最近8年間に教室で切除された肺癌264症例を対象として,手術根治度からみた治療成績を検討し若干の知見を得たので報告した.
まず,組織型の内訳は,扁平上皮癌117例,腺癌93例,大細胞癌29例,小細胞癌10例,腺扁平上皮癌9例,その他6例であった.また手術根治度は,絶対的治癒切除115例,相対的治癒切除74例,相対的非治癒切除18例,絶対的非治癒切除57例で,根治手術が71.6%と高率に施行された.一方,組織型別の根治手術の比率をみると,扁平上皮癌の80% (94/117)に対して,腺癌は58% (44/93)と低値であった.手術根治度別による治療成績をみると,絶対的治癒切除の5年生存率は67.6%と良好であったが,相対的治癒切除のそれは25.7%にとどまった.またI, II期の根治手術後3年以内の死亡率は扁平上皮癌の8.8% (5/57)に対し,腺癌は23.5% (8/34)と有意に高く,その死因の多くは脳転移によるものであった.よって,肺癌根治手術の遠隔成績を向上させるためには,補助療法の確立と脳転移などの遠隔転移による死亡を極立防止することが必要と考えられた.
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