雑草研究
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65 巻, 3 号
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原著論文
  • 岩本 啓己, 渡邉 修
    2020 年 65 巻 3 号 p. 95-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/14
    ジャーナル フリー

    無人航空機(unmanned aerial vehicle: UAV)は植物群落の面的データを経時的に取得でき,植生モニタリングへの活用が期待される。本研究では教師あり学習を用いてUAV画像からクズ(Pueraria lobata (Willd.) Ohwi)を抽出し,夏季におけるクズ群落の空間占有の推移を評価した。2018年6~10月に5回,河川敷の群落のRGB画像を対地上高50 mから撮影し,オルソモザイク画像を50 cm × 50 cmグリッドに分割した。RGB各バンドの輝度値に基づきサポートベクトルマシンによってグリッドごとのクズの在・不在を判別したところ,クズの葉群展開初期にあたる6月では判別できなかったが,群落表層がクズに被覆された7月以降には全グリッドの5%を教師データにすることで正解率が0.9以上,F値が0.9以上となった。判別結果から期間ごとの群落周縁部の拡大速度を移住確率と距離との関係を表す移住カーネル関数によって評価したところ,7月下旬の除草作業で地上部が取り除かれた範囲で,その後の養分貯蔵期に0.0574 m/dayという特に高い値を示した。除草後に残った越年茎や株からのシュートの発生によって,群落が速やかに除草前の範囲を回復したと考えられた。以上から,UAVで経時的に撮影した画像が雑草群落動態の評価に有用であることが示唆された。

  • 浅井 元朗
    2020 年 65 巻 3 号 p. 103-109
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/14
    ジャーナル フリー

    ムギ作の難防除雑草カラスムギについて,茨城県西部に自生する4集団の種子を野外に設置したポットに0~20 cmの深度別に埋め込み,出芽パターンを4年間追跡調査し,埋土深度と出芽パターンの関係を検討するとともに,25 cm深に埋設した種子の生存状況を調査した。供試したカラスムギ集団間には出芽時期の明瞭な変異が存在した。4集団中2集団で,播種年の秋期に出芽が集中し,播種後6ヶ月で出芽がほぼ完了し,もう1集団も播種後1年間に出芽の大半が完了した。しかし,他の1集団は異なる挙動を示し,播種翌春以降に出芽のピークが生じた。埋土深度と出芽パターンとの関係も異なり,出芽時期の早い3集団は埋土深度の浅い種子ほど出芽時期が早かったのに対し,出芽時期が遅い1集団では,埋土深度15,20 cmの種子が,10 cm以内に埋設した種子より早く出芽した。出芽の早晩と,25 cm深に埋設した種子の土中持続性には相関があり,出芽の早い集団の種子は多くが播種後半年以内に土中発芽した一方,出芽の遅い集団の種子は多くが未発芽であった。カラスムギの出芽不斉一性には種子の埋土深度に加え,発芽の環境要求性に対する変異が関与し,国内の狭い地理的範囲における変異の存在が明らかとなった。

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