環境科学会誌
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11 巻, 1 号
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  • 青柳 みどり
    1998 年 11 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     共通の質問と調査方法を用いた国際社会調査プログラム1993年環境調査によるドイツ,イギリス,アメリカ合衆国,オランダの結果および,国立環境研究所が同様の質問と調査方法を用いて実施した調査データを用いて,環境に対する一般市民の環境保全行動を環境に関する価値観および社会的有効性感覚の2側面から分析した。まず価値観に関する14の文章に対する回答を用いて因子分析を行ったところ,「環境悲観主義」「科学技術・経済中心主義」「人間特例主義」「ダーウィン主義」に類型化できた。個別の環境問題に対する認識と価値観の関連を,環境悲観主義グループと科学技術・経済中心主義グループとの問で「問題の深刻さ」の認識の程度で比較した場合,ほとんどの国々で,環境悲観主義グループの方が科学技術・経済中心主義グループよりも深刻だという認識が高かった。また,環境保全行動について両グループを比較した場合,ドイツ,オランダなどでは環境悲観主義グループの方が明らかに「リサイクリング」「無農薬野菜の購入」「自動車運転の抑制」のそれぞれについて行動率が高いのに対し,日本では統計的に有意な差は認められなかった。しかし,日本独自の質問で取り上げた「社会的有効性感覚」と環境保全行動との関連については,あきらかに有意な関連性が認められた。この結論は,これからの環境政策の展開において,人々に環境の現状を訴えるだけでなく,「一人一人が何をすべきか,その結果どんな効果が得られるのか」を同時に訴える必要性を示唆しているといえよう
  • 楠部 孝誠, 中森 義輝, 森田 恒幸, 西岡 秀三, 内藤 正明
    1998 年 11 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     環境政策分析を支援するためのフレームワークモデルを提案する。フレームワークモデルは,複雑・大規模・不確実・相互関連性といった特徴を持つ環境問題と広範な人間の社会経済活動を巨視的に捉え,問題の構造とそのプロセスを総合的かつ横断的に把握することによって問題の解釈・支援を行うマクロなシステムモデルである。 モデル開発の目的は,環境分野の専門家・研究者の定性的な知見をモデルに取り込み,政策実行に伴う経済・環境影響を分析することにより,政策決定者に政策提言を行うことである。この目的達成のために,「将来のシナリオに基づいて,必要な生産レベル,資源やエネルギーの需要量,廃棄物の排出量,環境変化・影響,それによる人間へのインパクトを見積もる」「資源や環境条件に制約を仮定することにより,経済発展の潜在的レベルを見積もり,重点研究領域の発掘,環境と経済活動の相対的な関係を把握する」という2つのアプローチを試みる。前者には,シミュレーションモジュールを構築し,人口,GDPといったシナリオに基づき,経済活動の発展を分析する。さらに,環境対策のシナリオの所与により,環境影響を分析し,人間活動へのインパクトを見積もる。ここでは日本を対象に2,3のシミュレーションの予測結果を報告し,さらにこのモジュールを用いて,日本の過去35年間(1955-1990年)における工業生産,エネルギー消費量等の経済関連項目の発展の動向を再現している。一方,後者には最適化モジュールを構築し,モデルの最適化を行うと同時に,感度分析手法により環境対策,あるいは排出される環境負荷等といった環境関連項目とマクロ経済指標(GDP)との相対的な関係を明らかにする。このモジュールにおいても同様に日本を対象とする2,3の最適化結果を報告し,最後に環境問題に対するマクロモデルの利用について考察する。
  • 廣渡 紀之, 柳沢 幸雄
    1998 年 11 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     日本における平成6年度のプラスチックの製造に伴うエネルギー消費量およびCO2排出量を試算した。その結果,プラスチックの製造に伴うエネルギー消費量は化学工業のうちの42%を占め,その54%はプラスチック素材中に残存していることがわかった。この残存エネルギーは37.0GJ/tであり,高炉・転炉製鋼法で粗鋼2.6tを製造するのに要するエネルギーに相当する。したがって,廃プラスチックのリサイクルは極めて重要である。プラスチックの製造に伴うCO2排出量は,化学工業のうちの37%を占め,石油製品工業,鉄鋼業および窯業・土石製品工業よりも少ないことがわかった。さらに,プラスチックの代替および廃プラスチックのリサイクルについて,エネルギー消費量およびCO2排出量の視点から考察した。
