イネ, ヒエ間属間選択性除草剤として報告されているキンクロラックの多数の植物に対する生物活性と症状を明らかにするため, 35種類の植物を用いて2,4-D対比のもとに試験した。その結果感受性の程度および症状から感受性植物と耐性植物とに分類した。
イネ科植物は17種類供試したが, キンクロラックに対し, ヒエ, エノコログサ, メヒシバ, オオクサキビ, トウモロコシは感受性を示し, イネ, コムギ, モロコシ, オートムギ, オヒシバ, カモガヤ, コブナグサ, スズメノテッポウは耐性を示した。感受性を示した植物は, いずれもC
4型植物であり, 耐性を示した植物はC
3型植物が主であった。感受性イネ科植物へのキンクロラックの症状は, 新葉の脱色および壊死に続いて植物全体が枯死するものであった。
一方, 広葉植物は18種類供試したが, キンクロラックに対しアブラナ, ダイコン, トウガラシ, ツユクサが耐性を示したが, それ以外の広葉植物は敏感に反応し, オーキシン様症状を発現した。
次にキンクロラックのオーキシン活性について2種類の生物検定法で2,4-Dと比較検討した。ヒエとモロコシを用いた中胚軸伸長試験において, 2,4-Dは両植物の中胚軸の伸長を誘起したが, キンクロラックはモロコシの中胚軸の伸長は誘起したものの, ヒエのそれは誘起しなかった。
一方, ダイコンとイチビを用いた子葉柄屈曲試験において, 2,4-Dは両植物の子葉柄の屈曲を誘起したが, キンクロラックはイチビの子葉柄の屈曲を誘起したもの, ダイコンのそれは誘起しなかった。
以上からキンクロラックの選択性は2,4-Dとは異なり, そのオーキシン活性も植物によって相異に発現した。
特に感受性を示したイネ科植物に対して, キンクロラックはオーキシン活性を示さなかった。
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