整形外科と災害外科
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60 巻, 2 号
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  • 井上 三四郎, 齊田 義和, 菊池 直士, 阿久根 広宣, 白尾 英仁, 木下 真理子, 田中 悦子, 落合 秀信, 宇戸 啓一
    2011 年 60 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】12歳以下の小児重度外傷について調査した.なお重度外傷については,便宜上New injury severity score(NISS)16以上を対象とした.【対象】対象は8人,年齢は平均5.2(0~11)歳,全例男児であった.受傷機転は交通事故5例,農耕具による事故1例,建築現場での事故1例,虐待1例であった.NISSは平均35.8(17~75)であった.院外および来院時心肺停止が1例ずつ,院外呼吸停止が1例であった.【結果】8例中4例が翌日までに死亡した.直接死因は,急性硬膜下血腫に伴う脳ヘルニア,びまん性脳損傷,後頭骨環椎脱臼,肝損傷であった.救命し得た4例では,最終調査時に,3例は装具や杖なしに学校生活や日常生活を送っていた.【考察】高エネルギー外傷の場合,骨傷のみである症例はむしろ稀であり,他科との連携を密にする必要がある.
  • 村上 勝彦, 角南 勝利
    2011 年 60 巻 2 号 p. 173-175
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    80歳以上の高齢者に対してTKAを施行し,その短期成績について検討した.対象は2006年3月から2010年3月に行った38例45膝.手術時平均年齢は83.4歳,男性11例女性27例,平均経過観察期間は22.6ヶ月.ROM,JOA score,FTA,コンポーネント設置角度,周術期合併症,既往歴について調査した.また同時期に施行した80歳未満の症例148膝を対照群として比較した.JOA scoreは42.7点が73.7点に,ROMは14.3~116.5度が,9.8~117.5度に改善された.FTAは189.6度が174.1度に矯正された.合併症は,感染の為インプラントを抜去し関節固定に至った症例が1例,肺血栓塞栓症で死亡された症例が1例あった.内科的合併症を36例に認め,循環器系合併症が28例あったが,高齢者の成績は対照群に比してほぼ同様な成績だった.高齢者では合併症を有していることが多く,予備能力も低下している為,周術期管理を徹底して行うことも重要である.
  • 永田 武大, 中村 英一, 鬼木 泰成, 岡元 信和, 西岡 宏晃, 田中 あづさ, 水田 博志
    2011 年 60 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】高位脛骨骨切り術(HTO)後の偽関節に対する人工膝関節置換術(TKA)では,偽関節部を整復後,骨切りし,延長ステムを用いる術式が報告されている.今回我々は,偽関節部の矯正を行わず,そのまま骨切りを行ったTKAの1例について報告する.【症例】78歳,女性.両側の内側型膝関節症に対し,近医にてHTOを施行された.術後1年時骨切り部は癒合せず,歩行困難な為,当科外来を受診した.初診時,両膝には腫脹がみられ,可動域は15°~145°であった.X線上FTAは右202°,左198°で,両側とも脛骨後傾角は35°で,骨切り部には可動性がみられ,HTO後偽関節と診断した.治療は,両膝に対し,近位骨片をそのままの位置で骨切りし,脛骨コンポーネントに延長ステムを付け,偽関節部を固定するようにTKAを行った.術後6ヶ月の現在,両側とも偽関節部の骨癒合は得られ,ADL上疼痛は消失している.
  • ―Surfix Lock Plateによる内固定の場合―
    川村 秀哉, 山口 智太郎, 久枝 啓史, 中村 哲郎, 矢野 英寿, 土屋 邦喜
    2011 年 60 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    Surfix Lock Plate Systemを用いてInterlocking Wedge Osteotomy(以下IWO)を行い,術後早期荷重を行って良好な臨床成績をあげることができたが,より早期荷重をめざしたところ約10% の症例で遷延癒合を生じた.IWOでは骨切り部内側が開大する症例があり,これらの症例や骨粗鬆症例で遷延癒合を来していた.この対策として脛骨粗面を中心に骨切りラインを斜めに変更し,骨切り部内側の開大を最小とした.この新しい術式(New IWO)では荷重分散を図り,骨切り面を広くすると共にプレートへのスクリュー締結により骨切り部をより密着させることができた.今回は当院での平成18年2月から19年11月までのSurfix Lock Plate Systemを用いた51症例,57膝についてX線学的検討,臨床成績の検討を行った.ほとんどの症例では早期の骨癒合を認めたが,1例2膝に遷延癒合,1膝に脛骨骨壊死の進行を認めた.アンケート調査による近隔臨床成績(術後経過平均3年5ヶ月)は良好であったが,比較的若年者の一部で階段昇降能改善不良例を認めた.
