イネ根部でのベンスルフロンメチルの吸収・移行・代謝とそれらに及ぼすジメピペレートの効果について検討した。水耕法により生育させたイネ幼植物根部を基部より1cmにて切断し, 新たに形成される根を薬液に所定時間浸漬した。
1) ベンスルフロンメチルによって阻害される根部伸長は, ジメピペレートとの同時処理によって明確に回復した。茎葉部については本試験で用いた濃度及び浸漬時間の範囲内では, 生育抑制は発現しなかった (Fig. 1)。
2)
14C-ベンスルフロンメチルは, 24時間以内では, ほぼ直線的に根によって吸収された。しかし, ジメピペレートの添加により吸収が抑制された (Fig. 2及び3)。いったん, 吸収されたベンスルフロンメチルは地上部に移行するが, 根部中の濃度が常に茎葉部に比べ高かった。ベンスルフロンメチルの茎葉部への移行には, ジメピペレートはほとんど影響を及ぼさなかった (Fig. 4)。
3) 茎葉部より抽出された
14C-標識化合物の多くは, ベンスルフロンメチルの代謝産物であり, 中でも代謝物A (ピリミジン環4位脱メチル体) が最も多かった (Fig. 5-a)。一方, 根部では, 処理時間3, 6, 24時間で各々64, 63, 57%が未分解ベンスルフロンメチルとして残った。ところが, ジメピペレートを同時添加すると, 未分解ベンスルフロンメチルの割合は明らかに減少する一方, 代謝物A, B及びC, あるいは未同定水溶性代謝物を含むその他の代謝物の割合が増加した (Fig. 5-b)。
以上, 24時間以内では, 根部処理されたベンスルフロンメチルの大部分が根に留っており, ジメピペレートが生育抑制作用を軽減する際には, 根部が重要な役割を果たすと考えられた。又, その機構としては, ベンスルフロンメチルの吸収抑制及び代謝促進が関与していることが示唆された。
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