アズキの野生祖先種であるヤブツルアズキ (
Vigna angularis var.
nipponensis) と雑草系統の雑草アズキ (ノラアズキ, 学名はない) を自生地保全するための基礎的知見を得る目的で, 自生群落での他種植物との競争を想定した遮光条件下 (高遮光 : 相対照度約50%, 中遮光 : 相対照度約70%, 無遮光) で栽培アズキ, ヤブツルアズキ, ノラアズキを栽培し, 草型と個体乾物重, 種子生産数を調べた。生育初期からの強い遮光条件によってヤブツルアズキとノラアズキは, 葉のサイズ, 総茎長, 側枝数, 茎の直径, 個体乾物重を減少させ, 主茎の下位節間を伸長させた。播種後約40日目のヤブツルアズキの主茎は, 高遮光条件で無遮光よりやや短かったが, 145cm以上あり, ノラアズキの主茎は高遮光条件で対照区と同等か長くなる傾向にあった (105~145cm)。高遮光下でヤブツルアズキとノラアズキの主茎が長めに成長するのは, 幼植物の時に共存する植物によって遮光された場合に群落の上部 (草冠) に個体上部を到達させる役割を果たすと推定された。高遮光, 中遮光のいずれの条件下においても主茎の伸長能力はノラアズキよりヤブツルアズキで優れており, ヤブツルアズキがノラアズキよりも光に関して競争的な環境での生育に適していると示唆された。しかし, 連続した高い遮光条件下ではヤブツルアズキはノラアズキと同様に繁殖器官の乾物重や種子生産数を激減させており, 生育の後半に遮光されるような環境には適応していないと推定された。
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