  • 井原 秀俊, 河野 勤
    2011 年 60 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    新鮮損傷前十字靭帯(ACL)の修復を目指す保存療法において,受傷後の初期MRI像にて,ACL形態回復の良否が推定できるか検討した.ACL新鮮損傷に対して保護的早期運動療法にて治療し,受傷数日後と治療約1ヶ月後のMRI,およびその後のMRI評価ができた35例(平均年齢27.2歳)を対象にした.受傷より初回MRIまでの平均期間は7.3日であった.初回MRIでの靭帯輪郭描出を5型に分類した.治療約1ヶ月後のMRIにて修復像(直線帯,垂直化)の出現を調べた.経過時MRIでの靭帯形態回復を4分類した.初回MRIでの輪郭描出と経過時MRIでの形態回復との間に相関があるのか,治療約1ヶ月後MRIでの修復像有無が良否判定に参考になるのかSpearman順位相関係数を用いて解析した.その結果,初回MRIでの輪郭描出と,経過時MRIでの靭帯形態回復の間には相関がみられた(rs=0.565,p<0.001).描出形態が良ければ,良い結果を期待できると言える.一方,治療1ヶ月後MRIでの直線帯や垂直化という修復像の出現は,靭帯の形態回復には関連しなかった.
  • 河野 勤, 井原 秀俊, 川原 慎也
    2011 年 60 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】膝関節内へ迷入した金属片の2例を経験したので報告し,どのように迷入したのか考察する.【症例1】33歳,男性.工具用釘打ち機で誤って釘を膝蓋骨に刺入.釘には3mm程の釘連結用ワイヤーが2本付着しており,抜釘後もこれが骨内に残存した.骨を開窓し摘出を試みるが更に深部へと入り込み関節内へ達した.関節内迷入を想定しておらず,後日関節鏡視下に摘出を行うが困難を極め,膝窩筋腱孔をポンピングすることでようやく吸引除去できた.【症例2】38歳,男性.10年前に膝蓋骨骨折の手術を受け,周囲締結ワイヤーが残存したままであった.立ち上がり動作で急に膝痛出現,歩行困難となる.レントゲンでワイヤーの折損とその一部の関節内への迷入が確認できた.鏡視では迷入したワイヤーを比較的容易に発見でき,鉗子で把持して摘出した.残存するワイヤーの一部は関節内と交通があり,同部から折損ワイヤーが迷入したものと思われた.
  • 松原 弘和, 楊 昌憲, 田坂 善彦, 細川 哲
    2011 年 60 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    今回我々は,中年男性の膝関節に生じた軟骨損傷に対してMosaic plastyを施行したので報告する.症例は49歳男性.職業は警察の鑑識.明らかな外傷歴はなく,スポーツは趣味でランニングを行っていた.右膝の歩行時痛ならびに膝屈曲時の疼痛増強を認め,日常生活に支障をきたすようになり来院.初診時,内側関節裂隙に疼痛認めた.可動域は0°~130°,大腿周囲径は39 cm(健側41 cm)であった.単純X線では,北大分類2期,FTA:175°(臥位).軽度屈曲位にて大腿骨内側顆に不整像を認めた.MRIでは同部位に軟骨損傷を疑わせる信号変化を認めた.関節鏡では,大腿骨滑車部ならびに大腿骨内側顆,外側顆に広範囲な軟骨損傷を認めた.大腿骨滑車部ならびに大腿骨内外側顆にMosaic plastyを行い,一部ドリリングを併用した.術後6カ月の時点で歩行時痛も改善し,治療は奏功している.
  • 後藤 久貴, 伊達 武利, 長岡 徳三
    2011 年 60 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者大腿骨近位部骨折手術後のHb値減少率(入院時と術後7日目)と術後7日目以降の循環器系合併症との関係を検討すること.【対象】'06年1月から'09年5月までに当科で手術(人工骨頭置換術,骨接合術)を行った70歳以上の大腿骨近位部(頚部,転子部,転子下)新鮮骨折例のうち,多発骨折例,輸血例などを除いた298例(Hb値減少率20%以上群114例,20%未満群185例).【方法】診療録での後ろ向きに調査により,両群における術後7日目以降の循環器系合併症の発症率を比較した.【結果】Hb値減少率20%以上群では20%未満群に比べ,循環器系合併症発症率が有意に高かった(6.14% vs. 0%:p=0.026).【考察】高齢者大腿骨近位部骨折の術後7日目におけるHb値が入院時より20%以上低下した場合,それ以後の循環器系合併症発症予防の観点から,他の要因を考慮した上で,輸血の施行を検討してよいと考えられた.
  • 田中 寿人, 小峯 光徳, 山之内 直也
    2011 年 60 巻 2 号 p. 202-204
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】転子部骨折の骨接合術で問題となるのが,ラグスクリューのカットアウトである.ラグスクリューの位置不良がその発生要因として考えられており,至適位置としてBaumgaertnerらが提唱するTip-apex distance値(以下TAD値)を20mm以下にすることが重要とされている.【方法】リーミング終了後にガイドピンを削開孔に挿入し,イメージ透視下に削開端や周囲骨髄質を探索した.ガイドピンを削開端に当てることにより,1方向透視下でも3次元的位置確認ができた.これにより,安全に骨頭軟骨直下までラグスクリューを挿入可能で骨頭を強固に捕らえることができた.【結果】イメージ透視下リアルタイムで探索することにより,3次元的位置確認が可能となる.また周囲骨髄質の確認も可能となり,術後荷重許可時期の判断の一所見ともなる.骨頭軟骨直下まで安全確実に挿入することによりTAD値を押さえることができた.
