1)SD法により259人の評定者に吃音児と非吃音児を評定させ、吃音児に対する聞き手の態度を構造的に把握することを試みた。2)吃音児に対する聞き手の態度の因子として10個の因子が抽出されたが、その中でも第I因子の『神経質な非社会性』と、第II因子の『真摯な生活態度』がとくに重要と考えられる。3)10個の因子のうち、第II因子(『真摯な生活態度』、第III因子(『謙虚さ』)および第V因子(『几帳面さ』)は、吃音児の方が非吃音児よりポジティブに評定された因子であった。したがって、吃音児はネガティブにだけでなく、ポジティブに評価されている面もあるという筆者の以前の研究結果が、因子論的にも確認されたことになる。4)本研究では、吃音児に対する聞き手の態度についての因子を10個抽出し、その中でも第Iと第II因子がとくに重要な因子であることを指摘しているにとどまっている。今後は、各因子を代表する項目を抽出し、因子相互のかかわりを明らかにしていきたい。5)本研究では4つの評定者群を込みにした結果のみであるが、今後、評定者群別についてもみてみたい。6)従来までの研究は、"吃音児"という"ことば"に対して聞き手がどのようなイメージを持っているかをSD法によりとらえるという手法がとられてきた。今後は、そのイメージが、吃音児が実際に吃っている声や吃っている場面に接した時にどう変容していくかについても検討してみたい。
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