舗装道路の路面間隙に形成される雑草植生と道路周辺の土地利用形態および人間活動との関係を明らかにすることを目的に, 栃木県宇都宮市を例に挙げて, 土地利用と人口密度において対照的な住宅地域と水田地域の路面間隙の雑草植生を比較した。植生調査は2003年7月9日から8月13日にかけて, 無作為に抽出したそれぞれ50地点の住宅地域および水田地域で行い, 路面間隙に出現した雑草の総種数, 別の出現頻度, 生活型組成および帰化雑草率を求めた。
その結果, 住宅地域の路面間隙で54科185種の雑草が, 水田地域で31科119種の雑草が観察された。さらに, 住宅地域の路面間隙でツメクサ (
Sagina joponica (Sw.) Ohwi) やオオバコ (
Plantago asiatica L.) などの踏圧に強い小型の雑草が高い頻度で出現し, 草本性の雑草の他にもタラノキ (
Aralia elata (Miq.) Seemann) やムクノキ (
Aphananthe aspera (Thunb.) Planch.) などの木本類と, 園芸植物のハーブ類が数ヶ所で観察された。また, 水田地域では草高が1m以上に成長したシロザ (
Chenopodium album L.) やヨモギ (
Artemisia princeps Pampan.) などが高い頻度で出現した。
以上のように, 住宅地域の路面間隙に形成される雑草植生は水田地域に比べて種数に富むだけでなく, 種組成の点で著しく異なり, 両地域の植生の違いには, 鳥による種子伝播を含めた雑草種子の供給, 刈り込みや抜き取りなどの雑草管理や踏圧などの人為的な要素が関与していると考えられた。
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