  • 朝倉 透, 進 訓央, 大江 健次郎, 松浦 恒明
    2011 年 60 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    Hansson pinの術後に大腿骨転子下骨折を生じた報告は散見されるが,大腿骨転子部骨折を生じたとの報告は非常に稀である.今回,Hansson pinの術後に生じた大腿骨転子部骨折の2例を経験したので報告する.いずれも初回骨折後にHansson pinで骨癒合が得られ,術後4年8ヶ月と3年1ヶ月で再転倒し,Hansson pin周囲の大腿骨転子部に骨折を生じた.転位のない1例では保存治療を,転位を伴う1例ではHansson pinを抜釘して髄内釘固定を行った.いずれも再び良好な骨癒合を得た.
  • 境野 昌範, 金澤 武利, 諌山 照刀, 井上 明生
    2011 年 60 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    両側進行・末期変形性股関節症に両側に大腿骨骨切り術併用のキアリ手術を施行し,2年以上経過を観察した症例について,除痛に成功したかどうかを検討した.対象となる20例(男性3例,女性17例)の手術時年齢は32~57歳(平均47歳),術後の追跡期間は2~25年(平均6年10ヶ月)であった.また両側の手術間隔は最短1年4ヶ月,最長19年であった.除痛について,両側共JOA score疼痛点35点以上は12例60%,30点以上だと15例75%を占めていた.両側例の場合,手術間隔を1年半以上空ける点に注意するほかは,合併手術などキアリ手術の一般的な適応に従って問題のないことがわかった.
  • 城戸 聡, 中村 哲郎, 土屋 邦喜, 川村 秀哉
    2011 年 60 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    出産後に骨盤部痛で体動困難となった骨盤輪不安定症(感染例と非感染例)2例を報告する.【症例1】37歳女性,帝王切開分娩後2週頃より左骨盤部痛出現した.その後疼痛増悪したため救急外来受診した.WBC 10100,CRP 6.13と炎症反応は亢進していたが発熱はなかった.Xp検査では恥骨結合に2 mm以上の左右差を認め,骨盤輪不安定症と診断した.安静,疼痛コントロールで軽快した.【症例2】35歳女性,分娩後1週で骨盤部痛のため救急搬送された.体温38.2度,WBC 12000,CRP 16.7と炎症反応も亢進していた.Xp,造影CT,造影MRI検査施行し,骨盤輪不安定症,化膿性仙腸関節炎,化膿性恥骨結合炎と診断した.安静および化学療法で保存的に治療し,経過は良好である.【まとめ】妊娠中や出産後に腰背部痛や骨盤部痛を訴える女性は多い.そのほとんどは自然軽快するが,化膿性仙腸関節炎や化膿性恥骨結合炎などの報告もあり,その診断・治療には十分な注意を払う必要がある.
  • 上田 幸輝, 吉兼 浩一, 西井 章裕, 角田 和信, 井口 貴裕, 牛島 正博
    2011 年 60 巻 2 号 p. 221-223
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    内視鏡下後方除圧術は腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症,頸椎症性神経根症などに対する手術療法として広く行われている.骨性除圧には彎曲したケリソン鉗子やハイスピードドリルなど,特殊に改良された器械が用いられる.黄色靭帯上での切除は安全な操作であるが,硬膜管あるいは神経根に接した骨性除圧にハイスピードドリルを用いる際には,神経を巻き込む危険性を伴う.今回我々は内視鏡下に超音波骨メス(ソノペット)を用いて安全な骨切除を行った症例を経験したので報告する.ソノペットの利点は,血管や神経など弾力性のある組織はその振動を吸収するため,破砕しないというところにある.ソノペット使用による重篤な副作用はこれまでのところ認められておらず,内視鏡下後方除圧術の骨性除圧におけるソノペット使用は有用であると思われた.
  • 吉兼 浩一, 西井 章裕, 林田 光正, 角田 和信, 井口 貴裕, 上田 幸輝, 進 悟史, 河田 純, 牛島 正博
    2011 年 60 巻 2 号 p. 224-227
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    経皮的内視鏡下椎間板摘出術(PELD)経椎弓間アプローチ導入期における10例の短期成績を報告し,内視鏡下椎間板摘出術(MED)10例を対照とし検討した.手術時間(分)はPELD 73.6がMED 38.7よりも有意に長かった.術中出血量は両群とも測定不能な程僅かであった.術前後のCRP値(mg/dl)の推移は,PELDでは術前0.06が術翌日0.33,MEDでは術前0.09が術翌日0.87と,PELDはMEDに比べ術翌日の上昇が有意に低かった.術前JOA scoreは両群に有意差はなく,術後のJOA scoreと改善率にも有意差は認めなかった.手術合併症は両者ともなかった.再手術例もなかった.PELD interlaminar approachはMEDと比較してさらに低侵襲な術式であることが示唆された.今後有用な治療法の選択肢となっていく可能性があると思われる.