  • 高橋 章, 佐藤 一男, 藤田 慎一
    1998 年 11 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,林内での観測のデータをもとに,正味の林内沈着量(樹冠雨+樹幹流-林外雨)を従属変数,乾性沈着するガス・粒子状物質の大気中濃度を独立変数として,重回帰分析により沈着速度を推定する方法を提案した。この方法の利点は,樹冠からの溶脱や蓄積が無視できる化学種に対しては,正味の林内沈着量と大気中濃度のセットデータが与えられれば,複数のガス・粒子状物質の乾性沈着が分離でき,多成分の沈着速度を同時に算出できることである。 この方法を,神奈川県伊勢原市のスギ林で実施した通年観測のデータに適用した結果,大気中の硫黄化合物および窒素化合物の沈着速度の年平均値(cm/s)として,SO2:0.50,粒子状硫酸塩(SO42- ):0.057,HNO3:3.5,粒子状硝酸塩(NO3- ):1.3の値が得られた。これらの値は,種々の方法で推定された既往の沈着速度に近いものであった。
  • 松村 寛一郎, 中村 泰人
    1998 年 11 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     アジア各国の食料需要量を推計するためには,生活水準を説明する所得を生み出すメカニズムおよび生活水準から説明される人口動態について言及する必要がある。またアジア各国の統計データの整備状況は発展途上にあるといえる。 本論では各国を横断的に把握するために,IMF統計を用いて資本ストックデータを米国会計基準に基づいて推計した。資本ストックと労働投入量間の関係式,経済発展と人口動態の関係式,各国の一人あたり実質国内総生産額と品目別食料カロリー消費量の所得弾性値を推計した。これらの関係式をシステム・ダイナミックス手法を用いることにより,資本投資と就業者人口比率を外生変数とするアジア各国毎の食料需要モデルを構築し,実勢値を表現可能なモデルの構築を試みた
  • 川上 智規
    1998 年 11 巻 1 号 p. 65-76
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     現在までのところ日本においては酸性雨の陸水に対する広域的な被害は顕在化していないとされている。しかしながら,乗鞍岳山頂付近に存在する湖沼群では,近年pHの著しい低下が観測されるなど,一部地域では酸性雨の影響が顕在化しつつあるものと考えられる。本報ではpHが低下しつつある乗鞍岳の鶴ヶ池を対象とした簡単な水質予測モデルを構築することによって,降雨が湖水の水質に及ぼす影響と,鶴ヶ池が酸性化の過程の中で現在置かれている状況を評価した。 水質予測モデルは降雨が湖水の水質に及ぼす影響を定量的に評価することが可能なモデルであり,湖沼の水量収支にかかわる水理モデルと水質モデルから構成されている。水理モデルでは,降雨による流入水量と湖底からの浸透流出水量から湖水容積の推算を行い,水質モデルでは,降雨からの酸性物質供給量と,物理化学的な中和プロセスあるいは生物学的な中和プロセスによる中和量の推算が可能である。このモデルを鶴ヶ池に適用し,降雨量と降雨中のイオン成分濃度から鶴ヶ池湖水中の主要なイオン成分濃度を予測することができた。その結果,硫酸イオンは降雨から供給されており,火山や地質の影響は受けていなかった。湖沼内における硫酸還元も起きていなかった。カルシウムイオン濃度も降雨の影響を直接受けており,集水域土壌や底泥による供給は少なかった。降雨から供給された硝酸イオンは一部生物学的な脱窒により消費されるが,脱窒が湖水の硝酸イオン濃度に及ぼす影響は小さかった。鶴ヶ池において近年pHが低下している原因として酸性物質の負荷量が増加したか,陽イオン交換能力が失われたことが考えられる。
  • 近藤 次郎
    1998 年 11 巻 1 号 p. 77-78
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 安井 至
    1998 年 11 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 内山 弘美
    1998 年 11 巻 1 号 p. 87-101
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 1998 年 11 巻 1 号 p. 111
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
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