雑草研究
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54 巻, 4 号
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原著論文
  • 浅井 元朗, 黒川 俊二, 清水 矩宏, 榎本 敬
    2009 年 54 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/23
    ジャーナル フリー
    飼料用穀物等の輸入に伴う国外からの雑草種子の非意図的導入とその耕地への拡散,在来生態系への逸出が大きな問題となっている。しかし,侵入経路ごとにどのような雑草がどの程度混入しているのかは解明されていない。非意図的侵入源の一つと想定される輸入乾草中の混入雑草種子を調査した。1995年の半年間,栃木県那須山麓酪農協に入荷したコンテナーの乾草残渣を回収し,3ヶ国7品目の計150検体について混入雑草種子を選別,識別し,同定に供した。1検体あたり種子数が10以上および複数検体から検出された雑草種子は概ね属レベルまで同定し,約60分類群を同定した。総混入件数の60%がイネ科草種であった。1検体あたり100粒以上の大量混入が確認された草種はホトケノザ(Lamium amplexicaule),スベリヒユ(Portulaca oleracea),シロザ(Chenopodium album),オートムギ(Avena sativa),カラスムギ(Avena fatua),ライグラス類(Lolium spp.),エノコログサ類(Setaria spp.),ナギナタガヤ類(Vulpia spp.),コムギ(Triticum aestivum)で,これらのほとんどが発芽力のある種子を含んでいた。最も多数の検体から検出されたのはカラスムギで57検体から検出され,オーストラリア産オーツヘイ中の80%以上に混入していた。次いでライグラス類が多く43検体から検出され,これもオーストラリア産オーツヘイ中に大量に混入していた。
  • 浅井 元朗, 與語 靖洋
    2009 年 54 巻 4 号 p. 226-232
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/23
    ジャーナル フリー
    ムギ作における難防除雑草カラスムギの出芽パターンと土壌処理型除草剤の効果に及ぼす耕起体系の影響を調べるため,ムギ類収穫後のカラスムギ種子自然落下とその後の各種栽培体系を擬した野外ポット試験を行った。カラスムギの出芽時期ならびに出芽深度が異なる条件下で,トリフルラリン乳剤,クロロプロファム乳剤のそれぞれ単用,併用処理によるカラスムギの出芽数,生残数を解析した。夏不耕起区ではカラスムギの出芽盛期は10月中旬のみであったが,夏耕起・秋耕起区の出芽は11月中旬∼12月上旬と翌年2月の2回の盛期が存在した。11月上旬以前の出芽個体は非選択性除草剤の処理により生残個体は存在しなかった。カラスムギの出芽数,生残数に対するトリフルラリンおよびクロロプロファムの効果と耕起体系には交互作用が存在し,トリフルラリンは夏耕起区で,クロロプロファムは不耕起区で効果が高い傾向が認められた。以上のことから,夏期の不耕起管理によってカラスムギの出芽時期が前進し,ムギ類播種期以降の出芽数が減少することが明らかとなった。また,地表面から出芽したカラスムギに対してはクロロプロファムの防除効果が高く,トリフルラリン,クロロプロファムの併用処理によって防除効果が向上することが示唆された。
  • 中井 譲, 鳥塚 智
    2009 年 54 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/23
    ジャーナル フリー
    米ぬか土壌表面処理による水田雑草の抑草効果とともに,水稲苗の活着に及ぼす影響を明らかにするため,代かき翌日に移植し,代かき2日後に無洗米製造工程で粒状に成形された米ぬかにより土壌表面処理を行った。米ぬか土壌表面処理後の酸化還元電位は,処理量が多いほど速やかに低下し,処理区ではコナギとイヌホタルイを除いて他の水田雑草の残草がほとんど見られなかった。コナギとイヌホタルイが残草した理由としては,米ぬか土壌表面処理によって土壌還元が発達した条件下でも,発芽が抑制されなかったためと考えられる。また,コナギは処理量に応じて株数,生体重ともに少なくなったが,イヌホタルイは米ぬか土壌表面処理によって個体当たり生体重の低下傾向が見られたものの,株数の減少は認められなかった。これは,米ぬか土壌表面処理によるイヌホタルイの発芽や発根の阻害程度がコナギより軽いためと推察される。さらに,葉齢の進んだ充実度の高い水稲苗は,土壌還元の発達した条件下における適応力が高いため,米ぬか土壌表面処理による活着不良を回避できた。
  • 中山 祐一郎, 坂井 雅子, 山口 裕文
    2009 年 54 巻 4 号 p. 239-248
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/23
    ジャーナル フリー
    イヌビエ(Echinochloa crus-galli)における生態的分化の実態や住み分けの仕組みを考察するために,異なる水ストレスを与えてヒメイヌビエ(var.praticola),ヒメタイヌビエ(var.formosensis)およびイヌビエ(狭義,var.crus-galli)の生態的な反応を解析した。畑状態(対照区)では,ヒメイヌビエは低い草丈と多い分げつとなり,早生で高い繁殖分配率を示し,小さな種子を多産した。ヒメタイヌビエは,高い草丈と少ない分げつとなり,晩生で低い繁殖分配率を示し,大きな種子を少産した。イヌビエ(狭義)は,ヒメイヌビエとヒメタイヌビエの特性にまたがる広い変異を示した。湛水条件では,3変種に共通して良好な生長や繁殖,根への乾物分配率の増大がみられ,広義のイヌビエは基本的に湿性地に適応した生態的特性をもつと考えられた。乾燥条件では,ヒメイヌビエは幼植物の草丈を増加させ,根への乾物分配率を減少させずに生長を維持し,種子サイズを小さくして,種子生産数の減少を小さくした。一方,ヒメタイヌビエは,乾燥条件において生長や繁殖を顕著に抑制された。イヌビエ3変種の水ストレスに対する反応の違いから,水分の多い立地で良好に生育するイヌビエの特性を基本として,ヒメイヌビエは乾燥ストレスに対する耐性を獲得して路傍や畑地などの不安定な環境に適応しており,ヒメタイヌビエは湿性地のなかでもとくに除草という人為撹乱のある水田においてイネと共存するように適応したと考えられた。
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