  • 藤原 将巳, 佐藤 英, 矢津田 圭, 大崎 幹仁, 秋山 徹
    2011 年 60 巻 2 号 p. 228-231
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,腰部脊柱管内嚢腫病変(滑膜嚢腫・黄色靭帯内血腫】7例を経験したので報告をする.男性4例,女性3例,年齢は47歳から80歳までであった.臨床症状,画像所見,手術所見そして病理所見などに関して検討を加えた.手術は顕微鏡下による内側椎間関節切除を行い,嚢腫摘出をおこなった.病理組織学的診断では,6例が滑膜嚢腫,1例は黄色靭帯内血腫であった.
  •  
    中添 悠介, 富田 雅人, 野崎 義宏, 岡崎 成弘, 土居 満, 安倍 邦子, 林 徳眞吉, 進藤 裕幸
    2011 年 60 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    血管平滑筋腫(Vascular leiomyoma)は特徴的な疼痛があり,日常診療でしばしば遭遇する良性軟部組織腫瘍である.今回我々は神経鞘腫と鑑別を要し,術前診断に難渋した血管平滑筋腫の一例を経験した.有痛性軟部組織腫瘍として血管平滑筋腫は一般的な腫瘍であり,問診時に疼痛の性状により注意深く着目していれば術前診断が可能であった一例を経験したので報告する.
  • 富田 雅人, 熊谷 謙治, 野崎 義宏, 進藤 裕幸
    2011 年 60 巻 2 号 p. 236-237
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【はじめに】当科における脂肪肉腫の治療成績を調査した.再発・転移を認めた症例を詳細に調査し予後因子について検討した.【対象と方法】1999年から2009年に当科で手術を行い病理で脂肪肉腫と診断された症例は50例(男性24例,女性26例,平均年齢61.7歳)であった.そのうち,転移または局所再発を7例に認めた.この7症例について臨床的,病理組織学的予後因子について検討した.【結果】局所再発2例,転移7(肺4,多発性骨転移1,リンパ節1,膵尾部1)例であった.これらの脂肪肉腫の発生部位は,大腿部3例,臀部1例,背部1例,後腹膜1例,腸骨部1例であった.組織分類では,粘液型5例,脱分化型1例,高分化型1例であった.【考察】四肢発生の高分化型脂肪肉腫では,再発・転移を認めなかった.体幹発生症例や,切除縁が甘い症例で再発・転移を認めた.術前に正しく診断し,適切な切除縁を確保する事が重要であると考えられた.
  • 柳澤 哲大, 薬師寺 俊剛, 佐藤 広生, 岡 潔, 水田 博志
    2011 年 60 巻 2 号 p. 238-242
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    軟骨粘液線維腫は稀な良性骨腫瘍であるが,骨皮質内に発生した非常に稀な軟骨粘液線維腫の1例を経験したので報告する.38歳女性.特に誘因なく右大腿部痛が出現し当科を紹介受診された.単純X線にて右大腿骨遠位骨幹部前方に辺縁硬化を伴った骨透亮像を認め,単純CT上,病変は骨皮質内に存在し表層の骨皮質は菲薄化していた.MRIにて病変はT2強調画像で軟骨様の高信号を呈しており,軟骨形成腫瘍を疑い腫瘍切除ならびに人工骨移植術を施行した.切除標本による病理組織学的検査では軟骨粘液線維腫の診断であった.手術直後より疼痛は消失し,術後1年の現在,局所再発は認めていない.軟骨粘液線維腫は骨腫瘍全体の1%以下と比較的稀な疾患であり,そのほとんどは骨髄内発生例である.骨皮質内発生の軟骨粘液線維腫は,我々が渉猟し得た限り過去に13例のみであり,本症例は稀な症例と考えらえらた.
  • 江頭 秀一, 古市 格, 村田 雅和, 宮田 倫明, 森口 昇, 塚本 正紹, 依田 周
    2011 年 60 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    成人の滑膜性骨軟骨腫症は文献上数多くみられるが,日常遭遇することはまれで特に小児での報告例は少ない.今回小児に発生した膝関節滑膜性軟骨腫症の1例を経験したので報告する.症例は10歳男児.平成21年5月頃より特に誘因なく右膝関節痛,水腫認め当科受診.滑膜性軟骨腫症疑い関節鏡視下手術施行した.関節内の白色遊離体と表面に軟骨を形成していると思われた滑膜を摘出・切除した.症状は軽減し日常生活は可能となったが,深屈曲時の違和感あり.X線上遊離体の残存を認め,再度関節鏡視下手術行い,術後短期では症状は軽快している.病理組織では滑膜組織内に硝子軟骨を形成しており,一部石灰化を呈していたが骨化は明らかではなかった.11ヵ月後の現在再発なく経過観察中である.小児での本疾患発症例の報告は少なく,その機序についても不明な点が多いが,文献的考察を加え報告する.
