廃棄物資源循環学会誌
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35 巻, 5 号
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巻頭言
特集:プラスチックの持続可能な原料確保に向けたポテンシャル
  • 五十嵐 圭日子
    2024 年35 巻5 号 p. 311-317
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

    現在,バイオマスからのプラスチック製造のほとんどは,抽出した油脂成分や糖成分をそのまま利用するか,構成する糖成分を単糖類に分解し,モノマーに変換し,重合してプラスチックを得ている。前者の場合,食料との競合になることが多く,後者の場合,変換プロセスは経済的にもエネルギー的にも非効率である。そこで本研究では,バイオマスの組織構造や分子量に応じたカスケード利用を可能にする技術開発を目指す。すなわち,未利用バイオマスを酵素等で変換する際に,酵素処理の程度によって繊維として残りやすい部分,化学的に分解しにくい成分は多糖類やオリゴ糖として,分解されやすい部分は単糖類として利用する「バイオマスフラクショネーション技術」の開発を目指している。

  • 根本 耕司, 佐野 浩, 神田 三奈, 高野 純一
    2024 年35 巻5 号 p. 318-324
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

    2021年6月にはプラスチックに係る資源循環の促進に関する法律(プラスチック資源循環促進法)が公布(2022年4月施行)され,製品の設計から廃棄物の処理まで,プラスチック素材/製品の商流すべてにおける資源の循環等の取り組みを促進する仕組みができた。2024年5月には資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業高度化法)が参院本会議で可決,成立し,プラスチック素材/製品の製造・販売事業者において,自社の素材/製品へ再生材を活用する取り組みが期待されることとなった。欧州を中心に,自動車等への再生材の利用を義務付ける動きが拡大するなか,上述した二つの法律を含めた第五次循環型社会形成推進基本計画の策定に向けた議論が進んでいる。同計画においては初めて循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行が明記され,カーボンニュートラルの実現とあわせて,産業競争力の強化に向け,素材ごとの方向性や数値目標が示される見込みである。いずれの目標も,プラスチック素材/製品の製造事業者単独の取り組みでは困難である。本稿では,再生材の利用促進も視野に入れた,持続可能なプラスチック製造に向けた三菱ケミカルの取り組みについて紹介する。

  • 田村 正純
    2024 年35 巻5 号 p. 325-330
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

    近年プラスチックごみの問題が深刻になり,プラスチックのリサイクル技術の開発は急務である。プラスチックのリサイクル技術として,サーマルリサイクル,マテリアルリサイクルが大部分を占めるが,炭素循環を考えた場合,ケミカルリサイクルは必要不可欠の技術であり,また,二酸化炭素削減やエネルギー削減の観点からも十分なポテンシャルを有すると期待される。特に,プラスチックの大部分を占める炭化水素系プラスチック(ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル, スチレン系樹脂)のケミカルリサイクル技術の開発が必要不可欠である。そこで,本稿では,プラスチックのケミカルリサイクルの現状と,近年注目を集めている触媒を用いたポリオレフィン系プラスチックの水素化分解技術の研究動向について概説し,さらに,最新の技術としてわれわれの固体触媒技術について説明する。

  • 和氣 孝雄, 小山 浩士, 山﨑 和広
    2024 年35 巻5 号 p. 331-340
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

    プラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄は,気候変動や資源枯渇の問題を深刻化させている。2015年には,全世界でのプラスチック生産量が年間約4億 tに達し,その廃棄量も年間約3億 tにのぼった。先進国では「物質的な豊かさ」への欲求が高まりつづけ,また新興国では人口増加と経済成長により,プラスチックの消費活動がますます拡大し,廃棄物の増加が予想されている。

     住友化学は,さまざまな環境負荷低減技術の開発を通じて,二酸化炭素排出量の削減や化石資源の使用量抑制,資源循環等,持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。特にアクリル樹脂(PMMA) では,高い収率で MMA モノマーが得られる分解特性を活かしたケミカルリサイクルに注力している。二軸押出機を用いた高効率熱分解プロセスを(株)日本製鋼所と共同で開発し,早期の社会実装を目指している。この技術により,従来の PMMA と同等の品質を保ちながら,二酸化炭素排出量を大幅に削減できる見込みである。さらに,住友化学は地方自治体との地域内資源循環プロジェクトや,ブランドオーナーとの共同取組を通じて,リサイクルを推進し,持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めている。

  • 駒田 悟
    2024 年35 巻5 号 p. 341-348
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

    プラスチックは生活に不可欠な素材ではあるが,廃プラスチック問題,気候変動問題等を受け,リサイクル等の環境対応への取り組みが,今後より一層求められると考えられる。

     ポリスチレンは,乳酸菌飲料容器,食品トレーや包装容器等に広く用いられている。魚箱や食品発泡容器等の一部はメカニカル(マテリアル)リサイクルされており,リサイクルが進んだ樹脂の一つといえる。それでも大半が 1way で使用され,エネルギー回収目的に焼却処理されている。温室効果ガス削減のためにも循環型リサイクルが望まれる。これらを受け,当社でも環境対応技術,循環型リサイクル技術を開発中である。

     本稿では,モノマー化ケミカルリサイクル技術全般の紹介を中心に,環境対応技術への取り組み(メカニカルリサイクル,バイオマスナフサ由来のポリスチレン,植物由来添加剤ポリスチレン)についても紹介する。

  • 中谷 隼, 大野 肇, 齋藤 優子, 吉岡 敏明
    2024 年35 巻5 号 p. 349-361
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

    近年,プラスチック問題に対しては,海洋流出を含むプラスチック汚染への対応とリサイクル率の向上に加え,再生プラスチックの含有率を政策的に規定する動きが進んでいる。そのため,廃プラスチックを適正処理するだけではなく,地域固有の条件を活用して廃プラスチックを有効利用するサーカムスタンス適応型の資源循環の視点が求められる。本稿では,以上のような社会的要請に応えるための研究事例として,物質フロー分析によるプラスチック利用量の分析結果をもとに市区町村ごとの廃プラスチックの発生量をトップダウン的に推計した事例,容器包装プラスチックの光学選別の精度を実証してマテリアルリサイクルによる再生プラスチックの供給可能性を分析した事例,製油所を拠点としたサーカムスタンス適応型のケミカルリサイクルのシナリオを評価した事例,全国の市区町村における製品プラスチックの回収の実態と仙台市における回収物の組成を調査した事例を紹介する。

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