除草剤, とくにprometryneのイネに対する薬害が高温によつて増大する機作を考察するための実験, 並びに
s-triazine系9種の除草剤の温度による変動の大小についての実験を行なつた。 その要旨は次のごとくである。
1. 除草剤, とくにprometryneの作用力の変動は, イネの地下部の温度よりも地上部の温度に左右されることが大きい。
2. 高温によるprometryneの土壌移動の増大は認められない。 従つて, 高温による薬害の増大, 促進は土壌行動の面からは考えられない。
3. 同じ温度下では空気湿度が低い場合が, イネの蒸散量は大きく, 恐らくprometryneの吸収が増加するために, 薬害の発生も促進される。
4. イネの蒸散量は高温下の方が低温下より大である。 しかし, prometryne処理に伴う蒸散の低下は高温下の方が早く, 著しい。 恐らく蒸散流によるprometryneの吸収パターンが温度によつて異なるためと推測される。
5. イネの薬害に対しては, prometryne吸収時の温度が著しく影響し, その最高の薬害を発生するに要する日数は1-3日間位である。
6. イネ体に吸収されたprometryneの量が同じでも, その後の高温によつて薬害の発生が促進される。
7. Prometryneによるイネへの薬害が高温によつて増大する機作は, 蒸散流による吸収, 並びに一部は根の積極吸収, などの吸収パターンが高温によつて変化すること, すなわち短い期間により多くの薬剤を取りこむこと, 吸収された薬剤の作用力が増大すること, また, イネ体の生理的, 生化学的体制が薬害をうけ易くなること, などの複合的な結果と考えられる。
8.
s-Triazine系9種の除草剤の作用力の温度反応の大小をみると, R
5 (第2図参照) の基についてはCl>SCH
3>OCH
3の順に群別され, 各群ではR
2・R
4の置換基についてisopropyl>ethylの傾向がみられる。
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