雑草研究
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34 巻, 4 号
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  • 冨永 達, 小林 央往, 植木 邦和
    1989 年 34 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    チガヤ (Imperata cylindrica var. koenigii) は防除が困難なイネ科の多年生雑草である。本研究では和歌山県紀伊大島におけるチガヤの集団間および集団内変異を明らかにしようとした。
    紀伊大島内の路傍, 放棄畑, 果樹園, 芝地および海岸前線砂丘のチガヤ11集団 (Fig. 1) について, 1982年から1984年にかけて自生地における結実率を調査した。また, 11集団から5クローンずつ, 1クローンあたり5ラミートを任意に選び, 1983年6月10日に直径20cm, 深さ19cmの素焼鉢に1ラミートずつ移植した。11月上旬に植物体を掘り取り, 草丈, 分株数, 根茎数, 根茎の直径および長さ, 器官別乾物重を測定した。また, 苞穎の長さ, 葯の大きさ, 自殖率および100粒重も調査した。移植実験は京都大学農学部附属亜熱帯植物実験所 (紀伊大島) で行った。
    自生地における結実率は, 集団および年次の違いにより大きく異なった (Table 3)。海岸前線砂丘のチガヤは, 花粉粒がほとんど認められず, 雄性不稔であり, その結実率は, 0.46%以下と著しく低かった。他の10集団では, 葯の形状や花粉稔性に異常は認められず, 1.05%から59.07%におよぶ結実率の幅広い変異は集団の大きさや出穂個体の密度によるものと推察された。また, 移植実験におけるクローンの自殖率は0.35%以下であり, 100粒重は11.07~13.15mgであった (Table 4)。草丈, 全乾重, 分株数, 総根茎長, 根茎の単位長さ当りの重さ, 葯の幅および根茎への乾物分配率について分散分析を行った結果, 集団間には有意な差異が認められたが, 集団内クローン間には有意な差異は認められなかった (Table 1)。この結果から, 集団間にはこれらの形質について差異が存在するが, 集団内では変異が少ないことが推定された。
    海岸前線砂丘由来のクローンでは, 他の生育地由来のクローンと比較して, 分株数, 根茎数および総根茎長が大であり, 集団内のクローン間変異は小さかった (Table 2)。また, 苞穎長と各クローンの採集地から海岸までの距離との間には, 有意な負の相関が認められ, 海岸前線砂丘由来のクローンの苞穎は著しく長かった (Fig. 2)。
  • ズングソンティポーン シリポン, 草薙 得一, 杉山 浩, 村田 吉男
    1989 年 34 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    1. ヒメイヌビエ (Echinochloa crus-galli var. praticola) 種子を0, 6, 12, 24, 36, 48, 60および72時間水に浸漬し, 各時間ごとに種子中のATP量を測定した。種子中のATP量は水吸収6時間後には急速に増加し, 36時間以降は一定となり, 最高値は72時間で観察された (Fig. 1)。
    2. 1972年から1986年までに採取したヒメイヌビエ種子で, 貯蔵期間の異なる種子のATP量を測定し, それらの種子活性との関係を調べた。その結果, 1) 採取後3年以上経過した種子は, その後の貯蔵期間が長くなるに従ってATP量は次第に減少し, 採取後11年以降の種子ではATP量は検出されなかった (Table 1)。2) 1980年から1986年に採取した種子だけが発芽した。とりわけ1984年採取の種子は最も高い発芽率を示した (Fig. 2)。3) ATP量と発芽率との間には密接な関係が認められた (Fig. 3)。これは48時間の水吸収でATP生産と消費に対応する機構が稼動できるようになるためと推定された。
  • 佐藤 光政, 宇佐美 洋三, 小泉 博
    1989 年 34 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    培地に混和した植物葉のアレロパシーを調べるため, 雑草または作物葉粉末と石英砂を混和して, ポットまたはシードリングケースに詰め, 検定植物としてキュウリ (品種: 四葉) を播種し, その後の生長を比較した。得られた結果の概要は以下のとおりである。
    1. クズ葉を混和した場合にはキュウリの生長は促進され, ソバおよび陸稲を混和した場合には対照区と大差がなく, シロザ, シロバナチョウセンアサガオ, ヨモギおよびメヒシバを混和した場合には抑制された (Fig. 1, 2)。
    2. シロザおよびシロバナチョウセンアサガオ葉粉末の量を変えて石英砂と混和し, キュウリを播種したところ, これら粉末の混和量が多い場合ほどキュウリの生長は抑制された (Fig. 3, 4)。
    3. シロザ葉粉末, シロザ葉粉末のエタノール抽出物, 抽出残渣を石英砂と混和した培地におけるキュウリの生長は, いずれの場合も対照区より劣ったが, とくにシロザ葉粉末および抽出残渣を混和した場合に著しかった (Fig. 5)。
    4. シロザ葉粉末を混和した培地におけるキュウリの生長の抑制は, ポット内の液の浸透圧およびpHの上昇, およびシロザに含まれる生長抑制物質の作用の結果であろうと考察した。
  • 小林 聖, 島影 孝, 広田 秀憲
    1989 年 34 巻 4 号 p. 292-298