  • 依田 周, 古市 格, 村田 雅和, 宮田 倫明, 森口 昇, 塚本 正紹, 江頭 秀一
    2011 年 60 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    大腸癌患者に肋骨転移とガス壊疽を合併した1例を経験したので報告する.症例は73歳男性,下行結腸癌に対して下行結腸切除術施行.術後経過良好で退院.退院して3週後に右側胸部痛を主訴に近医受診.炎症反応の上昇を認め精査目的に当院紹介.胸腹部CTで第8肋骨および周囲にガス像を認め,ガス壊疽疑われ当科紹介となる.同日,緊急手術(掻爬,開窓)施行.掻爬部,血液培養からはクロストリジウム属菌が検出され肋骨生検から大腸癌の転移も合併していたことが判明した.創部は開放創としてウェットドレッシングし徐々に肉芽が盛り上がり閉創した.非外傷性ガス壊疽を診療した際は腫瘍の合併を考慮する必要がある.また癌患者を診療する際は転移,感染の合併等も念頭に置く必要があると考えられた.
  • 野崎 義宏, 富田 雅人, 熊谷 謙治, 進藤 裕幸
    2011 年 60 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【はじめに】今回我々は,骨病変をきたした成人T細胞白血病(ATL)の3症例を経験したので報告する.【症例】症例1.71歳,男性.ATLの加療中に背部痛と下肢筋力低下が出現し画像検査でL3の椎体の溶骨性病変を認めた.放射線照射を施行し症状の改善を認めた.症例2.55歳,男性.ATLの加療中,右下腿と両手指の疼痛が出現した.画像上,多発性溶骨性病変(左右手指骨,両脛骨)を認め,放射線照射とゾレドロネート投与を併用した結果,疼痛の改善と著明な仮骨形成を認めた.症例3.63歳,男性.ATLの加療中,右足背部の膨隆と疼痛の訴えがあり画像上,右立方骨に溶骨性病変を認め放射線照射を開始した.画像上の変化は乏しいが症状の改善を認めた.【考察】ATLによる骨病変は溶骨性変化や病的骨折のためADLに支障をきたす骨病変に対して放射線照射が施行されているがビスフォスフォネート製剤との併用で疼痛緩和と病的骨折の抑制に関して有効である可能性が示された.
  • 川上 泰広, 村松 慶一, 吉田 紘二, 関 寿大, 田口 敏彦
    2011 年 60 巻 2 号 p. 258-262
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    FDG-PET/CTは原発不明癌の診断等に有力な検査法である.近年,この検査法を肉腫に対する化学療法効果判定に応用する報告が見られる.今回,当科で経験した4例からその有用性を検討した.症例は骨肉腫2例(13歳,14),Ewing肉腫2(6,21)である.基本的に化学療法開始前と手術前にFDG-PET/CTを行いSUVとMRI所見,病理組織所見で比較検討した.骨肉腫FDG-PET/CT 2例ではSUV1(化学療法前)3.6,5.0であったが,SUV2(化学療法後)2.1,2.0と低下した.病理学的にも腫瘍壊死率90% 以上であった.Ewing肉腫の2例ではSUV1 9.3,3.86であったが,SUV2 1.93,0と低下した.どちらも腫瘍壊死率90% 以上であった.今回の結果から,FDG-PET/CTは鋭敏に腫瘍細胞の活動性を評価でき,化学療法の治療効果判定において有力な検査であった.
  • 山岡 和弘, 首藤 敏秀, 入江 学, 安田 淳司
    2011 年 60 巻 2 号 p. 263-265
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】当院で行ったMIS-UKAの術後短期成績について検討した.【方法】2005年6月から2007年1月までに当院で行ったMIS-UKA 20膝(男性2例2膝,女性18例18膝)を対象とした.手術時平均年齢は72歳,原疾患は内側型OA 7例7膝,内顆骨壊死13例13膝であった.使用機種は全例Zimmer Uniで検討項目として可動域,JOA score,X線評価,合併症等を調査した.【成績】JOA scoreは,術前平均52.0点が術後平均87.5点に改善,可動域は術前平均122°から術後平均132°へと軽度改善した.FTAは術前平均179°が術後平均175°へと矯正されていた.特記すべき合併症も認めなかった.【考察】当院で行ったMIS-UKAは良好な術後短期成績が得られた.適応を選べば片側型OAや骨壊死に対し有用な手術法であると考える.
