河川の水質汚濁の原因とされていた工業排水による汚染は徐々に改善されつつある。しかし周辺部の無秩序な開発,また家庭排水の流入などにより,河川では今,新たな汚染が発生しつつあると考えられる。このような環境問題の解決には,環境の変化を早期に発見し,それぞれの環境に対応した適切な対策をたてる必要がある。そこで,河川環境の変化を早期に見出すための手段として,細菌数の変動に着目した。細菌は生物ピラミッドの重要な基幹部分を構成し,その短い世代交代時間と多様な能力から,その環境に対応した状態で存在している。そして,一定の細菌フローラを形成している。水系における細菌数,またその制御因子については,Bottら,Birdら,Kogureらの報告があり,細菌数が河川環境を評価するにあたってのひとつの指標となり得ることが示唆されている。本研究では,大阪府北部を流れる箕面川と猪名川に4定点を設定し,1989年2月から1990年7月までの18カ月にわたり全菌数と生菌数を測定することにより,細菌の現存量と河川環境との関係を明らかにすることを試みた。
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