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    牧草地の強害雑草であるエゾノギシギシの防除法確立のための基礎的知見を得るために, 春播きした本雑草をポット栽培し, その初期生育および刈取り後の再生に対する遮光処理の影響を, 遮光率 (無遮光, 80%遮光, 90%遮光, 95%遮光および100%遮光) および遮光開始時期 (種子期, 子葉期, 1葉期, 3葉期および5葉期) をかえて検討した。
    1. 初期生育において, 出芽率は, 無遮光区では90%以上と高く, 次いで100%遮光区が高かったが, 他の遮光区では明らかに低下した。播種後約80日目の草丈, 葉数, 葉面積および地上部 (種子重, 葉重, 茎重) 乾物重は, 遮光率が高いほど, および処理開始の早いものほど劣る傾向にあった。特に葉数および乾物重は, 無遮光区に比べ遮光区で著しく劣った。しかし, 葉面積は, すべての葉期において80%遮光区が無遮光区を優った。また, 種子生産は無遮光区および5葉期における80%および90%遮光区のみで認められた。
    2. 播種後約80日目に地上部を刈取った後の萌芽率は, 各葉期とも刈取り前の遮光率が高いほど低下する傾向にあり, 特に, 95%および100%遮光区では全く萌芽しないか, あるいは萌芽してもほとんどの個体が枯死した。刈取り後40日目に植物体を掘取ったときの乾物重は, 地上部および地下部 (直根重, 側根重) とも, 刈取り前の遮光率が高いほど, または処理開始時期の早いものほど低下する傾向が認められた。
    以上のことから, 草地内においてエゾノギシギシの第1葉が展開する頃までに90%程度の遮光が得られれば, エゾノギシギシ防除に有効であることが示唆された。
  • 第5報 塊茎からの発生消長と出芽に及ぼす要因
    伊藤 一幸, 宮原 益次
    1989 年 34 巻 4 号 p. 299-307
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    オモダカの塊茎からの出芽消長を普通期作田およびコンクリートポットで作期, 年間の土壌水分を変えて調査した。また, オモダカ塊茎の出芽がばらつく原因を解明するため, 湛水開始時期, 塊茎の埋没深, 塊茎の大きさを変えて出芽を調査するとともに, 土壌の還元程度, 地温を変えた条件における幼芽の伸長速度を調査し, 次の結果を得た。
    1. 普通期作田における塊茎からの出芽は代かき直後から中干し期まで, だらだらした発生がみられた。
    2. コンクリートポットの湿田条件では早期, 普通期とも5月上旬から8月下旬まで出芽が続き, 6月下旬がピークであった。一方, 乾田条件においては普通期作では6月下旬 (代かき直後) と8月下旬 (中干し後) の2時期に, 早期作では5月中旬, 6月中・下旬および7月下旬の3時期に出芽のピークがみられ, 普通期作田および湿田と出芽のパターンが異った。
    3. 塊茎からの出芽時期は湛水開始時期, 埋没深および塊茎の大きさにより変動した。とくに早期作で出芽期間が著しく長くなったが, これは5月上旬の段階では塊茎の休眠が未覚醒のためと判断された。
    4. 暗黒の水中における塊茎幼芽の伸長速度は25℃定温で最も速く, 10℃および40℃ではほとんど伸長しなかった。
    5. デンプン添加量と塊茎からの出芽の関係は添加量が増すほど出芽がおくれた。また, 土中の幼芽の伸長速度は還元の進まない条件ほど速かった。
    6.以上の結果より, オモダカの発生消長が長い要因を明らかにし, 防除法との関係について検討した。
  • IV. エゾノギシギシの発芽・初期生育に及ぼす種子のサイズと裸地面積の影響
    梨木 守, 原島 徳一, 佐藤 健次
    1989 年 34 巻 4 号 p. 308-314
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    草地造成直後のエゾノギシギシの発芽・定着の機構を明らかにするため, エゾノギシギシの発芽・初期生育に及ぼす種子のサイズと裸地面積の影響を調査した。
    1) 放牧草地で得られたエゾノギシギシの種子サイズは1.0mm以上のものが多かった。
    2) エゾノギシギシの発芽勢および発芽率は種子サイズの大きなものほど高い傾向がみられた。このようなエゾノギシギシの発芽特性はオーチャードグラスに比べ優れていた。
    3) エゾノギシギシは種子の大きなものから発生した個体ほど, その地上部, 地下部の初期生育は旺盛であった。
    4) エゾノギシギシは発芽時の裸地面積が大きな条件で発芽した個体や, 同じ裸地面積条件でもオーチャードグラスから離れた位置にある条件で発芽した個体ほど初期生育は旺盛であった。しかし, 裸地面積の狭い条件において発芽させても枯死する個体は少なかった。
    5) このようなエゾノギシギシの有する発芽特性の良さやわずかな裸地条件でも生育可能な生態的特性が, 造成直後の草地においても発芽・定着を可能にしている一因と考えられた。
  • スワンウォン スィーソム, 臼井 健二, 石塚 皓造
    1989 年 34 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    除草剤耐性機構の解明および耐性植物作出の検討を目的として, 植物における分岐鎖アミノ酸生合成, 芳香族アミノ酸生合成あるいはグルタミン合成酵素のような窒素代謝の攪乱活性が強いベンスルフロンメチル (BSM), グリホサート (GLY), およびグルホシネート (GLU) を用いて各々の耐性細胞をニンジン懸濁細胞より選抜した。ニンジン (Daucus carota L. cv. Harumakigosun) はこれらの除草剤に感受性である。