  • 池辺 智史, 井手 衆哉, 伊藤 純, 馬渡 正明, 佛淵 孝夫
    2011 年 60 巻 2 号 p. 266-268
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】当科においては年々手術件数が著明に増加し,術後在院日数を減少させ対応している.今回人工膝関節全置換術(TKA)において在院日数の減少に伴う術後転院率の変化,臨床成績について調査した.【対象と方法】当科にてTKAを行った症例のうち,2002年より行った前期入院群100例と,クリーンルーム増床に伴い手術件数が増加した2005年より行った後期入院群100例の200例300膝を対象に,術後在院日数,転院率,術後可動域,術後JOA scoreを調査比較した.【結果】術後在院日数は後期入院群で前期入院群に比し約4日間減少し,転院率は後期入院群で著明に増加していた.術後可動域は2群間で有意差無く,術後JOA scoreは腫脹とtotalでのみ有意差を認めた.【考察】TKA後早期では腫脹・疼痛・熱感などが残存している時期であり,臨床成績向上のためには他施設との密接な医療連携が必要不可欠である.
  • 奥間 英一郎, 當眞 嗣一, 浦崎 康達, 金城 忠克, 金城 聡, 野原 博和, 金谷 文則
    2011 年 60 巻 2 号 p. 269-272
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】腰椎椎間板ヘルニア(LDH)または腰部脊柱管狭窄症(LCS)により下垂足を呈した手術施行例の術後成績とそれに影響を与える項目について検討した.【症例および方法】症例は平成17年~19年で下垂足(MMT 2以下)を呈し,手術を施行したLDH 10例,LCS 14例(男12例,女12例)であった.平均年齢はLDH 44.9歳,LCS 67.0歳で,術後観察期間は平均1年4カ月であった.手術までの期間は,3週以内と3週以降で分け,それぞれLDH 6例,4例,LCS 3例,11例であった.原因疾患(LDHおよびLCS)の下垂足の改善を評価し,それぞれの手術までの期間,年齢,病型(神経根型および馬尾型)について検討した.【結果】LDHがLCSに比べて有意に改善していた.LDHでは手術時期,病型にかかわらず下垂足の改善は良い傾向があり,LCSでは馬尾型で改善が悪い傾向にあった.
  • 稲田 望, 野原 博和, 六角 高祥, 我謝 猛次, 黒島 聡, 米嵩 理, 大湾 一郎, 金谷 文則
    2011 年 60 巻 2 号 p. 273-277
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    Synovitis-acne-pustulosis-hyperosteosis-osteomyelitis(SAPHO)症候群に伴う骨関節病変は前胸部が最も多い.脊椎では約30%とされているが,後弯変形と神経症状を伴う例は稀である.我々は,胸腰椎後弯変形に伴う脊髄症状を来し手術を施行した一例を経験したので報告する.症例は42歳男性,主訴は背部痛,立位保持困難である.31歳時,背部痛を自覚し,骨シンチで胸椎,左胸骨,左鎖骨,左肋骨に異常集積を認めた.40歳時,扁桃炎と診断され扁桃を摘出した.胸椎X線像で,第12胸椎の楔状変形と,胸腰椎の後弯変形を認めた.MRIでは第11・12胸椎レベルで脊髄が圧迫されていた.椎体生検による病理診断は非特異的慢性炎症像を示し,細菌培養は陰性で,SAPHO症候群に伴う脊椎炎と診断した.42歳時,脊髄症状を来し,独歩不能となったため,手術を行った.手術は一期的に前方より椎体上部切除し後方よりinstrumentation,再度前方より腸骨移植を行った.術後,胸腰椎後弯は矯正され麻痺は改善し独歩可能となった.術後2年の現在も胸腰椎後弯変形の矯正損失なく経過良好である.SAPHO症候群の疾患概念,脊椎病変について文献的考察を加えて報告する.
  • 伴 光正, 阿久根 広宣, 森 達哉, 高橋 祐介, 今村 隆太, 矢野 英寿, 中村 哲朗, 齊田 義和, 井上 三四郎, 末永 賢也, ...
    2011 年 60 巻 2 号 p. 278-282
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    胸椎に発生した硬膜外海綿状血管腫を経験したので報告する.症例は80歳女性.急速に進行する両下肢麻痺(改良Frankel分類C1),膀胱直腸障害を認め,MRIを行ったところ第5~7胸椎レベルにT1WI iso intensity,T2WI high intensity,T1-Gd very high intensityの硬膜外腫瘍を認めた.進行する脊髄症状に対し,T5-7椎弓切除術,腫瘍全摘出を行った.病理は海綿状血管腫であった.術後1年で再発を認めず,杖歩行可能(改良Frankel分類D2).膀胱直腸障害も回復した.
