環境政策分析を支援するためのフレームワークモデルを提案する。フレームワークモデルは,複雑・大規模・不確実・相互関連性といった特徴を持つ環境問題と広範な人間の社会経済活動を巨視的に捉え,問題の構造とそのプロセスを総合的かつ横断的に把握することによって問題の解釈・支援を行うマクロなシステムモデルである。 モデル開発の目的は,環境分野の専門家・研究者の定性的な知見をモデルに取り込み,政策実行に伴う経済・環境影響を分析することにより,政策決定者に政策提言を行うことである。この目的達成のために,「将来のシナリオに基づいて,必要な生産レベル,資源やエネルギーの需要量,廃棄物の排出量,環境変化・影響,それによる人間へのインパクトを見積もる」「資源や環境条件に制約を仮定することにより,経済発展の潜在的レベルを見積もり,重点研究領域の発掘,環境と経済活動の相対的な関係を把握する」という2つのアプローチを試みる。前者には,シミュレーションモジュールを構築し,人口,GDPといったシナリオに基づき,経済活動の発展を分析する。さらに,環境対策のシナリオの所与により,環境影響を分析し,人間活動へのインパクトを見積もる。ここでは日本を対象に2,3のシミュレーションの予測結果を報告し,さらにこのモジュールを用いて,日本の過去35年間(1955-1990年)における工業生産,エネルギー消費量等の経済関連項目の発展の動向を再現している。一方,後者には最適化モジュールを構築し,モデルの最適化を行うと同時に,感度分析手法により環境対策,あるいは排出される環境負荷等といった環境関連項目とマクロ経済指標(GDP)との相対的な関係を明らかにする。このモジュールにおいても同様に日本を対象とする2,3の最適化結果を報告し,最後に環境問題に対するマクロモデルの利用について考察する。
抄録全体を表示