日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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46 巻, 9 号
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  • 特にQuality of life 及び消化吸収能の観点から
    坂本 孝作
    1985 年 46 巻 9 号 p. 1221-1232
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室で,胃全摘後long loop Roux Y一層縫合再建術を受けた胃癌患者128名の長期追跡調査を行ない,この術式の安全性,有用性を総合的に評価てすることを目的とした.特に,この再建術を受けた患者が,退院後どのようなQuality of life (QL) のもとに生活しているか,また,消化吸収能力がどの程度保たけているかを明らかにすることを主たる目的とした.
    方法:入院・外来診療記録による調査,及び生存例全例にアンケート調査を行い,得られた資料をもとに患者のQLを程度分類し,臨床検査データとの関係を検討した.また,消化吸収能力の評価は, QLのよい外来通院患者を抽出して,脂肪吸収試験(バランス・スタディ法)と, D-キシロース排泄試験(25g法)を行い,同時期に施行した胃亜全摘後の再建術式として行ったBlillroth I法(B-I)及びBillrith II法(B-II)を対照として比較した.その結果, (1) 手術死亡率が低く,この術式は極めて安全な術式である. (2) 累積5年生存率は全国平均を上回る. (3) 術後の合併症が少なく,逆流性食道炎,吻合部狭窄,ダンピング症状が極めて少ない. (4) 生存者の約80%がGood QL又はExcellent QLの満足すべき生活を送っていることが判った. (5) また, QLの程度は食餌摂取量及び血清総コレステロール値と関係が深い. (6) 脂肪吸収試験の結果と, D-キシロース排泄試験の結果とが有意性を含めてよく一致し, long loop Roux Y群は, B-I群よりは劣るものの, B-II群に近い消化吸収能力を保持していることが判明した.以上の検査結果を総合的に評価して,この術式が広く行なわれるべき有用な術式であると結論した.
  • 総胆管切開創一次縫合を中心に
    正田 裕一
    1985 年 46 巻 9 号 p. 1233-1242
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和45年5月より昭和60年4月までの15年間に群馬大学第一外科において手術を施行した胆石症は320例であり,そのうち試験的総胆管切開術13例を含む総胆管切開術を施行した87例について検討した.ただし肝内胆石症と先天性胆管拡張症有石症は除外した.
    総胆管切開後は一次縫合33例(37.9%), Tチューブドレナージ31例(35.6%), 総胆管十二指腸吻合16例(18.4%), 乳頭形成7例(8.0%)を施行した.一次縫合は,コ系石で遺残なしと判断されたもの,ビ系石でも高度の胆管の炎症性変化を認めないもの,試験切開のみの場合で総胆管に変化のないもの,十二指腸への流出が良好のものを適応とした.ドレナージを必要とする場合には総胆管十二指腸側々吻合術を第一選択とし,再発例や胆管拡張の高度のものを適応とした. Tチューブドレナージは急性胆管炎,術後の胆管狭窄の予防,高度の閉塞性黄疸,胆石遺残の疑いのあるもの,急性膵炎合併例などドレナージを要する症例であるが,胆管拡張が充分でなく総胆管十二指腸吻合に適さないものを適応とした.乳頭形成術は胆石が総胆管末端へ嵌頓している症例に対してのみ適応とした.
    術後の合併症は14例(16.1%), 手術死亡例は2例(2.3%)であった.総胆管切開創を一次縫合できた症例では,術後の肝機能の改善は良好であり,早期離床,早期退院が可能であった,総胆管十二指腸吻合例もドレナージ効果は良好で肝機能の改善も良好で入院日数も比較的短期間であった.
    長期遠隔成績では無症状に経過している症例は85.2%であった.総胆管十二指腸吻合例で胆管炎症状を認めたものは1例もなかった.
    胆管病変の疑いがあれば総胆管切開は積極的に施行すべきであるが,適応の選択により一次縫合は可能であるので,不必要なTチューブの乱用は避けるべきである.
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