  • 中村 幸之, 齊藤 太一, 犀川 勲, 入江 努, 田中 哲也, 山口 亮介
    2011 年 60 巻 2 号 p. 283-286
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアは非常に稀な疾患で,発症頻度は全腸管ヘルニアの0.1%である.触診や視診による診断が困難なことから治療開始が遅れ,腸管の壊死や穿孔に続発した感染症による致死率が高い疾患である.腸閉塞などの腹部症状のみならず,嵌頓した腸管によって閉鎖神経が圧迫され,下肢痛や股関節痛をしばしば認め,閉鎖孔ヘルニアに特徴的な所見である.今回我々は,左下肢痛と股関節部痛を主訴に整形外科を受診し,腹部症状のない早期に診断が可能であった症例を経験したので報告する.
  • 柳樂 慶太, 亀山 康弘, 村田 雅明, 大塚 哲也, 河野 龍之助
    2011 年 60 巻 2 号 p. 287-290
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    外傷性脱臼に肩甲骨関節窩前縁骨折を伴った2例を経験したので報告する.症例1は25歳男性,スノーボードにて転倒し受傷した.左肩の痛みと不安定感の持続があり,当院受診し,肩甲骨関節窩前縁骨折を認めた.観血的治療を行い,可動域制限・不安定性なく良好に治癒した.症例2は77歳女性,転倒し右肩を打撲し受傷した.他院にて右肩関節前方脱臼を認め徒手整復を行ったが,整復位保持が困難であり当院紹介となった.関節窩前縁骨折を認め,観血的治療を行った.術後,肩関節の可動域制限は残存するが,不安定感なく比較的良好に治癒した.CT画像での骨片の関節窩に対する相対比は症例1は38.0%,症例2は53.3%であり,ともに不安定性を認めた.治療方針を決定する上で,関節不安定性の有無が重要であり,関節窩に対する骨片の相対比が指標の一つとなり得る.
  • 土屋 邦喜, 川口 謙一, 城戸 聡, 川村 秀哉
    2011 年 60 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    当科における透析脊椎手術症例80例を検討した.神経症状の回復はおおむね良好であったが術後5日目の早期神経症状再悪化を一例に認めた.術後2日目の消化管大量出血による出血性ショックを一例に認めた.術後6ヶ月以内の死亡例が4例存在した.隣接椎間障害は頚椎2例,腰椎1例の計3例に認められ,いずれも初回術後1年以内に発生していた.透析脊椎手術は的確に施行された場合神経症状の改善は比較的良好であるが,全身合併症の率は高く,また隣接椎間障害も比較的早期に発生することが多いため手術適応,術式には十分な注意が必要である.
  • 土屋 邦喜, 川口 謙一, 城戸 聡, 川村 秀哉
    2011 年 60 巻 2 号 p. 295-297
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    当院での脊椎内視鏡導入以降1椎間の腰椎椎間板ヘルニアに対するMED法で手術時間が90分を超えた7例を検討した.7例中3例が顕微鏡への変更症例で1例が硬膜損傷によるもの,2例がオリエンテーション不良による変更であった.その他椎間板ヘルニアの手術を困難にし手術時間が延長する要因としてL3/4ヘルニア,遠位遊離症例,潜在性L5被裂,高度な骨変形を伴うもの等が挙げられた.顕微鏡手術と内視鏡手術はそれぞれ異なる特徴を持っており,変形や神経根周囲の癒着の高度なものの中には顕微鏡手術の方が適当と考えられる症例が存在する.今回これらの症例の手術時間延長の要因を検討し,MEDの適応,手技上のポイントや顕微鏡手術との使い分けに関し考察した.
  • 朝倉 透, 松浦 恒明, 進 訓央, 大江 健次郎
    2011 年 60 巻 2 号 p. 298-302
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    石灰沈着性腱板炎の好発部位については,古くは棘上筋腱であるとされてきた.今日の解剖学的な新たな知見では,棘下筋が棘上筋を乗り越えてsuperior facetまで達していることが指摘されている.こうした背景の中で,今回我々は石灰沈着の発生部位についてMRIを用いた定量的な検討を行った.骨頭中心を起点として結節間溝と石灰の中心とのなす角を石灰位置角と定義した.この角度の平均は49.5±16.5度であった.
    一方,superior facetとmiddle facetとの境界線は,結節間溝から45.4度外旋した位置にあることはすでに報告されている.この部位は,大結節表面が頭側に向けて鈍角を形成するため,腱板には力学的ストレスが生じやすい.2つの角度が互いに近い数値を示したことから,石灰沈着の好発部位は,superior facetとmiddle facetとの境界線と一致するのではないかと推察された.また棘下筋に石灰沈着が生ずる例も多いのではないかと考えられた.
