特殊教育学研究
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20 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 瀬尾 政雄
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    点字を常用する視覚障害者は、日本語が漢字仮名交り文を正書法とするため漢字・漢語の理解特に同音異義語の理解に困難がある。点字使用者のこの不利を明らかにするため同音異義の漢字を想起させてその結果を比較した。被験者は一般学生28名、弱視学生39名、点字使用学生28名。想起数の平均値を点字群と漢字群とで検定した結果0.1%水準で有意差が認められたが各群内の正眼と弱視、先天盲と後天盲では有意差は認められなかった。しかし、漢字群(正眼≒弱視)〉点字群(後天盲〉先天盲)の関係がすべての結果においてみられた。想起された漢字の出現順位は使用文字に関係なく、漢字使用経験の有無にも関係なく一致した傾向にあった。特に漢字経験のない先天盲グループの漢字の理解度も解答頻度から十分に理解したうえで解答していることが確認された。なお漢字・漢語の理解度は今後に予定している文脈における理解力の程度とその影響に関する調査により更に正確なものとすることが今後の課題である。
  • 中村 真理
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究を含む一連の研究は、格助詞の指導による命題の理解と生成、それに続く論理的結合子の指導による複合文の理解と生成に焦点を当てた、聴覚障害児に対する構文指導の体系化を目的としたものである。ここでは「否定の指導」をプログラム化し、聴覚障害児6名を実際に指導した結果を報告する。この指導では「肯定交はただ1つの事象のみを言及するのに対し、否定交はその肯定文が言及する事象以外のすべての事象を言及する」という否定文の特質を認識させることを意図した。手続きは絵の選択と文の選択、文材料は非可逆肯定文と否定文、可逆肯定文と否定文の4種類、そして肯定文と否定文を対にして指導した。指導前、指導直後、指導後3ヶ月目にテストを行い指導の良否を検討した結果、すべての文材料において有意な(t検定、5%水準)成績の上昇がみられ、それらがほとんど3ヶ月後も持続していた。したがって、本研究における指導は有効であったと考えた。
  • 水町 俊郎
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    1)SD法により259人の評定者に吃音児と非吃音児を評定させ、吃音児に対する聞き手の態度を構造的に把握することを試みた。2)吃音児に対する聞き手の態度の因子として10個の因子が抽出されたが、その中でも第I因子の『神経質な非社会性』と、第II因子の『真摯な生活態度』がとくに重要と考えられる。3)10個の因子のうち、第II因子(『真摯な生活態度』、第III因子(『謙虚さ』)および第V因子(『几帳面さ』)は、吃音児の方が非吃音児よりポジティブに評定された因子であった。したがって、吃音児はネガティブにだけでなく、ポジティブに評価されている面もあるという筆者の以前の研究結果が、因子論的にも確認されたことになる。4)本研究では、吃音児に対する聞き手の態度についての因子を10個抽出し、その中でも第Iと第II因子がとくに重要な因子であることを指摘しているにとどまっている。今後は、各因子を代表する項目を抽出し、因子相互のかかわりを明らかにしていきたい。5)本研究では4つの評定者群を込みにした結果のみであるが、今後、評定者群別についてもみてみたい。6)従来までの研究は、"吃音児"という"ことば"に対して聞き手がどのようなイメージを持っているかをSD法によりとらえるという手法がとられてきた。今後は、そのイメージが、吃音児が実際に吃っている声や吃っている場面に接した時にどう変容していくかについても検討してみたい。
  • 天野 乃理子, 佐野 竹彦
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、精神薄弱青年の自由再生記憶における符号化と検索の役割を明らかにし、自由再生事態に影響を与える訓練要因を探索することであった。被験者は精神薄弱青年96名であり、16語(4カテゴリー各4語)の記銘リストが用意された。実験は訓練試行とテスト試行で構成され、訓練試行における刺激の提示方法、訓練試行における検索手がかりの与え方、訓練試行とテスト試行でのリストの異同、の3要因を組合わせて8条件が設定された。実験の結果、制限手がかり再生は自由再生よりも再生量が多く、ブロック提示はランダム提示よりも群化の程度が高いことが見出された。また、制限手がかり再生を経験することは訓練試行と同じ記銘材料によるその後の自由再生事態での再生匿を増大させ、群化の程度を高めた。精神薄弱青年は、制限手がかり再生のように検索時の手がかり使用を外部から強制されると、自由再生が改善されると結論づけられた。
  • 井田 範美
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    同一MAレベルの中度精神遅滞児ならびに普通幼児にとって未経験のアルファベット文字によるモッテッソーリ的システムを作成し、以下の方法による実験を試みた。第1にマッチング法による文字の視覚弁別を試みた。第2に文字の呈示法として視覚ならびに視覚-書写の2方法による文字の視覚再認(視覚弁別)と視覚再生(書く)を試みた。第3に視覚-音声呈示による視覚的再認(視覚弁利)、聴覚的再認(聴覚弁別)聴覚的再生(発音)を試みた。視覚呈示法よりも視覚-書写呈示法の方が有効であった。又、視覚-音声呈示法における結果の順位は、視覚再認>聴覚再認>聴覚再生であった。遅滞児と幼児による遂行の結果は多くの点で類似していた。結果の全体をとおして、遅滞児の認知的水準、動機づけを配慮する訓練システムの適切な提供が重要であることが指摘できる。
  • 三沢 義一, 中司 利一, 藤田 和弘, 橋本 厚生
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    身体障害者(視覚障害者を除く)の人間関係について最初に性格特性と関連づけて検討し、次に職務要因、モラール、障害老及び職場の属性との関連性を検討した。性格特性は人間関係と関連があり、特に「追従」、「親和」、「内罰」、「養護」、「持久」の各性格特が関連していて、それらの特性における得点は、人間関係得点の低いグループよりも高いグループの場合のほうが高かった。判別分析によっても、性格は人間関係の良し悪しをよく予測し、「追従」、「親和」、「持久」の性格特性は約90%の適中率で人間関係得点の高いグループと低いグループを判別することが明らかになった。人間関係を規定する要因として、職務要因、モラール、勤続年数、年齢、学歴、障害の重症度、職種、組織規模をとりあげ検討した結果では、重回帰分析によって職務要困とモラールが最も重要な要囚であることが判明した。
  • 安永 啓司
    原稿種別: 本文
    1982 年 20 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 1982/07/24
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神遅滞児の自傷行動を、対比効果によって強く維持されているオペラント行動と考えた。そこで、自傷行動と同一の強化子によって、他の特定の行動を条件づけ、さらに、自傷行動の後には必ず他行動を連鎖させて強化した結果、次にあげる2点について明らかにすることができた。1)自傷行動を維持している強化子によって他行動を条件づけることが、自傷行動の分化を弱め、既存の対比効果を緩和して、自傷行動を低減させること。2)行動連鎖によって生じる強化子の効力の違いが、分化強化として、自傷行動の減少に有効であること。以上のことから、本手続が、問題行動の低減において有力、かつ、ポジティブな方法となりうることが示唆された。
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