡視下手術は低侵襲で,良好な治療成績が報告されている.今回我々は三角骨障害による足関節後方インピンジメント症候群に対して鏡視下手術を施行したので報告する.【症例】三角骨障害による足関節後方インピンジメント症候群と診断された2例2足(症例1.26歳女性;看護師 症例2.15歳男性;高校野球選手)に対し鏡視下手術を行った.手術方法は傍アキレス腱内外側ポータルを作成し,アブレーダーバー・針子を用いて三角骨を切除した.術後固定は行わず術後2~3日で歩行開始,術後4~6週でスポーツ復帰可能となった.合併症も認めていない.【まとめ】三角骨障害による足関節後方インピンジメント症候群に対し鏡視下手術を施行することで早期復帰が可能となり短期ではあるが良好な成績を得ることができた.
  • 黒木 一央, 宮本 俊之, 米倉 暁彦, 進藤 裕幸
    2009 年 58 巻 3 号 p. 528-531
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    多発外傷後に生じた尖足に対しTaylor Spatial Frame(以下TSF)を用いて尖足矯正を行った1例を報告する.症例は25歳男性.バイク事故で受傷し当院搬送.多発外傷でInjury Severity Scoreは43点で,左足部開放骨折(Gustilo IIIB)を認めた.同日他の部位の治療とともに足部のデブリードマン及び骨接合術を行った.植皮後の固定期間中に尖足を生じ,皮膚生着後に可動域訓練を行うも背屈制限が著明であったため尖足矯正を行った.33日間で33°矯正し最終的に背屈8°まで矯正した.矯正終了時4週間固定した後にTSFを除去し短下肢装具を着用した.矯正及び固定期間中もストラットを緩め足関節の可動域訓練を行った.除去後は背屈-3°で歩容も改善した.緩徐な変形矯正で軟部組織の合併症を軽減し,web上のプログラムで経過の予想が立てやすい事から,TSFは尖足矯正に有効なデバイスであると考える.
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