  • 井浦 国生, 齊藤 太一, 犀川 勲, 入江 努, 田中 哲也, 加藤 剛
    2011 年 60 巻 2 号 p. 303-307
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性椎体骨折後の偽関節に対する椎体形成術+後側方固定術の治療成績を検討した.症例は10例(男性2例,女性8例),手術時年齢は73.8歳,罹患椎体高位はT12が3例,T11,L2,L3がそれぞれ2例,L1が1例であった.椎体形成術にはハイドロキシアパタイトブロックを使用した.固定椎間数は平均3.5椎間で,術後経過観察期間は平均11.7ヶ月であった.最終経過観察時,麻痺(歩行能力)の改善は良好であったが,形成椎体高に前後壁ともに平均2.5 mm,矢状面での後弯Cobb角に平均5.3°の矯正損失を認めた.重篤な全身合併症は認められなかったが,5例に術後新規の椎体骨折を認めた.後弯矯正の理想角度に関しては明確な指標がないが,本法は本疾患に対して有効な方法であると考えられた.また,新規椎体骨折の発生も含めて,術後は既存の骨粗鬆症に対する厳重な薬物療法とX線学的経過観察が重要である.
  • 泉 政寛, 宮崎 真樹, 井手 衆哉, 馬渡 正明, 佛淵 孝夫
    2011 年 60 巻 2 号 p. 308-311
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    当院にて2006年1月から2009年1月までに行ったTKA 294例444膝を対象とし,術後合併症や術前後の膝関節機能と患者の肥満度との関連性を検討した.これらの患者をBMIを用いて3群に分類し,それぞれの年齢,既往歴,合併症,膝関節機能,術後在院日数を調べた.全症例のBMIの平均は25.7であり,BMI 30以上の高度肥満群は46例(15.6%)であった.年齢,在院日数,膝関節機能は各群間で有意差を認めなかった.術前の糖尿病の既往,術後合併症の総数(術創に関する合併症)は高度肥満群で有意に多い結果となった.TKAにおいて,肥満患者も非肥満患者と同様の手術の成果を得ることはできたが,手術に関して合併症などの問題点があることを十分説明する必要があると考えられた.
  • 森 達哉, 王寺 享弘, 松田 秀策
    2011 年 60 巻 2 号 p. 312-317
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    整形外科手術における症候性金属アレルギーは稀だが,発症すると重篤な合併症となりうる.膝周囲の手術加療で金属アレルギーと診断された19例26膝を経験し,変形性膝関節症15例22膝,前十字靱帯損傷3例,下腿骨折1例であった.術前に判明した症例および術式は人工膝関節置換術12例19膝,前十字靱帯再建術1例,脛骨プラトー骨折骨接合1例であった.術後に発症した症例は人工膝関節置換術(TKA)2例,片側仮骨延長法1例であった.金属アレルギー陽性例はTKAではJMM Bi-Surface KU4+(非金属製),靱帯再建ではセラミックボタン,骨接合にはパッチテスト陰性のチタンピンを使用した.術後に発症した症例は,全て保存的加療で軽快した.整形外科領域において金属性内固定材を使用する場合,金属アレルギーの有無を問診し,既往があればパッチテストなど精査が必要である.
  •  
    山川 慶, 勢理客 久, 屋良 哲也, 金谷 文則
    2011 年 60 巻 2 号 p. 318-321
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    保存的治療で良好な経過を得た特発性脊椎硬膜外血腫の3例を報告する.症例1:67歳女性.当院受診前,激しい項部痛,右上肢の痺れを自覚していた.受診時,四肢の麻痺を認めMRIからC 3~7レベルの硬膜外血腫が疑われた.入院後,止血剤を静脈投与し,2日目より症状改善.2週目には独歩可能となり退院となった.症例2:52歳女性.項部,両肩痛が出現し,徐々に歩行困難となった.MRIにてC 2~Th 3レベルに硬膜外血腫を確認後,止血剤を投与し治療を行った.入院5日目には独歩可能になるまで改善した.症例3:72歳女性.遊泳2時間後,項部痛,両手指の痺れが出現した.遊泳3時間半後,歩行困難となり当院に救急搬送された.C 3~4レベルの硬膜外血腫による四肢麻痺は薬剤使用せず2日間の安静臥床により,症状改善した.
  • 橋本 哲, 河野 俊介, 北島 将, 園畑 素樹, 馬渡 正明, 佛淵 孝夫
    2011 年 60 巻 2 号 p. 322-324
    発行日: 2011/03/25
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    特発性大腿骨頭壊死症(以下ION)は股関節の機能を著しく損う事があり,好発年齢である青壮年に対しても人工物置換術を行わなければならないことがある.当科で人工股関節全置換術(以下THA)及び人工骨頭置換術(以下BHA)を行った92例123股を対象とし,患者背景および術後成績を検討した.男性が58.7%を占め,誘因はステロイド性が多く,年齢は50歳代がピークであった.Type B 1例,Type C-1 54例,Type C-2 8例に対して人工物置換術が行われていた.合併症は脱臼を18股,人工骨頭のcentral migrationを1股に認め,頻回脱臼の1股に再置換術を行った.X線学的評価では重篤なstress shieldingや進行するclear zoneを認めず,implant stabilityは良好であった.当院のIONに対するTHA症例の脱臼率は14.6%とやや高かったが,臨床成績およびimplantの固定性は良好であった.
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