3品種のリンゴ (紅玉, アルプス乙女, オレゴンスパー) を用いて, 果形, 果色, 糖度および遊離酸含有量ならびにテクスチャーの測定を行なうとともに, これら各項目に対応する官能検査を実施し, 2者間の相関性の有無についても検討を加えた。
1) 果形および果色の品種間差を理化学的方法によつて明確に識別することができた。
2) 官能判定による果形の嗜好調査から, 紅玉は最も見慣れたリンゴらしい形, オレゴンスパーは高級品としてのイメージを受けることが判明した。
3) 果色の嗜好傾向には規則性が見られ, 赤味の濃いしかも彩度の高い色が好まれる傾向がある。
4) 糖度および遊離酸の含有量は, 各品種に固有の値を示すとともに, 官能検査と甘味率の比較照合の結果, 甘味率が甘味強度の判定にふさわしい指標であることを確認した。また, 遊離酸の含有量がリンゴの示す呈味に大きく影響することが示唆された。
5) 甘味強度の判定と総合評価の得点とは一致性が強く, 甘味強度がリンゴに対する嗜好を決定する傾向が強いという従来からの説を確認することができた。
6) テクスチュロメータを用いて, 3品種のテクスチャーの差異を明確に識別できた。とくに, 9mm桿状プランジャーによる測定モードでの値をテクスチャープロファイル法によって解釈することの意味について検討を加えた。
7) 官能検査による硬さと歯切れのよさの判定結果は, テクスチュロメータによる測定の結果とほぼ一致した。
8) 多汁性についての官能判定とテクスチュロメータによる結果とは必ずしも一致しなかった。その理由として, この官能判定には, 単に果汁の量だけでなく, 果肉組織のもつテクスチャーも微妙に影響するのではないかと考えられた。
9) 総合判定は, 基本的には甘味の程度に支配される傾向が強いが, テクスチャーも大きく影響する要素であることを明らかにした。
抄録全体を表示