    ニンジンの胚軸より誘導した細胞をLS培地で懸濁培養した。この細胞の生育は10-8M BSM, 10-3M GLYあるいは10-5M GLU処理で著しく阻害された (Fig. 1)。それぞれ10-9M, 10-4Mあるいは10-6M処理では50%程度の阻害を示したが, これら除草剤を含む培地で数回継代培養すると無処理細胞と同程度の生育となった。その状態の細胞を更に, それぞれ, 10-8M, 10-3Mあるいは10-5Mを含む培地に移し継代培養を続けることにより, 耐性細胞が選抜された (Fig. 3, 4, 6, 7)。選抜された耐性細胞は上記濃度の除草剤を含む培地中で無処理細胞と同程度に生育した。耐性細胞の選抜に要した継代培養回数即ち期間は, GLYはBSMよりやや長いが3~4ヵ月と比較的短かったが, GLUはほぼその倍の期間であった。このことは除草剤の物理化学性あるいは作用, 耐性機構と関連があると推察された。これら耐性細胞は, ある期間上記濃度の除草剤中で培養した後, 更に高濃度の10-7M BSM, 10-2M GLYあるいは10-4M GLU中に移しても生育可能であつた(Fig. 2, 5, 8)。また, 除草剤を含まない培地に移しても耐性は保持され (Fig. 9), 耐性適応は少なくとも一年間は安定であることが認められた。
  • ズングソンティポーン シリポン, 草薙 得一, 杉山 浩, 村田 吉男
    1989 年 34 巻 4 号 p. 322-325
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    1. Three ATP extraction methods for Echinochloa crus-galli var. praticola imbibed seeds were tested: 1) boiling intact seeds 2) boiling cracked seeds and 3) grinding seeds with or without 5% TCA. With the two boiling methods a very small amount of ATP was detected. The grinding method accomplished in a very short time using Triton X-100 as an extract solution for ATP gave the best results.
    2. Three methods of cleaning for various durations were compared in E. crus-galli var. praticola seeds: 1) dipping in 70% ethyl alcohol (EtOH), 2) dipping in 1% NaClO solution and 3) exposure to formaldehyde gas. The results showed that dipping in 70% EtOH or exposing to formaldehyde gas for 3 minutes is an appropriate means of cleaning E. crus-galli var. praticola seed for ATP assay.
  • チナウォン ソンバット, 松本 宏, 石塚 皓造
    1989 年 34 巻 4 号 p. 326-329
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    Tolerance of fourteen Thai RD-rice cultivars (Oryza sativa L.) to the herbicides simetryn (2, 4-bis (ethylamino)-6-methylthi-o-s-triazine) and dimethametryn (2-(1, 2-dimethylpropylamino)-4-ethylamino-6-methylthio-s-triazine) was surveyed. When the herbicides were applied to roots through a nutrient solution, dimethametryn was more phytotoxic to the plants than simetryn. Differences in tolerance to the herbicides were observed in the nutrition solution treatment. RD-1, 21, 23, 25 and 27 were relatively tolerant and RD-11, 13, 15 and 17 were susceptible to both herbicides. When the herbicides were applied to the soil, no clear difference in tolerance was noted among the cultivars; in this treatment, dimethametryn was less phytotoxic. The data demonstrated that relative phytotoxic activity of the herbicides changed depending on the method of treatment.
    Adsorption and movement of the herbicide in the soil may contribute to its phytotoxicity.
  • 佐藤 光政, 宇佐美 洋三, 小泉 博
    1989 年 34 巻 4 号 p. 330-332
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
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