近来工業規模にて脂肪酸,ニトリル,エステル,クロロシラン,可塑剤等の各種有機合成中間製品を3~10mmHg程度の高真空において精溜を行いたい要望が高まつてきた。しかるに泡鐘塔では一理論段当りの圧力降下が3~5mmHgにも達するのでこの目的には不適当である。充填塔式精溜にマクマホン,キャノン等の高級なる充填物を使用すれば一理論段相当長当りの圧力降下を0.03~1mmHgにてすませることができるが,何分にも大きな塔径に使用するには高価に過ぎる欠点がある。幸い最近の報文中に散見する0.25吋ラシヒリング,ベル鞍の精溜データを検討してみると操作条件を適当に選定すればこの目的に適合しそうである。或はラシヒリングを主体に充填して,その上部に少量のマクマホン,キャノンパッキングを充填する併用方法も有効であると考えられる。
何分にも各文献の実験装置の塔径が3吋以下の小規模であるので,塔径が大になれば還流液のチャンネリングの影響も大となり,また使用成分により性能も異なるからこれらのデータをそのまゝには使用できないが,操作条件がH.E.T.P.及び△Pに及ぼす影響等がよく判明するので各文献の要点と,装置設計に当つて留意すべき事項について述べることにする.
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